blogを書けと言われたので「シン・ウルトラマン」の話。  

 

 観ました! シン・ウルトラマン!  

 いやあ、とっても面白かった。っていうか、劇場で観る価値のある映画作品でした。  

 映像・音響、共に劇場ならではでしたねぇ。  

 2時間なんてあっという間ですよ。  島本和彦先生の興奮っぷりも分かる。  

 当然、僅かながら不満点もあります。全てが完璧ではありません。  

 だからこそ、観ている側に「楽しむ隙」を与えてくれるのです(世に言う面白い映画、素晴らしい映画にはこのような〈隙〉が意図的に入れられています)。  

 

 もちろん、初代ウルトラマンのリブートですから、往年のファンやマニアの皆様が喜ぶポイントも多岐にわたります。  送り出した側が「ファンでマニア」だから当たり前の話なんですが。  

 私も一部は分かりましたが、多分全部は拾えてません。  

 何故なら、知識がないから。  

 しかし、マニアックなネタ、時にはノイズになってしまうこともあります。  

 でも、シン・ウルトラマンでは一切そんなことはありませんでした。  

 そもそも、ウルトラマン知らなくても絶対面白い。  

 だから、いろいろな人にお勧め出来る映画作品なのです。  

 

 さて、これから書くことはネタバレが多く含まれます。  

 知りたくない方は、ここで読むのを止めて下さい。  

 よいですか?  では、行きましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここからネタバレ含みます。

 

禍威獣

 

 映画冒頭は、ウルトラQでした。  

 ここで地球に、否。  

 日本にだけ「禍威獣(カイジュウ)」という存在が現れ始めたことが示唆されます。  

 全6体。  人間の知恵と勇気と行動力で何とか退けていますが、完全に災害扱いです。  

 ぬー。禍威獣。なんて厄災だ。  

 この禍威獣退治の専門部署が設立されたと、最初に明示されます。  

 禍威獣特設対策室、禍特対です。  

 禍威獣特設対策室は防災省なので、やはり禍威獣は災害。  

 

 ってところでタイトル。  

 タイトルにもオマージュ&お遊びがあって、とても楽しい。  

 ……んですが、これ、もしかすると? っていう想像も働きます(後述)。

 

 

首をすげ替えろ

 

 禍威獣第7号はネロンガ。  

 電気を喰らう透明禍威獣ですが、この後に出てくる第8号ガボラ及びパゴスの元ネタを逆手に取った設定を持っています。実際にCGコストの面もあったみたいですけどね。  

 

 しかし禍威獣のコードネーム名付けがそんな理由とは。

 いやまで、これは天からの啓示なのか?(後述)  

 

 ネロンガの放電をバックに、住民は暢気に避難を始めていますが、これは演出のひとつでしょう。ほら、災害が起こっても「慣れきっている」或いは「対岸の火事的に麻痺している」状況ならのんびりとした態度になっちゃうでしょうし。  

 ところがネロンガが迫ってきた途端「こりゃ……やべえんじゃね?」って自覚したのか、一転して民衆は必死に逃げ惑います。  

 この辺り、リアリティに溢れているっちゅうか。  

 ガボラのときと比較してみて下さい。  至近距離で現れたガボラに対し、人間がどう反応しているかを。  このネロンガの登場が、物語の幕開けを担当します。  

 正味の話、ベムラーと同じ役割を果たしているワケですね。  

 ここで正体不明の巨人(ウルトラマン)が登場しますが、度肝を抜かれます。  

 映画CMのアレは!? そしてAタイプやんけ! って。  ここで完全にやられました。

 

 

禍特対

 

 禍特対に新メンバーが加わります。  

 彼女の仕事は、飛来した謎の巨人の調査がメインです。  

 

 ここで禍特対のメンバー紹介になりますが、この時点で彼はすでに……って事を表現しています。いやー、そりゃそうだよね。だって岩が後頭部直撃だったし。  

 気になるのは「符丁としての〈ウルトラマン〉」。  

 個人的に、マルチバース(多元宇宙。本編中でも繰り返されています)だからかな、と。  

 別の世界での呼称が影響しているんじゃないでしょうか。  

 誤解を恐れずに言えば、私たちの世界にある全ウルトラマンワールドがマルチバースだ、と。  

 その多元世界・ウルトラワールドそれぞれが影響し合っている。  

 禍威獣の名付けも、別の世界に存在する怪獣からだと考えたら辻褄は合います。  

 だとすれば、シン・ゴジラもウルトラワールドのマルチバースである可能性があります。  

 シン・ウルトラマンの世界はシン・ゴジラが存在しなかった時空。  

 だからタイトルの変化も納得です。  

 あれ? そうなるとウルトラではなく、ツブラヤ・マルチバースだって事?  

