知っておきたい50年の経済史(3) | 尾張エクセルの「日々精進ブログ」

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木曽の清流に映え、心触れ合う躍動都市;愛知県一宮市に活動拠点を置く、尾張エクセルです。保守政権を応援しつつ、経済・社会・軍事防衛まで、地域や国内、海外の気になる出来事や話題を、独断と偏見溢れる一味違った目線でブログ提供します。

日経新聞朝刊の「プラス1」に掲載された「知っておきたい50年の経済史」からの加筆
引用である。今回は21世紀を迎えた激動の2000年代を取り上げる。
 
【2001年】「米同時多発テロ」が世界に衝撃
「米同時多発テロ(9.11)」は、2001年9月11日に、イスラム原理主義と反米を
掲げるテロ組織「アルカイダ」によって起こされたテロ事件である。

この事件は、「世界貿易センタービル」を始めとした米国主要ビルに ハイジャックされた
航空機が衝突し、世界的な衝撃をもたらした。
犠牲者は約3千人であり、負傷者は2万5千人以上に上った。
金融市場にも大きな影響を及ぼした。
① 世界的な株安: 事件直後、世界的な株価が下落した。
② 米国市場閉鎖: 2001年9月13日から9月16日まで、米国市場は一時的に閉鎖。
③ NYダウ平均の下落: 2001年9月17日にはNYダウ平均が684$下落。
また、米同時多発テロは 消費者の景況感や消費態度にも影響を与えた。航空,旅行,小売業な
どは深刻な打撃を受けた。さらに、米港の経済成長率は3ポイント減少して、保険請求額は
最終的に400億$以上に上った。この事件は、金融市場だけでなく、米国経済全体に大き
な影響を及ぼした。
この事件を契機としてアフガニスタン紛争 (~2021年)が勃発し、世界規模での「対テロ
戦争」が始まった。
 
【2002年】構造改革好況~
構造改革とは、資源配分の効率性改善へのインセンティブを生み出すような 各種の制度改革
であり、具体的には、公的企業民営化、政府規制緩和、貿易制限撤廃、独占企業分割による
競争促進政策などがそれにあたる。
それによって、一国経済において 資本や労働という生産資源の配分が適正化されて、既存の
生産資源の下でより効率的な生産が達成され、潜在GDPないしは潜在成長率が上昇する。
構造改革とは「潜在GDPそのもの」を拡大させるための政策。経済学者で、小泉純一郎総理
に乞われて国務大臣となり改革を主導した「竹中平蔵」は、「日本は サプライサイドを重視
して 生産性を高めていく政策を掲げなくてはならない。構造改革の本質は、供給側の強化で
ある」と指摘。
2001年5月5日、小泉純一郎総理は「所信表明演説」で「今の痛みに耐えて 明日を良く
しようとする米百俵の精神こそ、改革を進める今日の我々に必要ではないか」と述べた。
小泉個人は「構造改革なくして景気回復なし」と発言しており、郵政民営化や企業法整備 等
の日本国内の供給面での構造改革を通じた拡充と安定が 日本経済の回復にも貢献すると考え
ていた。「改革」を巡っては、推進役として竹中平蔵を閣僚に起用して 「骨太の方針」など
を発した経済財政諮問会議を司令塔として、自由民主党 の改革反対派議員や官公庁と対立に。
2003年に自由民主党総裁選挙では党内から「小泉おろし」が起こったが、小泉は「総裁選
の私の方針が国政選挙の自民党の公約になる」と訴え、自民党総裁に再選された。
2005年夏には郵政民営化問題の衆議院審議に端を発した 衆議院解散~衆議院議員総選挙
が行われた(いわゆる小泉劇場である)。結果として、自民党は大勝した。
「聖域なき構造改革」を提唱した小泉純一郎は、2006年9月に首相を退任した。後任者で
ある安倍晋三は就任後初の会見で「構造改革を加速させ、補強していきたい」と語り、政策面
では基本的に小泉路線を継承した。
 
【2008年】世界経済危機。リーマン破綻・金融緩和広がる
米国では 2000年代初頭の金融緩和などを背景にして住宅バブルが発生した。米国の金融
機関などは、「低所得で信用力の低い借り手向けの住宅ローン(サブプライムローン)」商
品を販売した。
ところが、このローンに返済難が問題化して、フランス大手金融機関が傘下のミューチアル・
ファンド(投資信託)解約を凍結した為に、サブプライムローン関連商品に買い手が付かなく
なってしまった。
これにより投資銀行の含み損から膨らみ、米金融大手「リーマン・ブラザーズ」の経営破綻に
つながった。
日本は震源地ではなかったが、輸出急減や円高で米国以上に経済が落ち込んだ。当時は「世界
恐慌以来の危機」と受け止められて、各国は「デフレ経済の長期化」という日本の失敗の経験
に学び、金融緩和に舵を切った。欧州財政危機にも波及して、金融制度・規制が大きく見直さ
れる契機となった。
問題の一端は、運用難で高利回りの商品を求める投資家向けに、サブプライムローンを組み込
んだ金融商品が開発されたことにもある。複合的な金融商品が内在するリスクを認識する上で
今後も重要な史実である。
 
【2013年】日銀;「異次元」の金融緩和と黒田バズーガ
デフレ経済からの脱却を目指し、当時の黒田東彦日銀総裁が「2年程度で物価上昇率2%」と
の目標を打ち出した異次元の金融緩和策。
2013年4月には、量的・質的金融緩和策(黒田バズーガ)を導入した。
ところが、物価上昇には時間がかかり、2016年にはマイナス金利の導入に踏み切った。
2023年に黒田前日銀総裁が退任後は、原材料費や人件費の上昇を受けて、2024年には
17年ぶりとなる利上げを決めた。
 
【2020年】「WHO」がパンデミック宣言~新型コロナが世界中で猛威
通常のインフルエンザよりも致死率が高いなどの特徴を持つ「新型コロナウイルス」感染拡大
を受けて、世界保健機関(WHO)は「パンデミック(世界的大流行)」を宣言。
当初は、治療薬やワクチンがなく、感染拡大防止のために、各国が経済活動を制限し、世界的
かつ急激に景気の重荷になった。
景気悪化に対応した各国の財政拡張や、大規模な金融緩和が後の世界的なインフレに繋がった
面もあったようだ。
世界各国が足並みを揃えた対策が進む中、個人や企業も、生活様式を見直さざるを得なかった。
また、ウェブ会議やリモートワークの進展で働き方が大きく変化した。
 
【為替相場を巡る半世紀の出来事】
1971年;1$=308円~ニクソンショックが発端のスミソニアン協定を受けて、従来の
 1$=360円の固定相場から変動相場制に移行
1973年;1$=254円台~円の変動相場制移行を受けて上昇
1986年;1$=152円台~1985年のプラザ合意を受けて上昇
1998年;1$=142円台~円安抑制に、ドル売り・円買いの日米協定介入へ
2011年;1$=75円台~東日本大震災の年に戦後最高に
2016年;1$=121円台~日銀のマイナス金利導入決定後の安値
2020年;1$=101円台~新型コロナウイルス感染拡大後の高値
2024年;1$=150円台~バブル経済期の1990年7月以来 約34年ぶりの円安水準