引き出した 感動貯金 5年分~第27回サロマ湖100kmウルトラマラソン完走記6 | 神社仏閣旅歩き そして時には食べ歩き

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還暦を過ぎて体にトラブルが出始めて、ランニングを楽しめなくなりました。近ごろはウォーキングに軸足を移して道内の神社仏閣を巡り、御朱印を拝受したり霊場巡礼を楽しんでいます。いつかは四国八十八ヶ所巡礼や熊野詣をすることが夢です。by おがまん@小笠原章仁

(6)消えた折り返し点


 10km地点を過ぎて間もなくサロマ湖を右手に見ながら走るコースとなります。しばらくすると先頭の選手が折り返して来ます。ワッカでは速いタイムの選手とはすれ違うことができませんから、この区間が唯一、全選手とすれ違うことのできる区間です。


 「予定通りのペースですね」


 後ろからIさんに声をかけられたのはどのあたりだったでしょうか。このあとずっと似たようなペースで進むことになります。


 Iさんとついたり離れたりしながらゆっくりと走っていきます。右手に駐車帯と公衆トイレがあり、かぶり水が用意されている場所がありますが、この天気ではかぶり水を使う人はあまりいないでしょう。でも毎回、このエイドを担当している高校生には元気をもらえるスポットになっています。まだ反対車線には折り返してくる選手が到着していないこともあり、彼らはセンターライン付近に並びハイタッチをしていました。もちろん私は全員とハイタッチさせてもらいました。


 「追いつくの早すぎですよ」


 後ろから声をかけられて振り向くと、Chamaさんでした。完走請負人のChamaさん。毎回毎回私は情けない姿を見せています。42km付近で諦めて歩いている私を抜いていったChamaさん。そのときはおなかを壊して、それまで3度もトイレに寄ったと言ってましたが、きっちり完走しました。


 魔女の森の手前で、膝を痛めてトボトボ歩いている私を抜いていかれたこともありました。レストステーションで心が折れてしまっている私を叱咤しながら走り出していったこともありました。いずれもChamaさんはしっかり完走しています。


 あまりにも情けない私の走りに、「今回はちょっとひと休みは許しませんよ。見つけたら引っ張って連れて行きますからね」と宣言されていました。


 そんなChamaさんは、今回もしっかり「12時間50分で走ります」と完走請負人宣言を背中に書いていました。


 「今年は抑えていきます。このまま70kmまでいきますから」


 と、私も力強く宣言します。それからIさん、Chamaさん、私の3人は、同じようなペースで走りました。


 やがてトップのランナーがやってきました。そして次々と高速ランナーたちがやってきます。反対車線の密度が徐々に増し、知り合いのランナーの数も増えてきます。まずはここで互いの無事を確認します。そしてもう1度、ワッカで会えることを祈りながら・・・。


 15km地点の通過時間は1時間46分33秒でした。この間の5kmは34分36秒です。理想と考えていたペースは6分45秒でしたので、5kmにすると33分45秒となります。それよりちょっと遅いのですが、目標としていた6分30秒~7分の中に収まっているのですから申し分ありません。このままのリズムで大丈夫です。ただあとで聞いたところでは、私の位置どりが例年と比べてもかなり後方だったので、すれ違った仲間たちは「ちょっと後ろ過ぎやしないか?」と心配だったそうです。


 心配していた尿意が増してきています。エイド付近に設置してある仮設トイレを見ながらきましたが、どこも数名の人が並んでいます。この先には、毎回立ち寄っている公衆トイレがあります。ここはいつも空いていて、小用はたいてい待ち時間なしでできます。並んでいても1、2人ですから、ロスタイムもさして多くはありません。


 トイレの位置はコースの右側です。折り返して来てから寄るのならば、スムーズに寄れるのですが、折り返し前に寄るには反対側のコースを横切らねばなりません。私が記憶している折り返し点はさほど遠くはありません。折り返してから寄ろうかとも思いましたが、尿意を感じている以上早く済ませた方が楽に走れます。私は集団を離脱してコースを横切り、トイレに駆け込みました。


 トイレには5人ほどの列ができています。確認すると小用の列でした。これは大誤算でした。ここのトイレ、いままではせいぜい2人くらいしか待っている人はいなかったのですが・・・でも仕方ありません。男子小用は回転がいいのでこのままコースに戻るよりはここで済ませてしまった方がいいでしょう。私はその列に並んで待ちました。


 せいぜい2~3分のロスだったと思いますが、予定外のロスタイムでした。でもここで考えなければならないのは、そのロスタイムを取り返すことではありません。取り返そうと焦ってオーバーペースにならないよう気をつけることです。


 私は再びコースを横切り、自分のコースに戻りました。三里浜に入り、右手では湧別サロマ湖太鼓が打ち鳴らされています。2年ぶりに見る光景です。そしてこれを過ぎると間もなく折り返しが・・・折り返しが・・・ない!あれっ?


 私が記憶していた場所に折り返し点はなく、延々とランナーの列が先に延びていました。(つづく)


(7)後方待機へ



(1)完走しなければならない理由

(2)応援FAX

(3)旅の始まり

(4)作戦

(5)予定通り