荻島動物病院 院長の日記 -2ページ目

「ネコの慢性腎不全について」

 今日、腎不全のネコが治療に来ました。

ネコちゃんは肉、魚が主体の食事の為、慢性腎不全になりやすい動物です。


正常な腎臓は血液をろ過し、老廃物を取り除き尿として体外に排泄します。

感染や炎症によって腎機能が損傷を受けると老廃物を含んだ血液が体内をめぐり病気になります。

症状が出るのは、腎臓組織全体の75%が損傷を受けて初めて発現するため症状が出た時点で慢性のことがあります。


慢性腎疾患の症状としては、嘔吐、下痢、喉の渇き、排尿量の増加、食欲減退、元気消失、口臭、体重減少などが見られます。
病気が続くと虚脱状態、痙攣発作、昏睡状態になり死に至ります。
慢性腎疾患は完治させることは出来ません。

人の場合は血液透析を1週間に3~4回行い維持します。

ネコの場合、透析は色々問題があり難しいのですが処方食、内服薬など治療により症状を抑えることは不可能ではありません。


飼い主と獣医師との協力で健康管理、治療を適切に行えればかなり正常に近い生活を送ることができます。
長生きするネコちゃんが多くなり、慢性腎不全は増加傾向にあります。

「オス猫の尿閉について」

  先日去勢済みの猫ちゃんが尿閉で入院しました。

オスは尿道が細く長いためメスに比較するとストロバイドという砂粒状の結晶が形成され尿がでなくなることが多く手遅れになると腎臓に障害を受け死亡します。


猫は元来、砂漠起源の動物であり習性としては犬のようにはあまり水分を摂取しなくても生活できるように体の構造がつくられています。

昔、日本では猫の食餌はおかかご飯やアジなど小魚を混ぜた食餌が主体でした。

その当時は尿閉はありませんでした。


ドライフードの普及とともにFUS(泌尿器症候群)は増加しました。
フードメーカーでは逃げとして水分を十分与えるよう包装袋に書かれておりますが上記のような理由から多くの猫は水分をあまり取りません。
尿閉を防ぐ方法としては昔のような食餌または病院で取り扱っている成分がきちんと調整されているフードを与えることです。
猫の食習性は生後2~3ヶ月で決定されますので子猫のときから健康を考えた食餌を与えるようにしてください。
もし尿閉やFUS症状(トイレに何回も行ったり、尿の出が悪い)を起こしたら手遅れにならないように至急動物病院で治療をしてください。

「いたずらワンちゃんは注意!!」

 忙しく、院長日記がしばらくお休みしてすみませんでした。


昨日、M・ダックスがチョコレートを盗み食いしてしまい中毒症状を起こしました。

症状は下痢、嘔吐のひどい状態でした。チョコレートにはテオブロミンが含まれておりその成分が原因です。


 室内犬はちょっと留守をしたり油断をしたときに糖衣錠になっている薬を甘いので飲み込んでしまうこともあります。

血圧の薬や安定剤、風邪薬などで飲みこんでしまい瀕死の状態になり入院治療した子もいます。

目を離した隙に串ごとの団子や焼き鳥、また桃やプラムの種を遊んで飲み込んだ子もいます。

また歯が抜け替わる時期にコタツのコードを噛み口の中を火傷した仔犬もいます。

 いずれにしてもいたずらっこは何をしでかすかわかりません。
ワンちゃん一人にするときはよく周りを見渡して事故が起きないように注意をしてください。

新年おめでとうございます。

今年は戌年、何回目かは内緒ですが私も戌年生まれです。


去年暮は戌年生まれが猫の手を借りたいほど多忙な日々でした。

昨年は暗い事件も多く安心して暮らす事の難しい時代になったなあと思います。
12月警察署の依頼で入院治療した犬がいました。

児童ならず虐待を受けた半年ほどの仔犬でした。

熱湯をかけられたり棒でたたかれていたようです。犬は飼い主を選択できません。

序々に慣れて安心し落ち着いてきましたが保護された当初は人におびえ大きく尻尾をふりこびるように又人をみるまなざしはなんとも言えない哀れみを持ちました。
この子は年末に心ある福島県の方に引き取られ今は幸福な(幸)福(島)犬になっています。

