小生が愛読する日経新聞の8月20日付朝刊のマーケット総合欄の「大機小機」に
掲載された「隅田川」氏のコラムには、なかなか興味をひかれたので、一部加筆の
上で紹介する。 |
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岸田文雄首相が「今秋の自民党総裁選挙に立候補しない」と表明した。当然ながら
新首相には、「岸田首相の経済・社会・外交政策の成果」を 引き継いでほしいが、
同時に 「時の流れに合わなくなった政策の方向転換」を図るべきである。筆者は、
経済政策について次の3つを改めてほしい。 |
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第一は、「『デフレからの脱却』を最重要目標とする姿勢を改め、ポストデフレ型
の政策運営に変える」ことだ。政府は「物価が持続的に下落する状況」がデフレで
あり、「再びそうした状況に戻る見込みがないこと」がデフレ脱却だとしている。
つまり、政府は物価が下がることを心配しているのである。 |
しかし、日本の消費者物価(総合)は、2022(令和4)年4月以降、2年以上
も前年同月比;2%以上の上昇率が続いている。「日本経済は 既にポストデフレの
時代に入っており、国民も これ以上物価が上がらないことを望んでいる」はずだ。
デフレからの脱却を目指すのでなく、インフレのこれ以上の進行を懸念するべきだ。 |
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第二は、「バラマキをやめて、財政再建に本腰を入れる」ことだ。岸田首相は6月、
やや唐突に、秋に経済対策の策定を目指して、「年金世帯や低所得者への給付金支
給を検討する」とした。これは「国民の受けを狙った典型的なバラマキ」である。 |
日本の財政は、長期金利の上昇が見込まれる中で、国債の金利負担が次第に高まっ
てくるであろう。「超低金利の下で、打ち出の小づちのように財政を使える時代は
終わった」のだ。毎年のように「経済対策の策定と補正予算の編成を繰り返す」の
を止めるべきだ。 |
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第三は、「異次元の少子化対策を見直す」ことだ。岸田首相は、少子化対策に力を
注ぎ「少子化に歯止めをかけるべく年間3.6兆円という巨額の予算措置を講じる」
としている。だが、それが合計特殊出生率を高める上でどの程度の効果があるのか
は不明である。 |
人口減少に歯止めをかけるためには、出生率を「2.07」程度まで 高めなければ
ならないのだが、現状の「1.20」という出生率を考えると、これは無理な話だ。
目標も効果も不明確なまま巨額の少子化対策を続けるのは 莫大な予算浪費となる。 |
背伸びした目標を掲げることをやめて、「人口減少を 所与として 共存するような
経済・社会を目指す」べきだ。(隅田川) |