魂が結婚する | 恋と仕事の心理学@カウンセリングサービス

魂が結婚する

やなぎあこ


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        木曜日は「もっとラブラブに」。
        青井あずさやなぎあこ
        帆南尚美森實ゆたが交代でお届けします!
        
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カウンセリングサービスやなぎあこです。
今年もあとひと月を切りました。
来年はコロナの終息宣言を願いたいですね。

今日が、カウンセリングサービスのアメブロ『恋と仕事の心理学』木曜日「もっとラブラブに」での、やなぎあこ年内最終担当日です。
少し早いですが、皆様良いお年を。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。



たったひとりでいい。
「どんなあなたでも愛することをやめない」と誓えたなら。
人生は、変わります。

たくさん失敗をしてきたからこそ。
良い自分だけで関わりたいと、あの頃は思っていました。

だけど。

誰かとともに生きることは、誰かと深く関わること。
自分を隠さないことは、とても勇気がいること。

関係が近くなるにつれて。
ダメなところ弱いところ完全じゃないところが。
お互いに見えてくること。

愛しにくい部分の奥にある弱さを、優しく愛そうとするからこそ。
絆が生まれることを。

知らなかったのです。

暗い話は、好きです。
希望のために描かれていると思うから。

だけど誰かと一緒に鑑賞するのは、ためらわれました。
暗いと思われるのが嫌だったのです。

観たい映画やお芝居、小説や漫画、アニメ。
誰かに勧めたり誘ったりするのってちょっと怖いところありませんか。
趣味が受け入れられなかったらどうしようと感じませんか。

特に、文学的な感受性を誰かと分かち合うのってほぼ博打だと思ってます。
大切にしている、とても柔らかい部分を差し出すようなものだから。
弱さを相手に捧げると言ってもいいくらい。

