たこ焼きくん-7話 | 磯島の話

磯島の話

心さらけ出して書いてます。

前のつづき


「10分」


10分。白川蛸焼で定められた
たこ焼きを焼く時間目標。

これはお客さんを待たせないという意味も
あるが、陸上のようにタイムが早ければ
いいってものでもない。
10分で質の高いものが求められる。
白川ではたこ焼きを
美味しく焼ける一番最少タイムであった。

たこ焼きを焼いた事のない人。
たこ焼きを焼く時間を計った事のない人。
にとってはよく分からん数字ですが、
10分はむちゃくちゃ早い。

中には「焼けるよ!」って人も
いるかもわかりませんが、
その方はレベルの高いたこ焼きマスター。
鉄板の温度。火加減。
そしてなんといっても
ひっくり返す絶妙のタイミング。
ピタっとマッチした時だけ
質の高い10分という時間が実現される。
とてもご家庭用のたこ焼き焼き器の
火力では実現は難しい。
もしこれからご購入の方がいるなら
電気タイプではなく
火力が強くて調節可能なガスタイプのものを
おすすめしたい。

僕はたこ焼きの準備から焼く練習を
少しづつするようになった。
夕方のヒマな時間でたこ焼きの注文が
出前で普通の8個入り1つとかの時は、
焼くペースも焦らないので、
お客さんにも出せるようにまでなった。

まずは、使う列だけの鉄板の温度を
MAXにする。ちなみに2列は弱火で
待機されているのでその列を強火に。

そして油をしく。油もあまりべちゃべちゃ
たくさんつけてはダメ。すぐに鉄板の温度があがって
たこ焼きがこげてしまうから。
丁寧に「の」の字を描きながらうすく塗っていく。

そして、鉄板に粉を入れる。
粉も沢山入れてはダメ。
すぐに固まってしまって仕上がった時の食感、
中のトロっとした感じが少なくなってしまうから。

そして具材。粉の上にタコを入れていく。
白川はタコがデカいのでタコだけで
鉄板の窪みがうまる。
次に白ネギ。片手でネギのタッパを持ち
片手でぱらぱらと入れていくが、
均等に入れなくて はいけない。
ネギの輪が3~4くらいだろうか。

そして天かす。以前にも書きましたが、
この天かすが食ってもうまい。
心理的にいっぱい入れたくなる・・・が、これもほどほどに。
最後に紅ショウガ。これも1個に3~4粒くらい。
たとえ8個でも1個づつ丁寧に入れていたら
焦げてしまう。片手でぱらぱらっと均等に入れていく。

そして最後に粉を入れる。
この最後の粉の量でたこ焼きの大きさが決まってくる。
まだなれないうちはたっぷり入れてしまう。
むしろ「でっかいほーがうまいやろう!」と
明石焼きっぽいべちゃっとしたたこ焼きを目指してしまう。
でもこれは大きな間違い。
これをすると焼けるのに時間がかかってしまう。
時間がかかると美味しいたこ焼きの醍醐味ともいえる
小龍包のような中のあっつい汁が出にくくなる。

鉄板の窪みと窪みの間が少し固まってきたなと思った頃に
8個をひっくり返しやすいように1つずつ切り分けていく。
そしてまずは「の」の字で半分と少しだけひっくり返す。
これも心理的にすべてひっくり返したくなるもんですが、
半分と少しだけでひっくり返して、待つ。

そして、ひっくり返した下の部分が見た目で
固まったなという頃に(見えないんですけど)
丸くなっていない部分を逆「の」の字で押し込んでいく。
僕は左利きなので、はみ出た部分は左側。
左手でたこ焼きの上からぶっつぶすように下に
押し込んで逆「の」の字で窪みを添わせていく。
言葉で書いていても訳がわからなくなってきた・・。

まぁでもこれでほぼ丸くなる。あとは
外皮を黄色から茶色になるまで待つ。
この時点ではまだ外皮は柔らかいので、
中からタコの汁がぷくっと吹き出る。
その頃に吹き出た部分をしたに押し込む。

ちびちび触りたくなるもんだが触っていると、
焼けるのが遅くなる。
出来るだけ触る回数を減らす。。
でも触ってしまう。

できあがりタイム18分・・・・。
丸く焼く事が出来た事で第一ステップとしてはクリア。
たこ焼きの秘伝の粉で味は美味しいので
店長的には「まぁOK!」なんでしょうが、
10分に近づけないと数をさばけない。

忙しくなると店長、もしくは慣れた人と交代。
正直交代したくない。ずっと焼いていたい。
こんなこんなで、10分を目標に焼き続ける日々が
はじまった。

つづく

次回は「店長のこわざ」




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