第51回Nゼミ
日時:平成29年10月12日(木)18:00~19:30
場所:KS-SOL会議室

アドバイザー 中谷譲二先生、岡部幸徳先生
出席者:社会人 10名、学生5名


課題図書:論究ジュリスト 2017年夏号より
「現代の法課題と法哲学の接点:外なる他者・内なる他者~動物とAIの権利」

AIについての議論状況
(発表担当)第三次AIブームの特徴は機械学習、深層学習。
      AIネットワーク。ネットワークによってAIとつながる。特化型AIがいろんなAIとつながることで汎用AIとなる。いずれAIが人間の知能を超えることが懸念されている。
今日議論するのは、AIが暴走したときに、責任は人間でいいのかというところ。
 

AIと人権
Ⅰ.人間の条件
(アドバイザー)種差別の話は議論したことがある。ピーターシンガーは脊椎に苦痛を感じる能力がある動物を殺してはいけない。(=功利主義)昔は、種が違うということで黒人に対してモノのように扱うなどの差別もあった。
(発表担当)功利主義では、苦痛が対象なの?
(アドバイザー)あくまで対象は苦痛を感じるか感じないか。苦痛を減らすことを目的しようというのがあるので、ライオンが生きるために牛を食べることは仕方ないが、食べなくても生きていける人間は食べないほうがいいという考え方。
○ 苦痛はどういう基準?
(アドバイザー)動物によって違うとは思うが、苦しみは感じている。功利主義をつくったのはベンサム。今日のニュースで猫を殺して逮捕とあったが、動物愛護法の根本にあるのは功利主義といわれている。
△ 動物の苦痛を減らすよりも、人間の良好な精神状態を達成するためにある法律のように感じる。人間が中心の法律だと思う。動物愛護法違反になる対象動物も人間が愛着を感じるような動物だったはず。
☆ これを見たときにすごい違和感があった。動物は人がつくったものではなく、AIは人がつくったものなのに同じレベルで議論することが違和感。
(アドバイザー)いまのクローン技術では、人間がつくったネズミなどもある。この話になると、議論が広がるが・・・。

Ⅱ.新たなる他者?
Ⅲ.ピュグマリオンとその責任
(発表担当)AIが勝手に動き始めると過失が誰にあるのかということは非常に難しい。最終的には保険でカバーなのかな・・・。
(アドバイザー)責任をとるということはどういうことか。罰を受けたから謝る必要はないという考えもある。
(発表担当)保険が代行して謝るケースがあるが、後々、裁判になるケースがある。
□ 保険の場合は、まさにそれが商品になるケースもあって、それが売りにもなっている。
◎ AIが火災を起こした結果、殺人となる可能性もある。そのときに相手がロボットだから仕方ない。お金を払ってはい終わり。となるのはどうなのだろう・・・。
◆ 予見可能性が争点になるのではないか。いまの法の考え方でいくと因果関係がないものは裁けないので難しい。
(発表担当)AIの因果関係となると技術的にもかなり難しい。

<トロッコ問題>
AIは思考過程がわからないというが、一つ一つはきっちりとした積み上げがあると思う。将棋がそのひとつ。
(アドバイザー)人間がしたらどうなるの?
(発表担当)緊急避難として正当化していいという議論はある。
最近のニュースにもある高速道路の問題は。
      仮にAIが起こした事件だったら、AIはスイッチを切られて終わりなのか・・?

Ⅳ.有限かつ唯一の私
(アドバイザー)社会契約論とは、どろぼうしたくないからいずれもしないという道徳的な話から成っている。短所は本当の契約がないところで、無視すれば破綻する。ロボットもそういうこともありえる。社会の一員にそもそもなれるのかという話もあるが。
◎ ロボットもスイッチを切られたくないというのがあるのでは
ある意味社会契約になるのでは。
(アドバイザー)社会契約ができない人(AI)は社会構成員から排除するという考え方もある。

Ⅴ.私とその境界
☆映画やアニメの世界では自我があると人間と同じような存在とみとめられる。我思うゆえに・・・という感じかな。
(発表担当)動物には自我はあるのか。自我はあるけど痛みはない動物はいるのかな。
やっぱり人間は人間、犬は犬、ロボットはロボットだと思う。何かあったときは社会的な制裁を与えればいい。
(アドバイザー)社会のコンセンサスに任せるのであれば、過去に黒人を奴隷としていたこともOKということになる。

Ⅵ.フランケンシュタインの正義
◆ AIが所有物を認識(所有権をもたせる)すれば、(その所有物をはく奪することで)罰を与えられる。
(アドバイザー)個体性でなくても継続性があればアイデンティティはあるという考え方もありうる。ネットワークもアイデンティティを持つことができるのでは。
国や地域、会社などのアイデンティティはそれを構成する人間がアイデンティティを持つのであって、機械がアイデンティティを持つという議論には違和感がある。


以上