ネット社会では新たな職業が生まれていますが、市民権を得たものとしては「ユーチューバー」や「ウーバーイーツ」なる職業が代表です。①職として自負して継続していける、②それで食べていける産業構築がなされている、③周囲が職業とみなしている…等の条件が揃って初めて“職業”とみなされるわけですが、新たに台頭してきたものに転売屋(転売ヤー)があります。メルカリ・ヤフオク・ラクマといったフリマサイトの成長と利用者の急増に伴い知られるようになりました。もちろんヤフオク初期からこの手の業者はいましたが、まだネットフリマ利用者が少なかったこと、同規模のフリマサイトが少なかったことから少数派でした。
転売ヤーが表舞台に出てきたのは2017年の任天堂switch、そして2020年のSonyプレステ5の買い占め品薄事件辺りからではないでしょうか。人気商品を買い占めてオークションサイトで高値で販売を繰り返すというものです。定価5万円のプレステ5を買い占めて10万円超で売るのですから転売ヤーは儲かるでしょう。1~2個転売して小遣い稼ぎならまだしも、大量に買い占めるわけですから品薄で欲しい人の手に入らないという現象が起きます。10万円でも買い手がいる限り転売ヤーは儲かりますので増殖しますし、逆にコツコツお小遣いを貯めて買おうとしていた子供たちは手が出なくなるなど被害に遭います。高値で売る方が悪いのか、高値で買う方が悪いのか賛否があるようです。転売ヤーで生計を立てている自称プロの方々にしてみれば「商品を仕入れて高値で売るのは小売店とやっていることは何ら変わらない」という主張もあるようですが、私はこれは大間違いだと思います。流通というのは小売店を通じて商品を欲しい方へ物を届けることを言います。小売店によって物は円滑に消費者へ流通しているのです。しかし、転売ヤーの行為は買い占めですから商品を欲しいという方への販路を遮っていることとなります。転売ヤーが買い占めなければ多くの方に渡るはずのところが遮断させられるわけですから物流の妨害です。これではとても産業構造で言うところの“小売流通業”とは呼べませんよね。
ユーチューブ然り、フリマサイト然り、ネットは本来あるべき使い方と異なる迷惑な利用者が必ず生まれます。メルカリなどは自分の不要品をサイトで販売できるという発想着眼に昔は共感してよく利用していましたが、今では転売業者だらけで個人的には危険なボッタクリサイトのイメージがでてきました。
さて、それはともかく今回は転売ヤーが職業になりうるかどうかについて考えてみたい。
(1)仕入れたものを高値販売する行為自体は違法でも何でもない。しかし、職業だと主張するならば他の一般購入希望者に迷惑をかけているという点であまり褒められたものではないなと感じます。法に触れていなくても周囲に迷惑をかけるなら必ず規制され淘汰されます(合法ドラッグもそうでした)。転売ヤーは何かと適法適法と言いますが、法律がどうであろうとあまり関係ないということを学習すべきでしょう。法律なんて都合が悪ければ国はどうとでも変えられるのです(コンサートチケットはダフ屋の言い分など聞かずに一刀両断バッサリで急遽違法になりました)。また、ある家電量販店は「転売ヤーと判断したら売りません。法律どうのこうではなく当店が転売ヤーだと思ったら売りません。」という店舗もあり非常に良い姿勢だと思いました。ネットでかじった法律知識を振りかざしてエセ弁護士気取りの消費者が最近やたらと多いですが、ポリシーを貫くのに法律は関係ないという態度には拍手を送りたい。違法かどうか適法かどうかなどはこの際関係なく、締め出しを食らうビジネスは短命で、しかもここ数年で急成長したばかりのバックボーンのないビジネスは得てして早々に終焉を迎えます。継続できない商売は職業にはなりえません。
