拝する宗教であることはいうまでもない。
さらに両者は信仰の対象である唯一神を共有している。
では、その唯一神観の特色とは、どこにみられるのであろうか。
「旧約聖書」の神の名は、ヤハウェ(Yahweh)というが、この発音
が判明したのは十九世紀末だという。
あるクリスチャンは、神の御名が「ヤハウェ」であることを
初めて知ったとき、こう述べた。
「私は教会に12年行っていましたが、ヤハウェという
神ご自身のお名前を、一度も耳にすることがありませんでした。
しかし初めて御名を知ったとき、
私はたいへん大きな感動をおぼえたものです」
十戒のなかに、「神の名をみだりに唱えてはいけない」という戒
めがあるために、のちのユダヤ教徒はこの神名をそのまま発音せ
ず、代わりに「主」をいみするアドナイと呼び習わしていた。
ヤハウェは天地の創造主であり、万物を支配する唯一絶対神であ
る。古代イスラエルの民は、弱小民族であったがゆえに、この唯
一絶対神ヤハウェに選ばれた(選民思想の原点)、と「旧約聖書」
は伝えている。
つまり、ヤハウェは唯一絶対神でありながら、弱者には愛と慈し
みを与える神であったという。
それゆえに、イスラエルの民に正しい生き方を求め、おごり高ぶ
りや不義・不正を罰せずにおかない倫理的厳しさが、ヤハウェの
特質になったという。
こうした神観は、「旧約聖書」を正典とするユダヤ教に引き継が
れ、ユダヤ教という土壌から育ったと解釈するキリスト教にも継
承されたという。
だが、両者の間には、大きな相違がみられる。
ユダヤ教がモーセを通じて神から授けられた律法に基づく民族宗
教であるのに対して、キリスト教徒は、十字架刑に処せられたイ
エス=キリストをメシア(救世主)と信じ、その救いは信ずる者す
べてに及ぶと考える。
また、キリスト教の正当派(カトリック)は、絶対神を父(神)と
子(イエス=キリスト)と聖霊という三つの現れ方をする
三位一体の神として表現する。
