お麩の研究(2):                                  『茨城県結城市の「すだれ麩」の製法と料理』

 

 

これまでお麩じぃが見たことがあるお麩に関する研究のいくつかを整理しています。小難しい内容が続いて恐縮ですが・・・。

 

★久松裕子さん・粟津原(野口)元子さん『茨城県結城市の「すだれ麩」の製法と料理』(『日本調理科学会誌』 Vol.49 No.6(2016))

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/49/6/49_381/_pdf

 

論文内容をお麩じぃなりにまとめると、

1.はじめに

「日本調理科学研究会の特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」にて,日本各地の家庭で作られていた地域に根差した料理を後世に伝え残していくことを目的とし,聞き書き調査にて郷土の料理を収集し記録」「茨城県において・・・県西地区(結城市)で作られている「すだれ麩」を取り上げて,その製法,料理を紹介」

 

2.地域の概要

「結城城の城下町として栄えていた。城は鎌倉時代に築かれ,同時にその守りとして周囲に寺院が多く建てられた」「結城城は戊辰戦争の際に落城し,廃城となったが,周囲の寺院が残ったことで精進料理が発展」「その精進料理に用いられた食材の1 つにすだれ麩」

 

3.麩について(略)

4.製法による分類(略)

5.代表的な麩とその料理(略)

 

6.すだれ麩

「石川県のすだれ麩は,グルテンに米粉を加え,「す」に包んで茹でた「生麩」(賞味期限40 日)」「これを干した「干しすだれ麸」(賞味期限150 日,お湯で40 分戻す)」「金沢の加賀料理である治部煮で使われる」

「結城のすだれ麩は,グルテンに小麦粉を加えて練る」「結城のすだれ麸は,茹でる前に大量の塩をまぶしてから「す」で巻いてゆでた後,乾燥させるので,常温で保存ができるが,使用する前に一晩塩抜きをする必要がある(賞味期限約1 年)」

 

7.結城のすだれ麩

「歴史は古く,江戸時代後期にはすでに食されており,主に祝いの席に使われる高級食材」「結城市にすだれ麩がどのように伝わってきたかは不明であるが,鎌倉の精進料理がこちらに伝わったのではないかと考えられる」

「原料の性質上,ほとんどの工程が手作りのため,すだれ麩ができるまでかなりの時間と手間がかかることから,貴重品」「昔は結婚式のようなお目出たい席で食べることが多かったが,最近では正月やお盆など,家族が一堂に会したときに,ふるさとの味としてすだれ麩を食する機会が多くなっている」

「全国的には,生麩や,保存性の高い焼き麩が主であり,この伝統ある食材であるすだれ麩を食するのは日本でもこの結城市のみ」「結城市のこのすだれ麩は生麩に塩をまぶし,加熱後乾燥させるという独自の方法で保存性を高め,また独自のテクスチャーを醸し出している貴重な麩」「塩につけることによりグルテンの強度が高まり,水分も抜ける。また加熱後,乾燥させることによっても麩の組織が変わり,水で戻すことにより生麩とは異なった物性を有する麩ができる」

「現在は結城市でもすだれ麩を製造しているのは,渡邉製麩店のみ」「製造は少人数で行われ,分量や作り方は職人の訓練の技によるところが多い」「薄力粉と強力粉の割合や水の量もその時の小麦粉の状態や気温などにより加減」「水は井戸水を用い,塩は,重ねた麩がくっつかないように,精製塩よりも粒度が荒い塩化ナトリウム含量95%,苦汁分0.7%程度の並塩を用いるなど,伝統的な材料を用いて製造」「このように,職人の「勘」による技術や伝統的な手法が製造工程の随所で感じられ,後継者への技術の伝承には時間がかかると考えられる」

「この店は一代目が明治時代の終わりに麸屋を始めようと栃木に修行に出,明治43 年に結城に戻って渡邉製麩店を創業」「現在三代目であるが,後継者はいない」「前述のように,大手の麩工場ではグルテン抽出は他の業者に任せているのに対し,この店ではすべて手作業」「特に冬は水を使用するので大変な作業であると思われる」

「渡邉製麸店によると,すだれ麸はお盆時期と正月時期に一番よく売れる」「結城市内のほとんどのスーパーではすだれ麸が売られているが,近隣の下館や小山などの人は知らない人も多いという,特定の地域に限定された食材」

 

