blogを書けと言われたので「マッドマックス 怒りのデス・ロード 口述記録集」の話。

 

 blogを書けと言われたので「マッドマックス 怒りのデス・ロード 口述記録集」の話です。

 さて、どうしてこのタイミングでこのような容のエントリを書くのか。
 答えは簡単で「マッドマックス 怒りのデス・ロード 口述記録集」がめっさ面白いやんけ! と改めて思ったからです。
 っていうか、沢山の人に紹介したい! というエゴですね。ええ。

 

https://www.amazon.co.jp/dp/4801934447

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 そんなエゴ塗れの文章ですが、幾つかのポイントに分けて書きます。

 以降は口述筆記集を「本書」、映画本編を「怒りのデス・ロード」と記載しますのでお見知りおきを。よろしく!

 

 

 怒りのデス・ロードの記録へ。

 

 映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」はとんでもなく面白かった作品です。

 サラッと軽く見ようとしても、向こうから「さあ、ガッツリ観ろ!」ととてつもない引力を感じる。だからじっくり観てしまう。そんな恐ろしさがあります。

 

 そもそもマッドマックス第1作目から観てきた人たちからすれば、怒りのデス・ロードは「マックスの役者が変わっている」点で反論が出てもおかしくない。

 しかし、本作ではそれずら凌駕する映画力に満ち溢れています。

 

 そんな作品の裏側を覗いてみたくなるのは当たり前の話ではないでしょうか?

 ネットでは各種情報がてっとり早く手に入りますから、それで満足してもいい……のですが、もっと深い部分が知りたくなるのは自明の理。

 そんな欲望を満たすようなディープな、いや、違いますね。

 怒りのデス・ロード及び制作陣、そして役者、関係者の「剥き出しの生の言葉」が本書には詰まっているのです。

 そもそも冒頭に【「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の二〇年に渡る制作の真相を伝える口述筆記(オーラル・ストーリー)】ってありますからね。

 ――そうなんです。

 怒りのデス・ロードは長い年月を掛けて制作された作品です。

 二〇年の長き時間、そして130名の証言が本書に詰まっているわけでして。

 それこそ本書の凄みの一端がここに凝縮されているといっても過言ではないでしょう。

 どこから読んでも、怒りのデス・ロードの真相を目にすることが出来るとも言いますか。

 これを見逃す手はありません。

 オマケにマッドマックスシリーズについても入ってますから。

 シリーズファンは必携の書と言えます。

 

 あ。あと映画好きならきっと興味深い内容が詰まっています。

 もしマッドマックスシリーズのファンではなくとも、一読する価値ありではないでしょうか。

 

 

 

 130名の登場人物。

 

 前述のように本書には130名の証言が記録されました。

 冒頭でその全員の名前が入れられていますが、そこには「登場人物」と記されています。

 キャスト、一部を除くスタッフ、関係者(様々な映画監督はその他になっていますが)が本書では登場人物なのです。

 そう。

 本書は口述記録集なのに「物語」なんです。

 製作前。制作中。制作直後。公開後の流れの物語と言えば良いでしょうか。

 冒頭からラストまで本書を読めば、怒りのデス・ロードの裏側を知ると同時に、恐ろしくも甘美な物語を自動的に享受できる訳ですね。

 

 襲い来る数々のトラブル!

 素晴らしい出会いと悲しい別れ。

 恐るべき敵の登場。

 そして、逆転の物語――。

 

 このような起承転結をハッキリと感じ取れますほどです。

 これは全体的な構成もさることながら、映画制作の紆余曲折がこれでもかと言わんばかりにドラマティックな(それこそ奇跡的な)展開に繋がっているからに違いありません。

 本当に、目に見えない何かが作り上げた物語だとしか思えない。

 それくらいの美しさがここにあります。

 

 もし、この物語の名前がジョージ・ミラーであるなら、差し詰めジョージ・ミラー監督はタイトル・ロールになるのでしょう。

 ところで、そのジョージ・ミラー監督は本書にどのような役割で記載されているのかというと――。

 

 ヴィジョナリー。

 

 これが何を意味するのか。それは本書を読めば一目瞭然です。

 因みに巻末にはインデックスがございます。そこも手抜かりなし。

 

 

 映画が撮りたくなる?

