ご存知でしょうか?
環8を用賀から荻窪方向へ向かう途中、千歳船橋付近に喫茶店「マギー」という看板があります。
この写真で、「お、見た事あるぞ」という方も多いのではないでしょうか?
先日、某、お方に「昔からあそこ気になっているんですよ」と言われ、興味が湧きました。
何と言っても店の名前が「マギー」。
マギーの由来はなんなのか?
ケーシー・マギー、マギー・チャン、マギー・スミス、そしてマギー司郎…か。
いろんなマギーがいてマギーらわしい。
考えていても仕方ない。こうなったら、現場に潜入だ!
期待を胸に一路「マギー」へ。
到着し、ドアを開けると昔ながらの喫茶店風景が広がる。
窓辺のテーブルのオシャレなおばあさんが立ち上がった。
「いらっしゃい」。
傍らのベビーカーにはダックスフント。
つぶらな瞳がこちらを見つめている。
分厚い木の立派なカウンターに着席し、メニューを拝見。
「スパゲティ・マギー風とブレンド珈琲をお願いします」。
マギー風というネーミング、なんだかわからないが逆に楽しみだ。
「お代ここ、置いとくからね」。
先客の声が聞こえて来る。
常連さんだとすぐにわかる。
私の真ん前に小さなテレビがあり、ワイドショーがわずかに聴こえる音量で流れている。
ふたつ隣のカウンター席の年配の男性が「これって今日の事件ですか?」と話しかけてきた。
テレビでは事件を検証しているが、いつ起こったものかはちょっとわからなかったので「さあ、どうなんでしょう」と私。
「さて、そろそろ行かなきゃ。どうもお先に。お代、置いとくねー」とその男性も席を立つ。
これだけの車の往来にしてどうやら一見は私だけらしい。
やがてお客さんが私だけになると、窓辺の席に戻ったおばあさんが話しかけてきた。
「私がここへ嫁に来た時はまだ車なんて走ってなかったのよ…」。
うわ、絶対、聞かなきゃならないパターンだ。
一見の私に話しかけてくるのに少し驚いたが、マギーの謎が解けるかもと期待。
おばあさんの年齢からすると嫁に来たのは昭和30年前後だろうか…。
私の座るカウンターからは少し左後方におばあさんがおられるので、私は振り返るようなカタチになる。
「そうなんですね。マギーって看板、気になって初めて来てみたんです」と私。
「そういうお客さん、多いわね。ここ最初は寿司屋だったのよ」。
「そうなんですか!」
「この辺はまだ田舎でね。私、文京区から来たのだけど、サングラスやアクセサリーしてたでしょ。だからお寿司屋さんの嫁らしくないって評判だったわ」。
それに対して私は「ハイカラだったんですね」と言ってしまったが、ハイカラはちと古過ぎたか…。
「私、犬が好きなの。この子はまだ2歳だけど。あの頃は、シェパード飼ってたわ。いろいろあって喫茶店やることになってね…」。
おばあさんは遠くを見るように話している。
けれど目にはアイライン。
女性はいくつになっても女性なのだ。
「喫茶店の名前、何にしようかってことになって、主人が目の前に環状8号線ができたから、ハチってのはどうだ? なんて言うのね」。
「ハチですか?」
「そう。私は大反対よ。だから飼っていた犬の名前にしたの」。
「え、それじゃあ。マギーというのは犬の名前だったんですね」。
初めてここへやってきたのに、拍子抜けする程、あっけなくマギーの謎が解明されてしまった。
「そのカウンターの木はね、もともとお寿司やさん時代のカウンターなのよ」。
「そうなんですか。立派ですよね」。
ご主人は不在だったけれど、ものすごい年月、喫茶マギーをおふたりでやってこられたのだなと、私はちょっと感動してしまった。
ほかにも面白い話もあるけれど、ここでは書けません。
実際に行って見るともしかしたら同じ体験ができるやも…。
私は謎が解明され、安堵したのと同時に、おばあさんの話ができたことに嬉しくなりました。
ところが!
帰る道すがら私はもうひとつ重要な疑問を解決していなかったことに気がついてしまったのです。
そう、なぜ犬の名前はマギーだったのか…であります。
スパゲッティ・マギー風