8.すだれ麸の製造工程

「渡邉製麸店では,昔ながらの手作業で3 人~4 人ですだれ麸を製造」「すだれ麸の製造の流れは・・・」

①小麦粉を練る機械

「機械を用いて小麦粉(強力粉+薄力粉)と水をよく練り,グルテンと水に懸濁したでんぷんに分ける」

②グルテンと小麦粉をこねる機械

「グルテンに小麦粉を混ぜて,再度よく練る」「1 kg ずつに分け,この機械で練る」

③すだれ麸の生地の様子

「すだれ麸または焼き麸の生地ができる」「生地をピンポン玉より大きめの玉にする」

④すだれ麩の伸ばし・塩入れ・「す」に重ねる

「板の上で,四角く伸ばし,塩のなかに入れて塩をまぶす」「これにより,生地が締まり,他の生地と付きにくくなり,保存性が高まる」「「す」に4 枚ずつ伸ばして重ね,「す」ごと丸めて,釜で煮る」「日に千数百枚を加工」

⑤すだれ麩の乾燥の様子

「釜でひと晩蒸らしてから,ビニールハウスの中でよしずに広げて干す」「夏でも完全に乾くまでに1 日半~3 日,冬場は1 週間かかる」「現在は,ビニールハウスで干すため,夜も取り込まずに干したままにしておける」「乾いたものは20 枚重ねて,木の枠を当て,そば切り包丁のような大きな包丁で四辺を切り,形を整える」

⑥すだれ麩商品(10 枚入り)

 

9.すだれ麩を使った料理

「結城独自の食品であるすだれ麩は,昔からごま酢和えにして伝統的に食べられてきた」「最近では,このすだれ麩を葬祭時だけでなくもっと手軽に利用してもらえるようにと,結城市の食生活改善推進員によって考案された創作料理のレシピ集が作られており,現在では精進料理に限らず,幅広く利用が可能」

「すだれ麸は調理前に塩抜きが必要であり,たっぷりの水に約4~5 時間浸し(もしくは,一晩つけておく),塩抜きをしてから利用」「このように下準備が簡単で,すだれ麩自体は味が淡白であり,独自の物性を持つことから,様々な食品の代替品として用いることができ,多種多様な料理への利用が可能な食品」

「①すだれ麩の伝統料理: すだれ麩のごま酢和え」
「②すだれ麩の創作料理: a. すだれ麩の刺身、b. すだれ麩のぜんざい、c. すだれ麩のカレーラザニア」

10.最後に

「結城市独自のすだれ麩は保存性も高く塩でしめることにより,独自のテクスチャーを持つ食品」「後継者はいないとのことであるが,日本の伝統食品として,結城市や茨城県などが支援し残していきたい食材」

「結城市では食生活改善委員を中心とした郷土料理の復旧活動が盛んに行われており,すだれ麩を使用した創作料理のレシピを作成」「それには、食品そのものを伝え継ぐことも大切だが,その正しい食品の扱いも伝えていき,本来の結城のすだれ麩のおいしさを知ってもらいたいと考えていると述べられていた」

「今回の茨城県結城市の調査及び本稿の執筆に,多大なご助力とご支援をいただきました,つくば国際大学吉田惠子教授に厚く御礼申し上げます」「調査や写真撮影にご協力いただきました結城市食生活改善推進員,及び渡邉製麩店の皆様に深く感謝致します」
 

久松さん・粟津原(野口)さん、このような地道にコツコツと重ねられた研究の成果を発表していただいてありがとうございます。

 

ただ、大変残念なお知らせなのですが、お麩じぃが2022年9月に茨城県結城市を訪問した時点では、既に渡邉製麩店さんは廃業されており、市内のスーパーでは新潟県内の別会社工場に製造依頼した「すだれ麩」を取り扱っていました。市内の和食レストランでも、「かつては結城のすだれ麩を使用したメニューを出していたが、3年ほど前に市内に1軒の製造業者が廃業してしまったため、今はやっていない」とのことでした。

 

本文とは直接関係ありませんが、参考画像のサービス(笑)です。

2022年9月に訪問した際、「うおとみ結城店 ㈱結城ショッピングセンター」(茨城県結城市結城)で販売していた「すだれぶの胡麻酢和え」と、同店で購入した「すだれ麩」(製造: ㈱エバートロン リボーンフーズ柏崎工場)を使った胡麻酢和えです。

http://www.uotomi.co.jp/

 

すだれぶの胡麻酢和え / すだれ麩