安全保障環境が厳しくなる中、経済関連の情報も漏洩への警戒感が高まっている。 |
機密情報の保全対象を経済安全保障分野にも広げる新法「重要経済安保情報保護・
活用法」が成立した。「経済安保推進法」は、重要物資の供給確保など目指すが、
新法は機密保護の観点から経済安保を強化する。国が適性を認めた人のみが情報を
扱う「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を導入し、民間人も含め
て身辺調査の対象とする。
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新法では、漏洩すると国の安保に支障を与える可能性があるものを「重要経済安保
情報」に指定。情報を漏らした場合は、5年以下の拘禁刑などの罰則を科す。 |
経済安保情報の取り扱いを巡って、欧米各国では既に適性評価制度を運用しており、
先進7か国(G7)では、日本だけが制度を導入していなかった。当局間の情報交
換を円滑にして、民間企業の競争力強化を図るために、日本も体制を整える必要が
あったのだ。制度導入によって、先端技術の国際的な共同開発の参加が可能となる
など、民間の競争力拡大をにらむ。 |
より機密性が高く、漏洩で安全保障に著しい支障の恐れがある情報は、「特定秘密
保護法」の運用を拡大して対応することで、同盟国以外の国や外国企業等に漏れる
ことを防ぐ。新法「重要経済安保情報保護・活用法」と合わせて、二段構えで秘密
保護法制を強化する。 |
また、「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を導入して、有資格者
だけが機密を扱えるようにする。国が、身辺調査をして信頼性を確認する。情報を
漏らした場合は拘禁刑や罰金を科す。 |
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半導体など重要物資の供給網構築や、サイバー攻撃対策などの重要性が増している。
安保戦略に関わる情報管理の徹底や、同盟国との連携強化が求められる。 |
対応が迫られるが、情報の制限や人権侵害につながってはならない。恣意(しい)
的な運用で経済活動や国民生活を萎縮させないように、監視する必要がある。 |
指定された情報を扱えるのは官民ともに、本人や家族への身辺調査をクリアした
有資格者のみだ。だが、プライバシーの侵害や、恣意的な情報指定によって国民の
知る権利が制限されるとの懸念はなお根強いようでもある。しかし、国民の安全に
関わる情報を扱う以上、本人同意の身辺調査で情報漏洩リスクが調べられるのは、
当然であろう。 |
何よりも経済界が新たな制度を求めていた点を忘れてはならない。制度が未整備の
ままでは、機微情報を扱う海外政府や研究機関等のプロジェクトに参入する機会を
逸するという企業側の危機感は大きかった。 |