初のコミックス「思いつき無職生活 職なしガールの残念だけど悪くない日々」が話題を呼んでいるいけだいけみさん。そんないけださんに、コミックス化に至った経緯や、無職時代のことについて伺いました。
締め切り前日に描いた原稿で大賞受賞！
書籍化のきっかけになったのは、「コミックエッセイプチ大賞」への応募でした。とはいえ応募したタイミングでは本が出ることなんてまったくイメージしていなくて。友達から「こんなのあるから出してみれば？」って言われたので出してみたような、軽い気持ちでした。
しかも4枚から応募できたので「4枚くらいなら私でもできるかもしれない！」って最初は思ったんですが、結局はギリギリまで何もやらずに締め切り前日に焦ってわーっと描いて出しちゃって。応募するってことだけは決めていたので、締め切りを守らなきゃいけない一心で描いたんですが、よくよく考えると「なんのためにやったんだ？」って感じですよね（笑）。
実際、受賞される方はフルカラーで十何枚とかしっかり描かれていることが多いのに、私はモノクロだし4枚しかないしで、編集の方には「この枚数で応募してくる人はなかなかいない」って言われました。もしかしたら選考のときも逆に印象に残ったかもしれないですね、「少なっ！」「白っ！」って（笑）。
その後編集さんとやりとりをして、ブログを見てくださる方がいることも後押しになり、本を出すことになりました。
芸術大学に入学しデザイナーの道へ
小さい頃から絵を描くのはすごく好きだったんですよ。大学どこに進もうか考えたときに、絵を描くのが好きだし芸術系に進もうと思いました。でも芸大とか美大っていうと、当たり前なんですが油絵とか日本画とか彫刻とか、専門的な芸術分野が多いんですよね。
そんな中にあって「デザイン」という響きが馴染みやすかったというか、当時は自由度が高いような気がしたのでデザイン科を選びました。グラフィックデザインを専攻していたので、今は広告関係のデザイン事務所で働いています。
おもしろさを突き詰めた結果出来上がった「顔」
大学の時にSNSで少しだけエッセイ漫画を描いていたことがあり、このストーリーに1番合う顔はどんなのだろうと考えて、自分の描きたい空気感やおもしろさを突き詰めていったら、今のキャラクターの顔・表情ができあがりました。友人には内面がにじみ出てると言われます。
昨年ぐらいに1回漫画の顔を変えようかという話もあったのですが、ブログで皆さんに投票してもらったら選んでくれたのがいつもの顔だったので、そのままの顔で描いていくことに決めました。あのときはたくさんコメントをいただけてすごく嬉しかったです。
「デザインいでよ！」なかなか厳しいデザイナーのお仕事
新卒で入った会社を辞めて、8ヶ月間無職だったんですよ。3年前ぐらいですね。前の会社は忙しい時はかなり残業することもありましたが、日常的にひどい激務ということはありませんでした。
ただ結構経営が厳しかったみたいで、私が辞めて1年か2年後くらいに大幅な人員整理をしたり、いろいろ大変だったみたいです。
実際私が辞めるくらいのタイミングで、「ああこの会社景気よくないんだな」って空気がすでに出ていて。それで辞める人もけっこういましたね。その会社が人件費とかについて厳しい会社で、基本的に勤務時間中は本屋とかに外出するのもダメ、個人のPCもネットにつながってないという状況で…。しかも資料も買えないんですよ。
だから何も参考にできるものもないので、頭の中で「デザインいでよ！」とか念じてみたりしてました（笑）。あ、唯一部署に1台だけネット環境につながっている共有のPCが置いてあったので、やむを得ない場合はそれを使えるんですが。後は自分で資料を買ったり、会社に古い資料はあったのでもう見飽きたその本を何回も開いてみたりとか（笑）。
今はリーフレットやチラシ、カタログなどのデザイン制作をしている会社で働いているんですが、本当に小さい会社でかなり自由な雰囲気です。10時始業なんですが時間にはそんなにうるさくなくて、社長が11時とか12時とかに普通に来る感じです。ただ、やはり業界的に厳しいみたいで、経営の危機じゃないかという噂も流れていますが（笑）。
「無職を経験できたこと」が一番の収穫
経験しないとなかなかわからなかったり実感できないことって沢山あるじゃないですか。働いていない無職の状態も、働いているときに想像しても実際はピンとこないと思うんですよ。
だから「働かないってこういうことなんだ、こんな気持ちになるんだ」ってことを数ヶ月とはいえ経験できたのが、無職時代に得られた一番の収穫ですね。経験できてよかったなと思いました。
ブログタイトルに無職ってついてるんですけど、本を出して一区切りついた感じもあって、無職ネタのストックはまだあるにはあるんですが、もっといろんなことを書けるようなタイトルに変えていきたいなという気持ちはありますね。これからはもうちょっと日常の出来事なんかを広く書いていきたいなと思っています。
（イラスト：いけだいけみ）
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