(2)株のトレーダーと同じで買い占めたはいいが、直後に価値がなくなれば赤字転売になります。本記事写真は任天堂が新型switchを発表したため、旧型を大量に買い占めた転売ヤーが慌てて手元に抱えている在庫を吐き出そうとのたうち回っているさまです。6台21万円で旧型を誰が買うというのでしょう(隣も同一バイヤーと思われるので12台以上在庫を抱えているのだろう)。パチプロなどの博打打ちとして生涯生きていくという覚悟ならいいでしょうが、当たれば大きいが外れればこれまた大損害のギャンブルビジネスですからそれは産業とは言えませんね。日本でiPhoneを大量に買い占めて中国で捌こうとした転売ヤーが直後に中国でもiPhone発売決定となり多額の借金を背負い売れないiPhoneの在庫の山を抱え、自ら命を絶った転売ヤーもいたそうですが死と隣り合わせのデス商売に転売ヤーは分類されます。
(3)例えば100個限定の福袋販売で行列の先頭に並んでいた転売ヤーが1人で100個全部買い占めて、直後に3倍の値で売り出すといった行為を見聞きしたらどう思いますか。やっていることは小売業と同じだと転売ヤーの主張に賛同する者は到底いないでしょう。ということは転売ヤーに憧れる人は居ないし、転売ヤーであることに後ろめたさを抱きつつやっている人が多いでしょう。世の中のすべての職業がやりがいがあり感謝される憧れの職業ばかりとは勿論限りませんし、嫌われ役・汚れ役の職業も必要です。でも自分が犠牲になるならまだしも、周囲の人に買い占めなどで迷惑を掛ける行為はどうか、周囲が職業と見なさいものは仕事として取り上げ認知されるのは難しいと思われます。また、苦しくなって組織化すればするほど世の弾圧は厳しくなるため生き残るには個人事業主として行っていく必要も出てきますので寂しい仕事ですし、そんな孤独の中で白い目で見られ罵声の中でも店頭で平然と買い占めできる強靭なメンタルが求められます。
これらのことから転売ヤーは現時点で「職業」だとは到底言えそうもありません(競馬やパチンコ、株取引など個人趣味・博打と同類とみなす)。ネット新参産業の負の原因は素性が分からない人が相手だという不信感です。店舗で購入するのではなくどこの誰かもわからない人が売主なのです。まっとうに商品が届く保証などありません。特に転売ヤーは中華人民系組織も多く、常人にはよくわからない闇深い裏世界にもつながっているそうですから、そういう人に個人情報を教えて高額で物を買うという行為は危険かもしれません。そういうダークなイメージの仕事を世間一般で「まっとうな職業」とは呼ばないですよね。ウーバーイーツもどこの誰かもわからない人が自分が口にする食べ物を運んでくるという点が企業イメージが悪い要因ですし(自社で雇用した社員が配達しているならここまで嫌悪されなかったのでは…)、ネットビジネスの宿命ですが素性不明の人とやりとりするのが特徴である以上、まっとうな職業とみなされる産業はかなり限定されるでしょう(買い手の素性もよくわからないのでお互い様なのですが)。テレワークで出来て流行っているから小遣い稼ぎに手を出すと闇に引きずり込まれるかもしれませんよ。
転売ヤーを辞めろとは言いませんが、転売ヤーはまっとうな職業ではないし、今後職業と認知される可能性も低い(又はなりえない)ということを書いてみました。世に存続・認知させるためには世間の皆様から憧れとなり賞賛を得るようなカリスマ転売ヤーの出現が待たれます。逆に撲滅させるには転売ヤーから物を絶対買わないこと、消費者1人1人の心掛けで彼らは自滅します。さて、日本国民の選択はどちらになるのでしょうか。
「職業とは何か」を改めて考える良い機会になりました。大事なのは需要と供給、求める人がいてなりたい人がいて職業は成立します。将来「転売ヤー経験者10名募集/急募」とか求人広告出すような世の中になるのか否か、世論の判断は今が分かれ道の時ですよ。
----------------------------------------
----------------------------------------