とても勇気がいります。

傷つくことを恐れ、勇気を出せずにいるくらい幼かった。
傷つくかどうかなんて、まだ誰にもわからないのに。

だから、私はひとりを選んでいました。
ひとりで行って、ひとりで帰ってくる。
もちろん、寂しいけど、好きな作品を否定されて傷つくこともない。

本当は、いちばん繊細な心の層で分かり合える人がいたら。
とても素敵な人生になるんだけど。

夫と出会って、お付き合いが始まり。
はじめて映画に行くことになりました。

これまでなら言わなかった。
ドン引きされたら嫌だから。

だけど、なぜかサラッと言えました。
これ観たい。

当時まだ遠距離恋愛で、電話で決めたように覚えています。

昔、仕事帰りに特に予定がなくて退屈をしていた時。
映画マニアの同僚が教えてくれて、ひとりで観た作品がありました。
今はない、渋谷の小さな映画館で。

狂ってたなあ、という正直な感想は、
映画への褒め言葉です。

あいつ、一体私の何を知って、
すごい面白いですよと勧めたのかと思いつつ。
ちょっと心をくすぐられたのは。

あなたを少しだけ知ってるよ、という。
言外のメッセージを感じたからでしょう。

でも。

他にいるとは思わなかった。
あの狂った映画を観ていた人が。

夫です。

だからこそ。
お付き合いが始まったばかりのデートで選んだのでしょう。

当時、公開されたばかりのフランス映画。
すっごい重いのはわかってる。
でも、観たかったんです。

私にとっては。
ふたりの関係を占うような意味もあったのでしょう。

きっと。

映画館を後にして、何も語りませんでした。
言葉で短絡してしまうのをためらう気持ちがありました。

久しぶりに出来た、しかも7歳年下の彼氏と観るのに、
なんでこんな重たい話を選んだのだろうと少し後悔もしました。
でも思ったのです。

この映画を一緒に観られる人でよかったと。

私は、生まれて初めて。
何かを分かち合える人とお付き合い出来たのかも知れない。

だけとやっぱり。
当時の私はまだ知りませんでした。

よろこびだけでなく。
絶望すらも分かち合えたなら。

本当の夫婦になれることを。

魂が、結婚することを。

シャンソンの名曲「ラメール(海)」が流れて、
映画はいくつものレントゲン写真で始まります。

脳梗塞で倒れ、全身麻痺で身体が動かなくなった主人公。
辛うじて動かせる左目の瞬きで残した回顧録がもとになっています。

全身のほぼすべての随意筋が完全に麻痺しているため、
意識はあるが体を動かすことも言葉で伝えることもできない状態。

「閉じ込め症候群“Locked-in syndrome”」。

※英語版Wikipediaの記述をdeeplで翻訳したものを抜粋。

私が今も後遺症と向き合う「ギランバレー症候群“Guillain-Barré syndrome”」は、
類似疾患の一つです。

象徴的な台詞があります。

「潜水服は、君まで、海の底に引きずり込む」
「ジャン=ドー、海の底だろうと私はかまわない
あなたは私の“蝶”よ」

※シュナーベル/ハーウッド(2007年、1:26-1:51)。

観ながら私は。
もし彼が病に倒れても、ずっと支え、そばにいたいと感じていました。

とても自然な感情です。
愛しているからです。

きっと、大変でしょう。
でも、愛していることに理由なんてありません。

だいぶ呑気だったような気はします。
12年後、病に倒れるのは、まさか自分だとは思ってもみなかったのですから。

コロナ禍で、病院と施設では思うように会えませんでしたが。
夫はとても献身的に支えてくれました。
もちろん、今も。

映画を観ながら私が感じたそのままを、彼は与えてくれます。

大変だとは思います。
でも。
あたりまえにしてくれます。

愛しているからです。

急性期は、まだぎりぎり面会できました。
休日のたびに食事介助に来てくれました。

病室にも泊まってくれました。
深夜に目が覚めて、自分がどこにいるかわからなかった時。
夫がそばにいてくれて本当によかった。

看護師さんがまとめてくれた髪を解きながら結び方を覚えた夫が、
髪をとかし、結ってくれました。

回復期は、毎晩ビデオ通話をしてくれました。
担当作業療法士さんがsiriでの呼び出しを設定してくれたiPhoneで。

洗濯物や、必要なものを届けてくれました。
ページをめくる練習には、週刊プロレスを差し入れてくれました。

ようやく立てるようになった時、泣いてくれました。

施設へは、毎週差し入れに来てくれました。
私とは面会ができません。
だから、警備員さんと顔馴染みになっていました。

自宅復帰してからは。
行きたいところへどこでも、車椅子を押してくれます。

車椅子の入れないところへは、夫が一人で行ってiPhoneで撮影し、
私に見せてくれます。
頼まなくても。

雄大な信濃川は、写真でも美しかった。

障害者と暮らすって本当に大変だし気を使います。
だけど、文句ひとつ言いません。

夫は、私が病に倒れてなお、ずっと支えになり。
可能な限りそばにいてくれます。

愛しているから。

今回の原稿を書くにあたり、映画をもう一度観返しました。

医師、看護師、リハビリスタッフ。
身体が全く動かせない状態。入浴介助。
拘縮を防ぐマッサージ、リハビリ。

ぼんやりしている意識。
人工呼吸器、死。

北フランスの片田舎を、群馬県前橋市に置き換えれば。
それはそれはよく見知った光景が、描かれていました。

なぜ私があの映画を選んだのか。
ようやくわかったかも知れません。

きっと、希望を観たかった。
「どんなあなたでも愛することをやめない」ふたりの誓いを。

私たち夫婦の物語としては、長い時間をかけた伏線回収でした。

励ましも、アドバイスも、勇気づけも、前向きな考えも、全ての肯定も。
もちろん全ての否定もいらない。

私はずっと、欲しかった。

絶望を絶望のままで持ってくれる人が。

あの頃は今よりずっと若くて。
知らなかったのです。

ただ一緒に持つだけで、絶望は。
溶けて愛に変わることを。

真っ暗な海の底でも。
あたたかいことを。

思った通りの人生ではありません。お互いに。
ついえた夢もいくつかあります。
だけど、となりに、いつづけた。

ともに歩いているだけ。
でも、そばにいる。

誰よりも。

次の外来では、車椅子じゃなくて歩いて診察室に入ってくるよと、
主治医に約束したので。
苦手な歩行練習を頑張っています。

スーパーではカートを押して。
レジから駐車場くらいまでは、手放しで。

まだまだ、よぼよぼです。
つまづかないように足元を見ながら、えっちらおっちら歩きます。

麻痺が強い方に重心がかかりすぎると、歩行が崩れてくるので、
意識を集中して歩きます。
ずいぶん疲れますし、もちろん長くは歩けません。

だけど。
夫と目があうと笑顔になります。

愛しているから。



参考資料

ジュリアン・シュナーベル(監督)/ロナルド・ハーウッド(脚本)(2007年)『潜水服は蝶の夢を見る』(原作:『潜水服は蝶の夢を見る』講談社 1998年 ジャン=ドミニック・ボービー 原題: Le Scaphandre et le Papillon『潜水鐘と蝶』 英題: The Diving Bell and the Butterfly)、フランス、アメリカ:2008年2月9日アスミック・エース配給で日本公開。



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