   皆様にとって本年も明るい年になられる事を願っております。

私の今年のモットーは「何事もホドホドに」です。


「自然破壊と生き物について」

 コウノトリの野生復帰を見守るというタイトルで今日は麻布大学の大先輩である増井光子先生の記事が載りましたので紹介致します。

多摩動物園や上野動物園の園長を歴任され、6年前コウノトリ野生復帰計画への協力を求められ「兵庫県立コウノトリの郷公園」の初代園長に就任され国内では1971年に絶滅した野生のコウノトリを人工飼育で繁殖させ自然界に返す野生復帰計画を指導し9月24日5羽が飛び立った。

先生は子供たちを相手に巣作りに欠かせないマツの植樹会を開くなど環境学習にも力を注いでこられました。
動物園に勤め始めてから「近親交配」とういう重い課題に直面し、<種の保存>への貢献を目指されました。


「農業の見直しや自然環境の保全など創造的な仕事はまだまだある。」と話しておられ先生が68歳になられてもとても元気である活力の源は動物への尽きぬ愛情なのかもしれません。

人類の文明文化の進化はとどまる所を知りません。例えばゴルフ場開発(ゴルフというスポーツを否定はいたしませんが)、一つとってもそれによって引き起こされる自然環境破壊は大きいと思います。

樹木の伐採や芝管理のための農薬、河川の汚染やそこにすむ動植物への影響など計り知れません。


自然環境、保全 又種の保存を考えるとき自然破壊又外来動植物による影響など真剣に人々が取り組まなければならない問題だと思います。

「犬のアトピーに新薬」

 動物病院に来院される犬の約1割がアトピー性皮膚炎といわれています。
アトピー性皮膚疾患と診断したワンちゃんに血清学的アレルギー検査によって特異的IgEを測定しその結果に基づいた環境整備、食事指導で約7割の症例で症状緩和されることが認められています。
または減感作療法でコントロールしているのが現状です。

 東レはカイコを利用した遺伝子組み換え技術を応用し犬のアトピー性皮膚炎を治す新薬を開発し製造・販売・承認されました。

 動物病院では11月頃より注射できることになると思います。臨床実験では注射後4週間程で 軽快しています。
アトピーで悩まされていたワンちゃん、飼い主にとって朗報ですのでお知らせ致しました。

 痒みから開放され快適な日々を過ごせるようになることを願っています。

「母校の学校飼育動物指導訪問」

 7月4日市立中山小学校の学校飼育動物指導に市川獣医師会会員の5名で訪問致しました。
中山小は私の卒業母校でありとてもなつかしく楽しみにしていた訪問でもありました。
中山小では空教室を利用し全国的に珍しく水族館と称しメダカ・金魚等の飼育繁殖が行われていました。

魚に非常に詳しい先生がおられ繁殖されたメダカ・金魚などは生徒達に無料で配られているそうです。

子供たちも先生の良い影響を受け、水産・魚類等の研究者もでてくるのではと期待します。小学生の頃の先生との出会い又与える影響は子供たちの将来を変えるかもしれません。
というのも私が獣医師になろうと思った動機は
小学6年生の時我家の猫をご近所の先生に救命治療処置していただいたことがきっかけでした。

獣医になったのは動物好きとお世話になった獣医師に救命していただいた仕事に対する憧れ、すばらしい職業だと思ったからでした。


 中山小の特徴としては同窓生が贈ったすばらしい動物舎があり、学校飼育動物としては珍しい孔雀を飼育していることです。

当日は雨降りで天気もよくありませんでしたが生徒さんがウサギの心音を聴診をしたり又飼育委員からの質問に回答するなどし後輩たちと楽しい一時を過ごさせていただき、あっという間に時間も経過しました。

