動物園を出て2~3分歩き、目的の 横尾忠則現代美術館 に到着。

初訪問の美術館。

 

観覧前に併設されているカフェ「ぱんだかふぇ」でランチを摂ることにしました。

美術館のチケット半券提示でランチは150円割引♪

お目当てのカレーは売り切れ・・・代わりにパスタを注文

器のデザインは横尾忠則

カフェの客はほぼ100%、神戸有閑オバチャンだった

 

 

今回神戸までやってきたのは↓の展覧会を観たかったから。

 

2000年、横尾は故郷の兵庫・西脇で夜のY字路の写真を撮影しました。

すると、横尾にとって見慣れた景色が全く異質な風景に変貌したと感じたそうです。

この写真に着想を得た横尾は、市内にある各所のY字路を撮影した写真をもとに、「Y字路」シリーズを手がけ始めました。
 

初期作品は光と闇の対比を重視していましたが、やがて鮮やかな色彩を持つY字路へと変貌していき、多様な要素(モチーフやコラージュ)を含むように変化していきました。自身が実見・撮影したY字路だけでなく、他者が撮影した写真も素材として活用するようになり、作品世界が広がっていったようです。

 

Y字路シリーズは写真を見つつ描くこと、左右に分かれた道の奥に遠近法の消失点を設定して描き始めるというように最初の手順がパターン化されていること、構図が安定していること等から、堅牢なプラットフォームとして確立するようになり、シリーズとして発展し続けてきました。プラットフォームが堅牢であるからこそ、豊潤なイマジネーションを反映させた実験的な作品も破綻することなく、創作されていったものと思われます。

 

本展では「Y字路」シリーズの初期から最近の作品まで69点が集められ、横尾ワールドの多様性や奥深さを堪能できます。個人蔵や海外流出作品も含まれている貴重な機会です。昨年は東京国立博物館で「寒山拾得」シリーズを観覧しました。今回は「Y字路」シリーズを堪能するべく神戸にやってきました。

 

↓が全ての始まり、原点だった!

《暗夜光路 N市-I》

 

光と闇、先がどうなっているかわからない二つのミステリアスな世界、不思議な情感を感じつつ、選択を迫られているような気持ちにさせられます。他の芸術作品にはない独特の魅力、面白さがあります。ダ・ヴィンチは聖母子画において三角形の構図を齎しましたが、このY字路にも改めて構図の安定性を感じます。

《暗夜光路》というタイトルは勿論、志賀直哉の代表作からの引用でしょうね。

上手いタイトルです。

 

《暗夜光路 N市-Ⅱ》

 

《暗夜光路 N市-Ⅱ 三度(みたび)》

 

 

↓には西脇市のY字路の写真が掲載されています。

横尾作品と比較して見ると楽しめます。

 

 

↓横尾の原体験的な模写であるとか

キリコ、ユトリロ、マグリットの模写

 

 

《暗夜光路 眠れない街》

 

風刺要素も入って来た

闇と思われる右方は血の色か? 共産主義の象徴か?(笑)

《暗夜光路 新・光と闇の帝国》

 

↓中央の家の右下に岡本太郎の作品らしき物体?

《実生活の虚実》

 

《See You Again》

 

Y字路シリーズは横尾作品としては珍しい写実的な描写の作品も多い

《交差の歓び》

 

 

 

《健全な感情》            《本性の模写》

《投影された風景》          《朱い水蒸気》

《集合と拡散》  珍しい屏風仕立てで、一つ上の4作品の間に置かれている

 

↑↓はキュビズムっぽさも感じる

↓の右上(トンネルの山の上)と左下に、またも岡本太郎の作品らしき物体

 岡本太郎は「世俗」「虚実」なのか?(笑)

《世俗の闇》

 

《メランコリー》              《メランコリーⅡ》

この辺りではエドワード・ホッパー的なテイストも感じた

《トワイライト・タイムⅠ Ⅱ Ⅲ》

 

《とりとめのない彷徨》

 

2002年の宮崎県立美術館での展覧会が公開制作を始めるキッカケになったとのこと。

Y字路シリーズは先述のような特性から公開制作向きであるそうです。

《宮崎の夜 - 台風前夜》

 

十和田湖畔にある 高村光太郎《乙女の像》や十和田市現代美術館前の広場にある インゲス・イデー《ゴースト》 似たオブジェも見えます。

《Towada Roman》

 

アメリカ同時多発テロ事件の衝撃的な映像を見て、描きかけであった↓がツインタワー崩壊後の廃墟に見えたとのこと。もう加筆する必要はなく、この作品は完成していると考えたそうです。

《暗夜光路 2001年9月11日》

 

新たな展開を予感させる2018年制作の作品もありました。

↓は初期作と同じく西脇市内のY字路をベースにしていますが、上空には民家を爆撃するB29 が描かれています。

《回転する家》

 

Y字路というプラットフォーム上で縦横無尽に展開する横尾忠則というアーティストの創造性を堪能できました。横尾ファンであれば見逃せない展覧会です。

最後に、横尾が本展開催にあわせて寄せたメッセージ。

 

~Y字路とは、1本道の先で二手に分かれる三差路のことです。
三差路は、その昔、おいわけ(追分)と呼んでいました。つまり、分岐点のことです。昔の時代劇などには、しょっちゅう登場しますが、今の若い人達には、馴染みがないと思います。Y字路は私のヨコオの頭文字のYでもあります。分岐点、つまりY字路は、われわれの生活の中でも常にこのY字路に突き当たって、こっちにするかあっちにするかと迷う、そんな経験は誰にもあります。1日に我々は何度もY字路に遭遇します。昼の食事は、ラーメンにするか? カレーにするか? 誰かに電話をするかどうか、こんな具合に終日、Y字路の前で立ちすくむのです。
私の絵のY字路は、郷里の西脇で思いついたテーマです。
Y字路は、元々農道のひとつとして発展したもので、西脇は、まるでY字路の宝庫です。ということは、農道のある場所に民家が立ち並んで町を形成したのではないかと思います。
ところが、このY字路を意識する人はほとんどいませんが、私の絵を見たことで、初めて現実にY字路の存在を知ったという人が沢山いらっしゃいます。
多分、この展覧会を見られた次の日から、Y字路が気になって仕方ないとおっしゃる人が何人も現れると思います。
われわれの人生は、常に右に行くか、左に行くかの迷いから生じています。
まあ、そんなことを念頭において、Y字路展をゆっくり鑑賞してください。~

 

♪You make my life and time  A book of bluesy Saturdays
   And I have to choose. . .

 

 

展覧会は1~3Fの展示室で開催されています。4Fには小展示室の他、キュミラズム・トゥ・アオタニ という部屋が設けられています。

 

窓外の景色も室内に写り、まさにキュビズム的な立体空間になっている

↓窓外の眺望

 

4Fには 目玉廊下 というもう一つのフォトスポットもあります。

 

この美術館は当日であれば再入館可なので、カフェや動物園で休憩・気分転換をしてからアート作品を観直すこともできます。駅からも近いし、再訪したくなる美術館でした。