令和2年6月1日から大企業に対する「パワハラ防止法(労働施策総合推進法)」改正が施行されています(中小企業は2023年4月施行)。セクハラ、マタハラに対しては、すでに男女雇用機会均等法や育児介護休業法などで同様の規制がかけられていますが、パワハラに限っては法律で明確にパワハラの内容が規定されていたわけでもなく、罰則をもって取り締まる法律がなかったことが問題でした。今回の改正によってパワハラの内容が明確になり、事業主はパワハラ防止のための雇用管理上の対応策の義務化が規定されました。
旧世代の者たちは当分の間、このような法律を全面的には認めたがらないと思います。旧世代の人にしてみたら愛の鞭だという考え方は根強くあるでしょう。今の若者にゆとりがあり過ぎるというか強靭な精神力を有していないというか旧世代の者からしたらいわゆる“軟弱者“に思えるのも事実でしょう。料理人や職人の世界では歴史的に慣行だったわけですが、客である私たちはパワハラと引き換えにこれからマズイ料理屋や叱られた経験のないいい加減な職人が世の中に増えて弊害も被ることでしょう。教師が生徒を殴れない時代が教育現場で一体何を生み出したのか、ことさら疑問ではありますが、それとほぼ同じことが会社・職場でも起きるという事です。私はパワハラを擁護する気はありませんし、パワハラ廃止論者でもありません。熱血先生ドラマで教師と生徒の熱い暴力、上司と部下の愛の殴り合いなどを見て育った世代なので、別に暴力が必ずしも否定されるべきではないと思っているだけです。ただ、中途半端にマスコミや評論家が法律がモラルがと騒ぎ立てたので、いつしか暴力はしたたか且つ狡猾な法に触れない陰湿陰険なイジメに変化した。法だ何だとウンチクばかりの頭でっかち人間が増えて、普通に愛ある暴力を認めていれば今頃もっと人間らしい日本人らしい姿でいられたのではないかなと個人的には思います。私の意見はどうでもいいのですが、要するに中立的な立場で“これで本当に世の中いいのかな?”と感じたというだけです。そのわけは、
この法施行ですが、職場のパワハラに当たる行為としては、
①身体的な攻撃(暴行、傷害)
②精神的な攻撃(脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言)
③人間関係からの切り離し(隔離、仲間外し、無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや職務遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
⑥私的なことに過度に立ち入ること
の6類型が挙げられています。仲間外れとか無視を“法律で禁止”するのって何だかよけい気まずい空気で社内の雰囲気悪くなりそうですけどね。法律で禁止されているので無理やり仲良くしなければならない光景を想像してみて下さい。女性陣の集団などで表面的には丁寧な言葉で話しているのに目は笑っていないとか“自分から仲間外れを願い出るように仕向ける精神的な痛め方”が生み出されてきそうで怖い。加害者は法に触れない巧妙な作戦は練ってくるはずですから、何とでも法逃れの言い逃れなんかできます(上司も問い詰めてきたらパワハラだと騒げばそれ以上は追及できないとか事前に策はいくらでも練れる。イジメをする者は頭脳は賢いのが定番で上手いというか巧妙ですからね)。人の本性は法律では絶対に抑えられないと思います。ましてや妬み嫉妬・怒りは欲ですからやめろと言われて止むものではないし法を抜ける巧妙な手は今後どんどん生まれるだけなのはどの法律でも実は同じ。治外法権と言われる派閥跋扈するOL給湯室でこんな綺麗ごとの法がまかり通るのでしょうか。人間の本質や本性を知らない人が机の上で理想論の法律を書けばこうなるのだな…といつもながら思ってしまいます。思い切り喧嘩してスッキリ仲直りなんていうのは時代が古いのでしょうか。令和は喧嘩を禁止し、表向き和気あいあいなら陰湿な人間関係でも構わない、それが社会の営みだという考え方の時代になりそうです。
一方、事業主のパワハラに関する雇用管理上の対応策としては甘甘です。
①事業主のパワハラ方針の明確化と周知・啓発(就業規則・服務規律の改定)
②労働者の相談苦情に応じ、適切に対応するための体制整備(相談窓口の設置)
③パワハラに対する迅速かつ適切な事後対応(パワハラが認められた場合、加害者に対する降格や出勤停止、懲戒解雇などの懲罰)をとらなければなくなりました。
事業主には、行政に対し以上の措置を採ったかどうかの“報告義務”が課され、措置ができていない事業者に対して、管轄の労働局が指導・勧告できることになりました。行政の勧告があっても改善しない企業に対しては企業名が公表されることになり、企業名が公表された場合には「ブラック企業」として世間にさらされますので、企業としてパワハラに対して鈍感ではいられなくなります。
しかし、何かおかしくないですか?届出や報告だけならみんなできます。書類なんかネットで雛形が出回るでしょうからそのまま写せば模範的なものが誰でも書けるでしょう。報告がない会社を公表するのではなくて、“パワハラがあった会社を公表”すべきでないのかと思います。③の自社内でパワハラがあったとして、それを自ら報告する会社がどこにいるというのでしょう。「パワハラがあってもどうせ企業は隠ぺいするわけだから…」ということを想定して企業に不利益がないように法が作られているような印象も受けます。この法はあくまで“報告義務”と“報告違反の罰則”であって“パワハラという犯罪そのものを直接的に罰する法では必ずしもない”ということのようです(それは刑法の方でやってくれということなのかもしれませんが、それなら現実的には従来と何ら変わりないわけです)。企業側にしたら当然ですが隠蔽するなり組織ぐるみで事がなかったことにするのは想像できますよね(施行後にPR兼ねて運の悪い大手企業何社かが見せしめで吊し上げは喰うと思うが…)。そういう企業の本質・本性の部分は逆にしっかり汲み取ってしっかり外してくるところが法律というのは何とも不思議なものだなとシミジミ思います。わかっててあえてそこを見て見ぬふりをして突っ込まないのが社会人・大人の事情なのかもしれませんが。
少なくともいま日本で衆人監視の下で暴言・罵声・叱責・集団野次・誹謗中傷・職務遂行不可能なことの強制・仕事の妨害・私的な事への立ち入り…何でもありのパワハラが慢性化している職場は間違いなく“国会”だと思うのですが、言論の自由の名のもとに国会内ではパワハラや本法は適用されないようです。法を作った方々にこそまずは国民に手本を示してもらえることに期待したいところです。
最後に、このパワハラ防止法とは一体誰得の法律なんですかとだけ言いたい。
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