初心者は、最初からショートスケールのような、小さくて弾きやすい楽器を選ぶのでなく、多少弾きづらさを感じても、ロングスケール(いわゆる普通のサイズ)で練習をするべきだ。そんな固定観念に囚われていたのである。余りに了見の狭い拘りであった。
どんな楽器でも、まずは1つの楽器を弾き倒す事が上達に繋がるのにも関わらず、最初からその道を放棄していたのである。
この余りに下らない思い込みは、次なるベースの購入へと繋がる事になってしまうのだが、この時点ではまだその思いには至っておらず、辛うじてショックを押さえ込む事に成功し、早く戻って練習を開始しようという思いに駆られていた。
会社に戻ると、例の階段下の道具置き場兼清掃員さん用更衣休息室に入り、壁際に置かれたダンボールの中から愛器のバイオリンベースを取り出す。
早速チューニングをしてみたが、意外に難しい事が発覚した。