 学校における望ましい動物飼育のあり方に多くの課題がありますが、教育委員会をはじめ学校・先生の御努力と微力ながら我々獣医師会の協力により年々進歩向上してきていると思います。

また1958年の私の卒業する当時の学校の航空写真、校長先生のお写真を拝見させていただき懐かしく楽しい学校動物飼育指導の時間でした。

「野生タヌキからの疥癬・ダニに注意」

 市川市内においても野生のタヌキが里見公園、
じゅん菜公園、真間山等で生息しています。
犬猫が草むらに入ったり野生タヌキとの接触する機会があるとタヌキのダニが犬に寄生したり犬の病気がタヌキにと相互感染の恐れがあります。
野生タヌキ保護と飼い犬、猫のダニ等の感染を防ぐためには
①タヌキに餌を与えたり食物を放置しタヌキを近づけるような行為を行わない。
②疥癬のダニの寄生がないか飼犬、飼猫の健康状態に注意する。
③愛犬を野山や草むらに連れて行く事はダニ寄生の危険が高いので防ダニ対策を充分にする。
 マダニ感染や皮膚炎等疑わしい場合は動物病院で診察を受ける。

病院にはノミ、マダニ等に簡易に使える滴下型駆除剤があります。

緑の森や野山にひっそり暮らしているタヌキやハクビシン等野生動物も人間の開発行為によって暮らしにくい時代になっていますね。 

「マイクロチップについて」

 4月は狂犬病予防注射の時期で我々獣医師会会員は市内各所で当番にあたりました。

今期は雨で中止延期もあり、本日5月18日でやっと終了しました。まだお済みでない方は動物病院で接種して下さい。

 今回の日記はマイクロチップ ( 個体識別の為、米粒大のバーコードチップを体内に埋め込む )について簡単に説明します。


農水大臣に指定された地域以外から帰国する際には狂犬病予防注射接種前にISO規格適合マイクロチップを装着後注射が必要です。

接種前に注射をしても無効となり動物検疫で180日間の係留となります。

このような対策をみてもいかに諸外国で狂犬病が発生し日本にも危険が及んでいるかわかると思います。

日本国内で犬に咬まれても狂犬病感染の心配は少ないのですが、外国で犬に咬まれたりしますと狂犬病 - 人間では恐水病(咽喉頭麻痺から水が飲めなくなる)の感染により生命の危険にさらされます。

海外へ動物を連れて行く予定の方は動物病院で相談しマイクロチップを装着してから出国するようお勧めします。

詳細は農林水産省動物検疫所ホームページをご覧下さい。

「犬のタマネギ中毒について」

本日は日本犬雑種でタマネギ中毒の犬の診療をしましたので、その事について書きます。

仔犬の時来院された方にはワンちゃんには一般的に子供の食べる事のできる食物を食べても心配はありませんがタマネギ類と鶏の骨は与えないよう注意申し上げます。

鳥類の骨は獣骨と違い竹のように斜めに裂けて胃腸を傷つけたりする危険があります。
又、ネギ類の成分が赤血球を破壊し血尿をひきおこし時として死亡することもあります。

学問的に説明しますとネギ類に含まれる有機チオ硫酸化合物による赤血球酸化障害性血尿症という中毒でタマネギ、長ネギ、にんにく等ネギ類による赤血球やヘモグロビンに対し酸化障害作用により赤血球内にハインツ小体を形成し赤血球が破壊される病気です。
タマネギ類の催溶血性物質(有機チオ硫酸化合物)は1975年北海道大学家畜病院に来院した秋田犬の血尿症の原因究明したことにより判明されました。
この物質は加熱しても有害作用を損なわないのですき焼き、チャーハン、ハンバーグ等は要注意です。

うっかりすることなく、自分の飼い犬は自分自身で守るためにも知っておいて欲しいと思います。