前提として。
欲望はきりがないということを我々は知っている。
恋愛。
快感。
名誉。
金銭。
食欲のみは肉体という物理的制限がブレーキを効かせられるとしても、その他の「欲望」というヤツは、くれるなら、取れるなら、もらえるなら、際限なく望んでしまうのが人間の本質であるということは、認識はしていなくても理解できる程度の普遍的な概念である、のだ。
「刻刻」の堀尾省太の最新作。
前作でも堅固といえるほどしっかりした世界設定で、読者を異世界へと容易にいざない、そして放しませんでしたが、今作もすごい。
なんだかより緻密で徹底した感があります。背景、仕草、反応なんかがとても丁寧に描かれている。P58~62のリアルさよw
そして、そのガッチリ作られた世界のほんのわずかなヒビに、この作者ならではの「異物」が侵入してくる展開。そのせいで、つまり「日常・普通」がリアルに描きだされているだけに、「異物」の得体の知れなさ、不気味さがより増しているのです。ここがたまらんクセになる。
すべからく物語というのは、何かが変容する様を描くわけですが、こちらの予想より速く広く強く、どんどんと浸食されていくこの不気味さ。このハラハラ感を味わえる作品はそうそう出会えるもんじゃないですよ。
「一体どうなるの?」
欲望が際限ないということをこっちは知ってるもんですから、「そんなんしたらこうなるやん?え?いいの?」とか、やきもきハラハラ落ち着かねえw
まとめ読みもいいんですが、リアルタイムで追いかけるこの焦燥感を味わうのもマンガ読みの楽しみの一つ。「福の神」という「異物」が何を起こすのか、目が離せません。
オススメ。