小生も正会員である公益財団法人~「国基研:国家基本問題研究所」の「今週の直言」に、 国基研企画委員の太田文雄氏が、去る8月8日付けにて、以下の論文を掲載されたので、 今回のブログにて紹介する。 |
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今年の防衛白書を読んで、かつて1987(昭和62)年に白書の第1部「世界の軍事情勢」 の執筆を担当した者として所見を述べたい。今回の白書では、中国の軍事力の具体的な 増勢予測について記述がなく、単に「今後の動向が注目される」といった表現が、多く目に ついた。また、今日的なトピックに関しては、読者に分かりやすいように、軍事技術的な比 較が必要ではなかろうか。
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・中国軍事力の将来予測を |
中華人民共和国(中共)は経済が減速し始めたとは言え、既に2隻目の空母や主要艦艇 の建造を決定しており、今後とも国防費伸び率の急速な低下はないであろう。 |
本年6月に米海軍分析センターが出版した『偉大な“海洋力”となる中国の夢』には、2020 年に主要艦艇の隻数で中国は、米海軍の約260隻を上回る270~279隻を保有する(海上 自衛隊は42隻)と記されている。またイージス艦に関しても、海自の8隻と、日本を母港と する米海軍の10隻の合計を、場合によっては上回る18~20隻を保有するであろうとの 見積もりを明示している。 |
さらに、米海軍大学の中国海洋研究所が予測をした2030年の中国海軍は、主要艦艇; 約400隻で潜水艦は約100隻に達すると想定されている。 |
防衛白書でもこうした具体的な増勢見通しに基づく将来の軍事バランスが明示されれば、 今後の我が国がどのような対応をとるべきか、明確な指針が得られるのではなかろうか。 |
・軍事技術の比較も欲しい |
一方で、中・ロ両国が韓国の「終末高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備に反対をしている 旨は防衛白書に記述されており、ロシアが昨年、弾道ミサイル防衛にも使える「地対空ミサ イルS400発射機;32機」を中共へと輸出する契約がなされた旨も、報道を引用する形で 脚注には書かれている。だが、射程200kmのTHAADよりも、射程400kmで6つの目標 に同時に対処可能な「S400」の方が遥かに高性能であるという比較は行われていない。 |
即ち、中・ロは倍以上の能力がある「S400」の契約を昨年しておきながら、韓国の「THA AD」配備には反対、つまり「自分たちはやっても良いが他国はダメ」という身勝手な主張を している。これは、中国が自国の「排他的経済水域(EEZ)」に入る外国船には 許可を求め ながら、他国のEEZには無断で入り、調査活動を行っている身勝手さと全く同じである。 この身勝手さが、防衛白書の記述からは浮き彫りになってこないのである。 |
また冒頭;「日本の防衛この一年」ダイジェスト版で「中国の海洋進出を取り上げていない」 のはどうしたことだろう。折しも8月5日・6日・7日と連続して、尖閣諸島周辺の日本の領海 や接続水域に中国海警局の公船が最大13隻が侵入、約300隻という大量の中国漁船も 付近を航行している。 |