いつものように妹に見送られ、川村は元気良くドアを開け希望の一歩を踏み出した。
今まで川村は軽トラックで国会議事堂まで通勤していたのだが、この日からなんと秘書官の運転するロールスロイスで通勤することとなった。
秘書官の運転するロールスロイスは快適で後部座席にはワインセラーが取り付けられていた。
川村は興味本位でワインセラーを開けると中には、フランスから直送の高級ミルクティーやイタリアのシチリア産のレモンをふんだんに使用したレモン紅茶が入っていた。
川村はすかさず秘書官に、
『この紅茶はパンジェンシー?』
と意味不明な質問をすると秘書官は続けて、
『私には知りかねます』
と気の無い返事をした。
川村はその返事に気を悪くしたのか、
『パンジェンシーが入っていない紅茶なんか飲めるか! 今すぐコンビニでパンジェンシーの入った紅茶を買って来い!』
と怒りをあらわにした。
秘書官は
「パンジェンシー、パンジェンシーうるさいなぁ!」
不快感を示したのだった。
さすがにこれ以上うるさくされると困るので、すかさず道路脇にあるコンビニへと車を停車した。
秘書官は目の色を変えてパンジェンシーを探した。すると端の方に 「世界が涙したパンジェンシー」
と書いてあるミルクティーを見つけた。値段は気にせず全力疾走でレジへ向かった。
レジで順番待ちしていたのだが、前にいる客が迷惑だった。年齢は10代半ばでサーフボードを片手にし、顔が真っ黒な男性である。
その男性は、
『マイルドセブン1つ!』
と威勢のいい声で店員に言ったが、店員は、
『お客様、年齢を証明出来るものをお持ちですか?』
と返した。
店員はまた、
『成人を証明出来ないと当店ではタバコはお売り出来ないんですよ。』
と言うと、男性は、
『ふざけんじゃねぇ!! 外出ろ! タイマンだ!』
などと意味不明な事を言いだした。
そんなこんなしていると警察官が入店し、
『君! ちょっと署まで来てもらえる?』
と言われて気が付いたのか、
『すいません! サーフィンあるんで!!』
と足早に去って行った。
そうしてやっとパンジェンシーを買うことが出来た。
すると店員は、
『ご迷惑おかけしました。お詫びとして、この紅茶を。』
と言われた。
紅茶を手にすると、安そうなその辺の自販機で買えそうなレモンティーだった。ペットボトルには大きく〈レモン紅茶〉と書かれていた。
つづく...