 

 ここからが浅見 弘子の受難の始まりである点も注目です。  

 彼女に関して言えば、最初の印象が滅茶苦茶悪い。  

 口の悪い、デリカシーのない人にしか感じられません。  

 それでも映画が進んでいくと評価が反転するから面白いのです。  

 浅見さん、いいんですよー。ふっふふふふ。  

 

 あ。ガボラ戦で赤いラインのウルトラマンが出現します。  

 ここでCタイプに近いフェイスになりまして、電飾スイッチが何故か右耳にのみ出てきます(よく見ると、全体が原型のフェイスと同じく左右非対称)。  

 Aタイプは今にも喋りそう、生物的ですが、Cタイプはアルカイックさが強まります。

 地球人と融合したせいかもしれません。

 超然とした存在、というか日本人が抱く〈神性のある存在への印象〉が影響した、とか。とは言え、あの神永くんがそんな……って書いて思った。

 彼の何は〈神〉が入っているなぁ。

 

 

ザラブ

 

 外星人・ザラブが登場します。  

 この辺りで明らかに「外星人は地球人よりかなり上位の存在である」描写が。  

 それはこの後も続きます。  

 ザラブのデザインは「透明化」ありきなんだなー。  

 裏側が空っぽではなく、全面の表面だけ透過させないとああなる。 

  いやあー、いいな、これ。  

 

 ザラブ、使用する翻訳アプリのせいか感情が希薄な喋りだったんですが、地球人との対話を繰り返してきたおかげで、終盤はかなり狡猾さが滲むようになっています。  

 この辺り、津田健次郎氏の真骨頂かも。  

 

 神永の車内シーン、これ下手なホラーより怖いわ!  って思ってしまいますね。  

 この辺りまで、神永とウルトラマン(リピア)の融合が進んでいないのか、或いは神永自身の行動原理を表面化させているのか、やたら地球人っぽい行動を見せるときがあります。時間が経つにつれ、神永とリピアが混ざり合い、「どっちでもない」状態になっていっていくようにも感じられました。

 

 しかし、ベーターカプセル、いつ浅見のバッグに。  

 てか、バッグに入っていたらすぐに気付くだろうから、時限式転送システム……?  

 この辺り「もし、自分が小説にするなら」って考えますね。  ほら、一応わたくし、小説も書いていますから!(アピールしておく)

 いや、シン・ウルトラマンワクワクしながら観つつ、ほぼ全シーンで「小説にするなら!」モードでした。いや、それくらい魅力的なのよ。 この映画。

 

 シーンが進むと、狡賢いザラブにヘイトが集まります。

 そして浅見と神永、バディ同士のやりとり。  

 偽ウルトラマンとの戦闘の辺りで、不覚にも涙腺が緩みました。  

 やはりウルトラマンなんだ、この映画は、と思い知らされた瞬間です。 

 そう言えばザラブ戦はウルトラマンのザラブ回を見ておくと、とても楽しいですよ。

 

 で、ぶっちゃけ八つ裂き光輪で真っ二つのザラブに「ざまあ!」って思ったのでした。この辺りも上手いよなぁ-。  

 あと夜の東京上空での空中戦は見物です。

 

 

メフィラス

 

 シン・ウルトラマン影の主役(?)、メフィラスが登場してきます。  

 山本耕史氏の存在感がパネェ。

 「○○。私の好きな言葉です」

 「○○。私の苦手な言葉です」

 というメフィラス構文が世に出ました。  

 捲土重来なんか苦手みたいですよ? メフィラス。  

 

 メフィラスが浅見に使ったベーターボックス。  

 ウルトラマンと同じような能力を付加するようです。  

 ベーターボックスで強化された存在は、(作品内の時点で)地球人には1ミクロンたりともダメージが与えられないレベルなので、多分核攻撃も意味を成しませんね、これ。イメージ的に漫画・映画・アニメでお馴染みスプリガンのプレートみたい? あ。あちらは「何故破壊できないのか」の理由が違いますけれど!

