『仙台市は、父親が危篤と嘘を言い看護休暇を不正に取得したとして、区の一般職の50代男性職員を停職1カ月の懲戒処分にしたと発表した。職員は依願退職した。市によると、2016年11月、「父親が危篤状態となり看護が必要」と上司に虚偽の報告をして3日間の看護休暇を取得した。17年2~3月には「父が危篤」などと言って12日間にわたり、1日当たり数時間、長い時で丸1日欠勤。父親の入院先と報告された病院に上司が出向くと、入院していないことが判明した。職員は17年5月以降、病気休職している。退職の意向を示し復職のめどが立たなくなり、市は休職中に処分することにした。職員は市の聞き取りに「体調不良だったが、有給休暇が残り少なかったため虚偽報告した」と説明している。』(2019.12.26 河北新報)
昔から学校や会社、友人との約束を破る時に何度か親を倒れさせた経験をお持ちの人も多いのではないでしょうか。私たちも雇用労働に携わる職業柄、親が倒れて退職していく派遣スタッフさんをたくさんみてきました。辞めたくなると何故か丁度良いタイミングで親が倒れてくれるのは派遣業界七不思議の一つとして日常的な現象です。
何故、人は自分の都合の良いように親を倒れさせるのか?何故、親なのか?確かに自分自身が重病だとしたら会社の同僚に「どこに入院しているのか?」などと心配されて根掘り葉掘り聞かれるからでしょう。病気っぽい口調で演技をしながら上司と話すのも慣れていないとなかなか難しいものですからね。その点、親なら通常上司とは面識がないため病院に駆けつけるという事はまずないだろうし、上司もノーといえば非人道的だと恨まれかねないと了承せざるを得ない。また、これが祖父母や親戚といった遠縁になると逆に「会社休むほどのこと?」という気まずい雰囲気が電話口ですることだろう。つまり絶妙なバランスで最も同情を受けられやすく、人を欺きやすい(文句を言えないようにする)のにうってつけなのがまさに“両親”なのだ。
よくある嘘だ、みんな使っている手口だと言ってしまえばそれまでだが、相手をだますための嘘をついている点を重く受け止める人は案外少ない。私自身も若い頃に会社をサボるために親を重病にして危篤状態にまでした経験がある。しかし、翌日出勤したときに周囲の上司や同僚から「親御さん大丈夫か?」と親身に言ってくれたことで、申し訳ない嘘をついてしてしまったという苦い反省の記憶があり心が痛んだ。何度も何度も親を倒れさせる人たちは周囲からそういう言葉を投げかけられたことないのか、またはそういう声を頂戴しても自身の保身のためにはなんとも思わない人たちなのだろうか、いずれにしてもそうだとしたら組織の中で寂しい限りだと思う。
この新聞記事のような事件は驚きだが、50代男性で公務員、こんなことで職を失うことになるなんて思いもよらなかったのではないだろうか。働き方改革で職場自体がドライでクールな関係性の組織がこれから増えてくると思いますが、同時に同僚のちょっとした嘘でも犯罪とみなしたり、同僚のちょっとしたイタズラで警察に通報したり、些細なことで訴訟だ裁判だ、そんな会社内における事件が増えそうです。本事件は行政職員という点で厳しかったかもしれませんが、民間でも起きるかもしれません。例えば派遣スタッフが期間途中で親が倒れたとして自己退社(いわゆるバックレ)の際には、嘘をついて契約をご破算にしようという悪質な行為で、派遣会社が被った損害は民事で請求されます。労働基準監督署に駆け込もうが何しようが同様の回答を突き付けられます。会社や仕事をその程度にしか考えていない労働者の悪質行為に会社側も泣き寝入りしていられない、ましてや親が倒れたなんて嘘はそもそもバレバレなわけだが敢えて言えない風潮だっただけで証明書など裏付けの提示などが規則化されたり、そんな契機になるようなある意味で画期的な事件だったのではないでしょうか。世知辛い世の中になりましたが、会社や職場は今後どうなっていくのか不安はあります。休暇が増えたり同一賃金がどうのこうのよりも組織と労働者自身が取り組む重要課題はもっと別のところにあるように思います。何となくブラック企業撲滅からブラック労働者撲滅の時代に推移してきているような気がします。
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