 

 本書を読むと、何故か映画が撮りたくなる、かも知れません。

 映画制作の流れがそれなりに読み取れるからでしょうか(とは言え、特殊な事例が多いと思いますが)。

 そもそも、怒りのデス・ロードそのものが異様な制作の仕方です。

 それに関しては本書を読んで頂くとして。

 本書を手にしてから「こんなのアリなのか?」と困惑することが何度もありました。というか、全編にわたりそんな感覚を覚えましたけれども。

 困惑の次は、興奮です。

 読み終えると、何か行動を起こしたくなる気分になります。

 映画を撮ってみたい人は、きっとやる気をブーストされるでしょう。

 だから、映画が撮りたくなるかも知れない、と書いたのです。

 もちろん映画制作に関わりのない人でも、何らかの刺激を受けるのではないでしょうか。

 学生から社会人、否、全ての人々に訳の分からないインパクトを与えるのが本書の魅力、と言っても過言ではありません。

 

 また怒りのデス・ロードから「撮影したが削除されたシーン」及び「ラストシーン」に関する逸話も盛り込まれています。

 どうしてこうなったのか。こうしたのか。

 そういった一流の仕事をすることへの指針、或いは一助になっていると思います。

 

 

 

 制作の裏側を知る。

 

 映画作品は、ある種/ある意味、妥協の産物である、と言えなくもありません。

 何故なら、予算や期日という部分がネックになるからです。どんな大作でも、予算・期日は有限なのですから。無限の予算と期日が与えられることは皆無だと考えた方が現実的でしょう。

 とは言え、その限られた中から最高の作品が生まれることが多々あります。

 制限を逆手に取った、ということかも知れません。

 これは映画だけに限らない話ですが。

 

 本書にも怒りのデス・ロードで起こった数々のトラブル・配給会社からの横槍・圧力が記録されています。

 多分、読者は制作側、殊に監督側に感情移入するはずです。

「どうして好きに作らせてあげないんだ。これだけの素晴らしい作品を生み出した監督に!」と。

 ただ、それは結果論でしかありませんし、配給会社は配給会社の都合があるのですから。

 それに本書の中でも言及されていますが、ジョージ・ミラー監督の作品でも興行収入がよくない、或いは世間の評価が低い物があるのは確かです。資本主義の世の中ですから、ある程度は数字を出さねばならないですし、制作側に好き放題させるのもNGであることが本書でも挿入されます。

 

 本書をどの立場で読むか。

 これだけで何度も繰り返し楽しむ事が出来る訳です。

 

 

 

 

 翻訳の妙。

 

 

 本書は元々 カイル・ブキャナン氏によって書かれました。

 原書は英語でして、2023年 ヒューゴー賞にノミネートされています(関連書籍部門に Blood, Sweat & Chrome : The Wild and True Story of Mad Max: Fury Road の名前で)。

 それほどの内容だ、と言うことです。

 

 本書は有澤真庭氏により翻訳されました。

 翻訳。実はかなり重要な部分です。

 書籍、映画問わず、翻訳の力がその作品の明暗を分けることがあるのは、皆様ご存じの通り。

 加えて「原書・原文を活かした、日本語としての文章表現」をしないといけませんから。

 また、海外独特の言い回しをキチンと日本語として落とし込んであることも大事だと思います。

 

 本書の場合だと、とてつもなく「凄い!」としか言い様がありません。

 発言者――各人物の人となりが分かる翻訳だと思います。それも130名分。

 これだけでも読む価値があるというのは言い過ぎでしょうか?

 

 因みに原題の「Blood, Sweat & Chrome : The Wild and True Story of Mad Max: Fury Road」ですが、直訳だと「血、汗とクローム 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のワイルドで真実の物語」になるはずです。

 邦訳タイトルだと「マッドマックス 怒りのデス・ロード 口述記録集 血と汗と鉄にまみれた完成までのデス・ロード」となっています。

 タイトルですらこのセンス。凄い。

 

 

 

 来たるべき「フュリオサ」へ向けて。

 

 

 怒りのデス・ロード前日譚「フュリオサ」が公開予定です。

 2024年5月24日に延期されてしまいましたが、タイトル通り怒りのデス・ロードの登場人物・フュリオサの若き日の物語になります。

 

 この「フュリオサ」を迎える前、本書に目を通しておくことをお勧めしたいところです。

 当然ながら作品「フュリオサ」の撮影エピソードなどはありません。が、フュリオサという登場人物及び作品を制作していく裏側を想像するファクターになると思うからです。

 

「フュリオサ」公開前に一読する。これを強く書いておきます。

 

 

 

 血と汗と鉄がここに。

 

 本書には血と汗と鉄が詰まっています。

 映画そのものだけではなく、130名の登場人物、インタビュアー、著者、翻訳者、版元などの関係者の血と汗と鉄です。

 同時にとんでもない熱量を感じ取ることが出来るでしょう。

 一気に読むには「熱く、そして濃すぎて」なかなか難儀しますが、それでもページをめくる指が止まりません。

 それくらい面白い――名著なのです。

 極論を言えば「マッドマックスやジョージ・ミラー監督、或いは映画そのものに興味がなくても、読み物として面白い物語」がここにあります。

 

 

 ※付箋……。

 

 願わくば、沢山の方々に読んで欲しい一冊です。

 いや、簡潔に言い表すのはこれです。

 

「めっさ面白いから、読むべし!」

 

 

 

 そして、V8を讃えよ。