 ただし、メフィラスが持つベーターボックスは、リピアくんの持つベーターカプセルのようなシステムの小型化が出来ていません。どうも彼の星の技術レベルは光の国(星)より低いようです。  

 

 そのベーターシステムで巨大化した浅見に対し、無防備に近付いては撮影する人間達。  

 これ、結構現代社会への警鐘としても捉えられるシーンですね。  

 迷惑を顧みず何でも撮影しては、面白がって拡散する。  

 同時に、自身に近付く危険には鈍くなる。 そして二次災害が起こる。 

 行動とその結果への想像力がない。ある種の視野狭窄が起こっているからこそ、でしょう。  ここでひとりくらい踏みつぶしてしまってもいいんじゃない? その方が……って思いましたが、それやっちゃうとねえ。単に浅見に背負わせる罪になってしまいます。 

 流石にダメでしょうねー。  

 

 ただ、リピアくんより先に地球へやって来ていたメフィラスは、人間社会に溶け込んでいます。 居酒屋シーンはメフィラスの「ウルトラマン(リピア)とは年期が違うんだよ、地球文化へのね」という部分が垣間見えます。

 あの「割り勘」って言葉も、彼が人間社会を理解しているからこその台詞でしょう。  

 そんなにお金が好きになったのか。メフィラス。  

 しかしながら、浅見を巨大化させた事による社会への影響は一切想像が付かなかったようで。そこはまだ地球人を理解していない。

 そういうとこだぞ、メフィラス。  

 

 で、吝嗇家・メフィラスの目的を聞いていて「それ、ガイバーだな」って。  

 地球人を優れた生体兵器として狙う輩が他マルチバースからやってくるって伏線も?  

 

 プランクブレーンにあるメフィラスのベーターボックスを捜索するのに、浅見の匂いを辿る、という方法。まただよ。またメフィラスのせいで浅見が辱められてるよ……。  

 

 あ。プランクブレーンってのは平たく言うと「自分たちのいるところではない次元、高次元・異次元」のことです。  

 ブレーンワールドで検索してみて下さい。 とは言え、正直な話、自分たちが認識している世界とは別の次元だと言うくらいの認識で問題ありません。  

 このプランクブレーンはシン・ウルトラマンで重要な役割を果たします。  

 

 紳士然としたメフィラスも、最終的には暴力で何とかしたれモードになります。  

 BGMと相まって、実に見応えがありましたし、途中途中に挟まれる「ウルトラマン(リピア)が神永と融合した事によるデメリット」で、如何にウルトラマンが無理をして地球を護っているか分かるシーンになっております。  

 この辺りからリピアの変化が顕著になってきますね。

 

 「よそう。宇宙人同士で戦っても~」のオマージュもありました。  

 ここでメフィラスはこの後、地球がどうなるかを察して逃げます。  

 もう地球に価値が「なくなる」事が理解できたのです。  げげえ!

 

 

ゾーフィと、リピアの罪

 

 ゾーフィとリピアくんの対話。  リピアくんの罪について、ガッツリ。  

 物語はクライマックスへ突入します。  

 

 ゾーフィは児童誌のネタと設定。  

 そして金色で黒ラインのウルトラマンデザイン案設定が融合したものです。  

 ゾフィーではないのですよ。ゾーフィ。  

 でも役割はとても似ていますし、児童誌設定を上手く活用してる!  

 

 ゾーフィの声は山ちゃんのようです。  

 後に喋る(!)リピアは高橋一生氏ですが、ディレイやリバーブが掛かっているので結構不思議な感じになっています。  

 

 しかしゾーフィ。  メフィラス戦での初登場時にあった不穏な雰囲気から「いきなりリピアにM87光線を撃ち込んだりしないよねぇ……?」と思ってました。いや、ゾフィーじゃないから撃てないか。それにM87光線は特別な存在だと思いますし。

 

  森の中のシーンは、ゾーフィの異物感が素晴らしかったです。  

 そして彼はリピアくんをあくまでウルトラマンと呼ぶ。  うーん。いい!

