EVはまだ早すぎたのか?「つなぎのHV車」に再注目 | 尾張エクセルの「日々精進ブログ」

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今年に入ってから、EV(電気自動車)の失速記事が目立つ。EVの世界販売台数は
2021年以降に急増したが、2023年にはその成長幅が鈍化している。それは、
「欧米でEVの需要が伸び悩んでいるため」だという。
中共では、政府の補助金によってEV価格が下げられているため、その成長に陰りは
見えない。2024年もEVの増加率がさらに鈍化するとの予想もある。
現在、欧米ではEVの価格は同等レベルのガソリン車よりも30%ほど高い。しかも
欧州では、そのギャップを埋めてきた多くの減税措置や補助金が終了するようだる。
米国でも、補助金の対象となるEVは国産車だけであり、現時点では選択肢がそれほ
ど多いわけではないのだ。さらに欧米では金利が高止まりしているために、消費者は
ローンを組むのに消極的になりがちだという。
一方で、EVはまだ完成されたものではなくて、バッテリーの性能や走行距離も今後
向上する見込みだという。「その発展を待ってから購入をしよう」と考える消費者も
少なくないようだ。地域によっては充電インフラも不十分であって、積極的には購入
しにくい場合もある。
2023年に、EVの代わりに特に米国で販売台数が増えたのは、価格がEVよりも
低いHV(ハイブリッド)車だ。トヨタは、2023年に前年比で約100万台増の
340万台のHV車を売り上げたという。フォードも、2024年のHV車販売台数
が40%増えると予想する。
一方では 「今後 米国の自動車メーカーがEVの価格を下げれば、需要が再び急成長
する可能性は充分ある」との指摘もある。「現在での問題は、ビッグスリーの自動車
メーカーが利幅を守るため、EVの生産を制限していることだ」との発言もある。
今後は、さらなる技術革新も加わって、EV価格が下がれば、その入手は より容易に
なり、需要は高まる。だが、HV車はそれまで市場から求められ続けるだろう。
その転換にはまだ時間がかかるが、それまでにどれほどのEVメーカーが生き残れる
のかは定かではない。
さすがの「EV推進派」も、最近のEVの失速を認めざるを得ないようである。数字
で如実に出ているから、仕方がないのだろう。
ただ、「EV推進派」はそれでも負け惜しみの論理を 以下のようにつらぬくようだ。
「トレンドとしての世界のEV化に変化はない。今は、これまでの需要(一部の富裕
層や新しいモノ好き)が一服しただけである。現時点では、今後の技術革新を待って
いるだけだ。新たな革命的技術革新が起きて 必ず世界中の自動車はEV化していく。
HVは、単なるつなぎの技術に過ぎないのだ」と。
果たしてそうだろうか? 確かに、「蓄電池に エポックメイキング的な技術革命」が
起これば、そうはなるだろう。具体的には「より軽くて同じくらいのパワーを出せる
こと、充電時間が飛躍的に短くなること、寒冷地にても性能が変わらないこと、航続
距離が飛躍的に伸びること」などである。
しかしながら、「エンジン車よりも歴史が古いEV」の欠点は、今もなお 克服されて
いない。漸進的進歩はあっても、エポックメイキング的進歩はなかったのである。
結局のところ、「SL(蒸気機関車)」がエネルギー効率5%の物理の壁を破れずに、
エネルギー効率30%の「EL(電気機関車)」に駆逐されてしまったように、EV
もまた、現在抱えているさまざまな物理の壁を乗り越えることはできないであろう。
閑話休題。「HVは、EV化への『つなぎの技術だ』とされている」が、この文言で
思い出すのが、再生エネルギー(再エネ)と原子力発電(原発)との関係である。
「再エネ推進派」は、以前から「再エネ社会になるまでは、原発は必要悪」のような
ニュアンスを主張していた。「原発は、来たる社会のためのつなぎだ」という考えだ。
その根底にあるのは、「再エネは、まだ技術的な課題がいろいろあるので、すぐには
普及はしないが、究極的には世界はベース電源不要社会となり、再エネは世界の主力
電力となる」という主張である。
実は、その技術的課題というのが、EVと同じように「蓄電池」なのである。再エネ
は、大規模蓄電池が開発されない限り、主力電源化は困難であるからなのだ。もう少
し実用化の可能性がある技術としては、「再エネ電力でグリーン水素を作ること」が
あるが、いずれにせよコストの問題が解決されない。
「再エネ推進派」にしても、「EV推進派」にしても、いずれは「技術的なブレイク
スルーが起きて、再エネ社会・EV社会が実現される」として、大嫌いな 原発や化石
燃料を悪者扱いしているように思える。
そして、両派に共通しているのが、「物理を無視した 蓄電池技術のブレイクスルー」
なのである。
不思議なのは、原発については、世界の理性は「3.11」後もその必要性をきちんと
理解していたのに、なぜかEVについては、トヨタを除いて、世界中で「バスに乗り
遅れるな」となったことである。
ホンダ,日産といった世界的自動車企業でさえ「EV一辺倒」に舵を切ってしまった。
日産は、フランスのルノーという 外国の息がかかっているから やむを得ないとして、
あのホンダがエンジンを捨てることを表明したことについては、驚きとともに、些か
がっかりした人も多かったのではないだろうか? 何せ 天下の悪法「マスキー法」を
クリアしたあのホンダ、なのだから…。
トヨタほどの資本力を持たないための、やむを得ない判断であったのかもしれないが、
素人でも簡単にわかるEVの問題点を、プロ中のプロが無視したのは、理解に苦しむ。