日時:令和元年11月6日(水) 18:00~19:30
アドバイザー:中谷常二先生
出席:
(社会人)13名、(学生) 2名
課題図書:「新版 現実を見つめる道徳哲学」 晃洋書房
ジェームズ&スチュアート・レイチェルズ

 

 


◎    は中谷先生の解説
※ ファシリテーションとしての解説であり、中谷先生自身のご意見というわけではありません

第1章 道徳とはどんなものか
◎ 滑りやすい坂理論 = くさび理論
ex. 名前をつける自由 大熊猫(パンダ)・悪魔・使われていない字 文字以外・・音だけ・・・
どこかでくさびを打たなければどこまでも行ってしまう。
 ・ 同性婚はどこでくさびを打つ? 多重婚は? 3人・・・5人・・・兄妹・・・父娘
 ・ どこでくさびを打つか、が難しい。
 ・ iPS細胞で作った精子と卵子
 ・ レイチェルズの功利主義では、効用が勝るのなら楔の位置はずらしても良いと考える。
 ・ 自殺は? 障碍者の幼児を放置することで死亡するのは?
 ・ CSRのケースでも「線引き」タイプのケースがあった。人それぞれの立場によって線の位置が違うという考え方もある。
 ・ 京大の山際教授がチンパンジーの生態を観察し、3人婚、5人婚はあるが、近親相姦はしないように楔が打たれている。
◎    合意でというのはカント派は反対。ナチスは国民の合意を得た。
 ・ 動物からの類推もダメ、カマキリは交尾の後メスがオスを食べるのを良しとするか?
 ・ 全てをカントで、とかベンサムでというこどではなく、課題によって適切な理論があるのでは?
 ・ 功利主義における利益の測り方はどうしたら良いのか?

第2章 文化相対主義の挑戦
◎ 倫理学者は基本的に文化的相対主義には反対。一方文化人類学者等は支持する傾向
 ・ アマゾンの奥地の文化を西洋文化が侵略することの是非?
 ・ 幸福の増大というのがレイチェルズの基準だがそれが唯一かどうかは議論がある。
 ・ 殺しても良いかどうかという問題と、死体の処理をどうするかという問題とでは違った扱いがあっても良いのでは。死体の処理に関してはもっと自由度が高くても良いように思う。
 ・ 社会に参加するのであればそれなりのコストを払う必要があるというのは理解できる。例えばアマゾンの奥地で生活するのであればそこのルールで良いが、西欧人とともに暮らすのであればそれなりのルールを守るべきという考え方は分かる。
 ・ それだとアマゾンの奥地の人は人間と扱っていないことになるという議論になる。
 ・ ラグビーワールドカップや東京オリンピックに関して、韓国が旭日旗に反対しているが、それは日本が旭日旗を使用することが軍国主義にまで転がっていくところにくさびを打ちたいということか?日本的
 ・ 不快原則(他社危害原則)・・・ほかの文化が嫌だと思うことはやってはいけないという議論もある。
 ・ 本人同士は分かっているからきつい言葉で言っていることでも他者からみて不快に感じるレベルであればハラスメントと言われるケースもある。
 ・ どこまで不快か、単なる不快のレベルであればマナーの問題。それが他者危害原則にあたるレベルかどうかの判断は議論がある。そう考える人の数で考えるのが功利主義。
 ・ 功利主義の一番の問題点は「幸福の中身」が特定できない。
 ・ 幸福の中身をどう考えるかが文化によって違うとすると文化相対主義が正しいかもしれない。
◎    この本にあるのは難問集。難問に挑むのが倫理学だということ。
 ・ 事例の子供たちは科学や大人の力がなければ死んでいく子供たち。その意味では自然の寿命が尽きて死ぬ自由を奪っているという考え方もありうる。
 ・ 病院のような施設でもなすすべなく放っておかれて多くの人が死んでいくネパールと延命策で生き続ける日本では生命に対する考え方が違う。

以上(文責 北村)