 

ゼットン

 

 今回のゼットンも絶望の象徴となりました。  

 ゼッ……トン……の鳴き声も、ピポポポポも健在。  

 

 殺意の高い八つ裂き光輪連発。  

 いやあ、ゲーム画面みてぇだな、こりゃ。って思いました。  

 攻略サイトがないと初見で殺されるヤツ。  

 

 で、原作に近い状況で赤い光弾を喰らって地中に落ちるウルトラマン。  

 ゾーフィの最終説得も撥ね除けますが……。  

 

 地球人たちが解決しないといけない。  

 そのために、ウルトラマン=リピアが出した答えは、地球人にとってよかったことのか?  そこも見所です。  

 

 昼間の日本の空に浮かぶゼットン。  

 昼間の月と同じ描写なのは流石。 白っぽく見える、アレです。

 しかしここでもやはり日本のみなのね。  

 

 この後大団円へ。  

 リピアと分離した(例のグングンカットの逆回し!)事で、神永は地球へ戻ってきます。  

 彼は一声も発さずにエンドロールになるのですが……。  

 命を二つ持ってこなかったゾーフィ。

 リピア、ただひとりの犠牲で彼は生還したという事でしょうか。

 

帰ってきたシン・ウルトラマン

 

 庵野総監督は次のシン・ウルトラマンをご自身で作りたいと発言しているとか。  

 なら「帰ってきたシン・ウルトラマン」だな! 

「怪獣使いと少年」とか名作シリーズぶっこんで!

 

 実際、神永はリピアの命を貰いました。  

 そして神永のいる世界へ、マルチバースから生体兵器として地球を狙う存在が次から次にやってくる可能性も示唆されました。  

 対抗しうる希望は、神永だけなんですよね。  

 リピアの命を持つ彼こそ、他次元の光の国(マルチバース)から新たにやってきたウルトラマン・リピアと融合する可能性が高い。

 或いは、「神永自身のギジ・シンカによる、地球人単独でウルトラマン化」。  

 

 ゾーフィ曰く「地球人は、我々と同じ存在になる可能性を示した」。  

 地球人が進化をしていくと、光の国(星)の住民と同じになるのです。  

 神永は光の国の住民に現状一番近いと思うんですよ。  

 そのとき、人類が手にしたベーターシステムを応用するのかもしれません。  

 ただし、それは神永が地球との決別をするという事に他なりません。  

 ギジ・シンカした神永は、人でもなく、外星人でもないあやふやな存在になります。  

 シン・ウルトラマン本編と同じく、世界各国が争奪戦を始めるでしょうから、彼が選べる答えは少ないんです。

 ヒーローはいつも孤独だ……。  

 

 あ。ギジ・シンカについて。  

 原作(?)の帰ってきたウルトラマン=ウルトラマンジャックは変身アイテムを持ちません。  団(ジャックが融合した地球人)はジャックとの意志が一致したときのみ変身出来ます。

 でも、最終的には団の意志で自由に変身出来るようになりました。次第にジャックと団の〈精神の境目〉が曖昧になったせいでしょう。そして団と分離せずに最終回を迎え、飛び去っていきます。 多分、ジャックと団は一体化して、同一人物(?)になったってことでしょう。 

 これを神永に当てはめると、ウルトラマンと完全融合する、或いは彼自身が光の国の住民に近いものに進化することで、ベーターカプセルなしでの自由な変身が可能になるわけです。  

 それをして、ギジ・シンカと私は称しています。勝手に。

 帰ってきたウルトラマンをリブートするとしたら、この要素は外せませんしね。  

 

 あ。そうだ。

 ベーターシステムなしのウルトラマン=光の国の住民そのものになるとしたら、神永と融合して弱体化したリピアとは違い、元スペックに近い姿になるはずですよね? あ。それでも地球人のボディが邪魔をするか……。  

 どちらにせよ、カプセルなしでの変身を重要視するなら、地球人・神永が擬似的に進化し、光の国の住民に近い存在になる展開がベターかなぁと。どーですか?

 あとジャックのブレスレットをベーターシステムにしちゃうのもありかな。  

 プランクブレーンから武装を呼び出す的に(プランクブレーン=四次元ポケット説)

 そもそも、ブレスレットがあった方が、帰ってきたウルトラマンっぽい。  

 あ。登場外星人と禍威獣はどれがいいかなぁ。  

 

 ――ここまで書いてきて、(自分だけ)めっさ盛り上がってきた!  

 次から次に物語が浮かんでくる。  

 うわー、どんだけ刺激してくるんだ、ウルトラマン。  

 

 今回書いたのは勢いで表面をさらっとなぞった内容です。  

 興奮未だ冷めやらず。  延々と語れるわ! シン・ウルトラマン。