以前に、クライエントのSちゃんから、カウンセリングの体験談を投稿してもらったことがありました。

 

 

その後もお話を聞く機会があるのですが。

 

最近は、体験談をもらった時よりももう一段元気になってきていて、心が乱れた時の回復の仕方など話してもらったりして、それがもしかして、たった今不調がある人の参考になるのではないかと思い、改めて文にしてもらいましたので、掲載させていただきますね。

 

だいぶ前に書いてもらっていたのですが、社会的に衝撃が大きい時だったので掲載を少しためらっていたのですが、読み直してみて、やはりみなさんに読んでもらえたらと思います。

 

 

 

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『心を保つ』


とある芸能人についての報道が流れた時、私はテレビの電源を切った。ファンではないけれど、同じ子育て中の私にはすごく衝撃的だった。良き理解者として接していた元妻や子供の事を思うと辛かった。

 

「やばい。落ちる。持ってかれる。」

 

揺れる心を守る為に咄嗟にリモコンを手に取り、頓服を飲んだ。

すぐ近くの海まで走って景色を見ながら、心を取り戻す事だけに集中した。 


私は、自分が落ちる(もっとはっきり言えば消えたくなる、死にたくなる)状況になる前に予防するすべを、少しずつ作り上げてきた。例えば、好きな音楽や自然の中に没頭したり、友人や同僚に愚痴をこぼしたりする等だ。

それでも落ちそうなら、先生に連絡をして話をする。

 

落ちてしまってからでは、誰も私を助けることは出来ないことを知っている。

 

落ちてからこそが助けてほしい。一番しんどくて、ドロドロのどん底にいる時にこそ助けてほしい。

何度もそう思った。

だけど無理なんだと最近は考えている。

 

支援者も生身の人間である以上、落ちた世界には行けないし入れない。

口も出口も落ちた人しかわからない。

だから落ちる前に止める事が必要だと思う。

私は意識して情報や行動をコントロールし、自分の心が落ちない様に守っている。

 

ここで、強く言いたいのは落ちる事が悪い事ではない事。

 

ただ、私の感覚だと落ちたらもっと落ちる方向にどんどん引っ張られてしまうから、少しずつでも方向転換する意識を持った方がいいと思う(できれば自分を傷つけない方法で)。

 

ある医師が講演で、「自分で自分をご機嫌にしてほしい。年齢や環境等に惑わされず、自分のやりたい事をやってほしい」等と言っていたが、とても的を得ていると思う。

その医師は、執筆活動をしつつ東京で大学教授をしていたが、アフガニスタンで人道支援活動を続けてきた中村医師が殺害されたのを契機に、北海道の田舎で総合診療医として働いているそうだ。

この医師はあの悲惨な事件に心を打ち砕かれず、自分にできる事はないかと探して、医師のいない地域の医療に貢献する道を選んだ。

これは、本当にすごい例で簡単にはマネはできないけど。

でも自分の心を保ちつつ、時には受けた影響を自分の人生に活かしていく事も可能だと教えてもらった。 
 

ところで「自分はこうなったら落ちる」というのを知って、予防するにはとても時間がかかると思う。

仕事や家庭のトラブル、急な事件や事故、身内の病気や不幸等、落ちる原因は生きている限りいくらでもある。

誰だって一度きりの人生を、必死に生きているのだから、他人の事をなど気にしてはいられない

他人はもちろん、時には自分の味方であるはずの親や家族や支援者でさえも、時に心を取り乱す様な事をしてくる。

その中で、自分が落ちないように守る上で、自分の事を気軽に相談できる存在は、私に限らず誰にでも必要ではないかと思う。 
 

先生とのカウンセリングの中で、不意に「その事、書いてよ」と依頼され、今もカウンセリングを受け、過去には色んな機関や支援の窓口を利用してきた当事者として、この文章を書いている。

 

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辛い時を経てきた彼女のことばを、私もしっかり受け止めたいと思います。

Sちゃん、書いてくれてどうもありがとう。