ゼロからの出直し・・・2009サロマ湖100kmウルトラマラソン出走記3 | 神社仏閣旅歩き そして時には食べ歩き

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還暦を過ぎて体にトラブルが出始めて、ランニングを楽しめなくなりました。近ごろはウォーキングに軸足を移して道内の神社仏閣を巡り、御朱印を拝受したり霊場巡礼を楽しんでいます。いつかは四国八十八ヶ所巡礼や熊野詣をすることが夢です。by おがまん@小笠原章仁

 相変わらずの深い霧。ランナーの密度は少なくなっている。それでも名物の湧別さろま湖太鼓は、勇壮な音を響かせている。ここで少しパワーをもらって、さらに前を目指す。


 しかし私のペースはあがらない。後続のランナーにも、次々と抜かれていく。体はますます重く感じるようになる。


 膝の痛みは、激しくないが消えてもいない。しかも左膝にも痛みが出始めている。加えて吐き気まで感じるようになってきた。これは案外、早めにリタイアを考えなければならないかもしれない。


 最後まで諦めないのが、私のレーススタイル。昨年のサロマでは、そのスタイルを貫いた。膝の痛みで走れなくなり、時間的には関門に間に合わなくなっても、止められるまでは泥臭く前に進んだ。


 しかしその代償として大きなダメージを受け、結果的に、それ以降は満足なレースを一つもできていない。


 今年はその反省を踏まえ、故障をしないことを大きな目標として掲げて、レースに臨んでいた。


 まずは30km。ここまで歩かずに行くことが第1目標。80kmあまり先にあるゴールよりも、当面は10kmあまり先にある30km地点を目指すことにする。


 20km地点の通過タイムは、2時間31分22秒。この間の10kmは、1時間16分ちょうど。平均すると7分30秒を超えるペース。トイレに寄ったロスもあるとはいえ、70km以降を走っているときのペースじゃないか。いっこうに晴れない空と同様に、ますます絶望的な気持ちになっていく。


 20km関門の先にある給水所。ここからは食べ物も出てくる。吐き気はするが、とにかく胃の中に食べ物を入れなければ走れなくなる。バナナを一切れもらい、無理矢理腹の中に押し込む。当然のことながら、吐き気も増してくる。しかし食べなければならない。そして走らなければならない。


 もはや、30km地点にはどのくらいのタイムで到達するのか、見当もつかず計算もできない。42.195kmで待ちかまえる関門をクリアできるのかどうか。それすらわからない。


 それでもウルトラマラソンには、レース途中での復活はつきもの。そんなことを期待して、とにかく前に進む。


 ふと左手を見ると、ハマナスの花が目に入る。ここも小さな原生花園だろうか。ハマナスの花があちこちで咲き乱れている。その間には、オレンジ色のエゾスカシユリや、青い花は何だろう?ヒオウギアヤメだろうか?このあたりでこんなに咲いているということは、今年のワッカはきれいなんだろうなぁ。


 しかし私は・・・。


 たまらず足を止めて、写真を撮る。10km地点でも20km地点でも、状況を判断して写真を撮ることを諦めたというのに。


Road to SAROMAN BLUE-ハマナス


 25kmの通過時間は3時間11分11秒。この間の5kmは39分49秒。写真を撮るのに立ち止まったのはせいぜい数秒のこと。エイドだって、ほとんど足を止めていない。トイレに寄ったわけでもない。ペースダウンに歯止めがきかず、早くもキロ8分まで落ちようとしている。


 両膝の痛みと吐き気は、相変わらず存在している。それでも第1目標の30kmまでは走り続けようと足を前に運び続ける。


 だけど、もはや完走は及びもつかない状態。ここでキロ8分では、最初の関門である42.195kmをクリアできるのだろうか?昨年の反省から、完走できないならばあとにダメージが残るような走りをしたくない。そう思うと・・・。


 午前8時20分37秒。25km地点を通過した9分26秒後。私はストップウォッチを止めて歩き出した。あまりにも早すぎる終戦だった。


Road to SAROMAN BLUE-KC3G0035.jpg


 歩く私を抜いていくランナーたち。その背中を見送っていると、右の林の中からガサゴソと音が聞こえる。まさか・・・熊?・・・なわけないな。と、その繁みを見ると・・・鹿だ!体に斑点があるから、まだ若い鹿だろう。こちらのランナーに興味があるようで、笹の中を走って追いかけている。その音のようだ。


Road to SAROMAN BLUE-鹿


 歩いているおかげでこんな光景もじっくり見られた。


 彼方に見える給水所まで歩いていってリタイアを申告しようか。そう思いながらとぼとぼ歩いていると、「救護」と書かれた車が通りかかる。じっとその車を見つめていると、車は止まり、ドライバーが声をかけてくれた。


 「乗りますか?」


 「はい」


 私は待ってましたとばかりに、救護車に乗り込んだ。


 約26km。3時間20分37秒。あっけない幕切れだった。


 冷静に分析すると、敗因はいくらでもある。でも、それをここに書くつもりはない。きっと、何を書いても言い訳にしかならないだろうから。


 でもこれだけは言える。ウルトラマラソンは、人間の能力を超えた過酷な競技だ。それだけに、心技体が充実していないと、100kmを走りきることなんかできない。私クラスのランナーだと、その中の一つでも欠けていたら、100kmを走りきることなど到底できやしない。


 今年の私は、おそらくその3つとも、合格ラインに達していなかった。まだまだ努力が足りなかったとしか言いようがない。


 応援FAXを送っていただいた皆さん。そしてこのブログを見ながら応援していただいた皆さん。皆さんの応援に応えることができず、本当に申し訳ありません。


 昨年のサロマ以降ずっと続いているスランプ。だけどこれだけ続くと、それはスランプじゃなく、実力じゃないのか?もはや私には、サロマを完走できるだけの力はないのではないか?正直、自信を喪失しそうになった。


 でも、そんな私を奮い立たせてくれたのは、このブログを見ていただいてる皆さんの存在。皆さんからのコメントによる励まし。そしてアクセスカウンターを見ると、毎日大変多くの方々にごらんいただいていることがわかる。そんな大勢の皆さんが私を見守ってくれていることが、私にとって大きな力となる。


 そして今回、kitanodonbeiさんにいただいたこのコメント。


あなたの走りが誰かに

元気を与えます

私もその1人です


 私の走りが誰かのお役に立てる。ランナーとして、これほど嬉しいことがあるだろうか。このように私を見てくださる人がいるということは、ランナー冥利に尽きるというもの。


 私は幸せなランナーだ。そんなことに、今更ながら気づかせてもらった。


 最近の自分の走りを見ると、100kmはおろか、フルマラソンすら満足に走りきれないくらい、どん底まで落ちている。でも、中途半端よりも、どん底からのスタートの方がスッキリするかもしれない。かつてサロマを完走したことも、北海道マラソンを完走したことも、過去の実績は今の自分とは関係ない。今の自分は、とてもそのレベルには達していない。ここから再スタートして、再びかつての力を取り戻すまで、そして過去の自分を越えるまで、その様子を皆さんにお見せするのが、こうして私を支えてくれる皆さんに対する恩返しというものだ。


 来年のリベンジに向けて、いま、私はゼロからのスタートを切る。(2010サロマ湖100kmウルトラマラソン完走記へつづく)



【公開処刑】

 体重 74.2kg(前日比 -0.2kg) 

 体脂肪率 14.0%(前日比 +0.5%)




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