安藤忠雄さんの本を昨年入社した若い仲間と先日ついに読破しました。
読み始めたのが昨年の8月22日だったので約9ヶ月かかったことになります。
毎回15分と短い時間ではありましたが何やら計算すると合計で35時間くらいになりました。
右も左もわからない新卒社員がいきなり建築家の巨匠といわれる安藤忠雄さんの本を手にしいったい何を学べるのだろうかと戸惑いを感じたと思います。また私もハウツー本の方がわかり易く手っ取り早いとも思いました。そしてまた余り反応が無くて途中で挫折しても困るなあとも思いました。
しかし読後の感想としては皆で読んでほんとによかったと思っています。きっと皆さんも同じように感動と勇気をいただいたと思います。この本は安藤さんの履歴書のようなもので生まれ育った子供の頃、青年時代の理想と現実、弟子を持つ教育者、また現在の活躍を詳しく知ることができました。1人の人間として内容は異なれども同じような苦悩を経てきたということが理解できて少し身近な存在に感じられるようにもなりました。
写真の顔からのみ想像すると鋭い個性がみなぎり人を寄せ付けない人物のようにイメージしておりましたが、それは全くの誤解であることがわかりました。考えてみるとクライアントから仕事をいただき、クライアントの要望を深く聞き取り建築としての形にしてゆく必要があるのです。つまりビジネスとして対応を要求される立場ですから「人を寄せ付けない雰囲気?」などということがあれば誰も建物をお願いすることありえませんし、また尊敬される安藤さんにはなり得ません。
画家、彫刻家、音楽家などと比べると同じように芸術性というくくりでイメージされがちな建築家は意外と異なる仕事のように思います。ともすると前者が個人の才能のみで生きてゆけそうですが、後者はクライアント、対象となる建物の周囲の人々とのかかわり、工務店など建築業者との信頼関係などを良好な状態に維持してゆかないと建物そのものが完成しないからです。前者は寡黙なひとでも大酒を飲んで日常生活が多少みだれても成果として実績を上げられるかも知れませんが、建築家は周囲に耳を傾け粘り強いミュニケーションを続けられる精神力としっかりした理念がなければ成り立たないことがわかったともいえます。
スペイン・バルセロナ市のシンボルであるサクラダファミリア教会を作ったアントニ・ガウディは私が唯一知っている有名な建築家です。彼も市内に沢山の独特な建築を残していますが安藤さんと同じように周囲を巻き込んで仕事をしたはずだとすると共通するような人格者であったのだろうか興味がそそります。関係する本でも読んでみたい気にさえなります。
「光と影」という最終章のタイトルは大きい目を持っている安藤さんの顔と、コンクリート建築に宿る影のイメージにつながる言葉です。しかし安藤さんが意図したことは読者の方が、光輝く栄光の物語を想像して読み始めたと思いますが実際はお読みいただいて大分異なることをしっていただけましたねといいたかったようです。
順風な道ではなく、親と別れての幼少時代、経済的理由から大学の建築科で学べなかったこと、世界一周貧乏旅行、仕事のない時代の苦悩、それらの深い影をを乗り越えたからこそ明るい光がコントラストとなって生まれるといいたいのです。
景気低迷がつづく昨今、書店では安藤さんの書籍が沢山並んでいます。先行きが見えない中できっと彼の仕事に対する姿勢に共感を感じ多くの人の指針にさえなっているものと思われます。私が特に感心したことは、仕事の無い若い時代に誰に教わるでもなく自ら空き地を見つけては建物の図案を描きそれを地主に提示して営業をした体験が何とも素晴らしいと思います。存在する仕事をこなすのではなく、自分で仕事を創造してゆくストレートな行動力に感動いたしました。
若い人は彼から本当の仕事とは何かを真剣に学ぶべきだと思います。仕事を創造するには眉間にしわを寄せて考えることも必要でしょう、加えて人に体当たりして格闘し教えを請う実践が何よりも大事な必須条件ではないでしょうか。私もそうしたいですね。



