東京大学の卒業生が組織している「ワールドカフェ」に参加してきました。
 
 
ワールドカフェというのは、「カフェでおしゃべりしているような雰囲気でディスカッションしよう」という趣向で、参加者が6人程度づつのテーブルに分かれていくつかのテーマに付いてディスカッションし、その後メンバーを入れ替えてまた次のテーマに付いて語り合います。
 
限られた時間の中で、できるだけ多くのメンバーと話し合うことができるようにという面白いスタイルで、1995年に米国で始まったと言われています。
  
 
今回の参加者は約25名。年齢も20代から最高齢は85才までバラエティーに富み、職種も技術者、経営者、弁護士など様々な異世代、異業種間交流となりました。
 
 


最初に「瓢鯰図」で有名な禅宗(臨済宗)の本山妙心寺・退蔵院副住職の松山大耕師のキーノート・スピーチの後、3つのテーマに付いてディスカッションしました。
 
 


画像は関西東大会のHPから借用しました。
 
 

きちんとノートを取っていなかったので不正確ですが、特に印象に残った点だけ記載します。



○ 世界的に見ると宗教の融合が始まっている。
 
○ 日本の仏教にとっての敵はキリスト教やイスラム教等ではない。
 全ての宗教にとっての真の敵は「無関心」
 
○ 日本における仏教離れが問題になっているが、西欧における教会離れの方が深刻

○ 日本の僧侶は結婚、肉食、飲酒すべてOKで規則があまりない。それで良いのかと悩んだこともある。
 
○ 中国の僧との交流で感じたこと。日本では規則(ルール)は厳しくないが、規律(自ら節制すること)にはとても厳しい。中国では規則がとても厳しくなっている一方、修行時以外は規律が甘い。

○ 規律が甘いため、規則が厳しくなり、そのため宗教者の生活が一般市民の生活からかけ離れて行ってしまっているのが宗教離れの原因ではないかと感じた。

○ ダボス経済会議に、東大寺の長老猊下と出席。予約して対話を希望する相手と話すバイナリセッションでは海外の若手参加者からの参加希望が多かったことが印象的。
 
 各国主催の夕食会では日本主催のジャパン・ナイトが一番人気で、2000人ほどの参加者のうち600人が参加。和食への人気を改めて感じた。日本はこの和食人気を利用して日本の魅力作りにもっと力を入れるべき。
 
○ 日本製品(たとえば漆器)のクオリティの高さは定評があり、人気もあるが、フランス人は日本のものそのままではなく、フランス人のテイストに合わせてモディファイ(足を付けるなど)しながら楽しんでいる。
 これを見ると、日本製品同士で張り合うのではなく、他国(ベトナム製など)との比較で格段に差があることを示す方が戦略的かもしれない。
 
○ 座禅の意味。修行で一週間座禅を続ける。なぜかと聞いたことがあるが、お釈迦様のされたことと同じことを実践してみるということと、無意識の意識を知ることだと言われた。

 その時はそんなものかと思っていたが、だんだんと理解できるようになってきた。

 自分の声を録音し、他人の声の録音と聞き比べてみると、聞き分けられる人と間違える人がいるが、耳で聞いて間違った答えを出した人でも、体に取り付けたセンサーの反応を見ると間違いなく自分の声に反応している。それが無意識の意識。
 
 
 
キーノート・スピーチの後は、3テーブルに分かれて次の3つのテーマでディスカッションしました。
 
① これからの日本は国際社会の中でどのようにリーダーシップを発揮して行くのか?
 
② リーダーシップにおいて道徳はどのような役割を果たしているか?
 
③ 日本人の道徳心は高いのか? 人生において道徳は重要か?

 
全員が3つのテーブルを回って議論できるように司会者が時間配分をしてくれて、海外での仕事経験や、アジア・欧米等との取引の経験などを踏まえて様々な意見が出ました。

松山禅師とは残念ながら同じテーブルになる機会がなかったのですが、最後のまとめを聞くと、やはり道徳や宗教は、短期的な視点での利害関係がデッドロック状態になってしまったようなときに、長期的な視座に立って方向性を示すところにその役割があると述べておられたようです。
 
 
経営倫理の勉強会(Nゼミ)での議論でも「善(よ)く生きる」ということや、倫理・道徳について意見交換していますが、本当の宗教者を交えていつもとは違うメンバーでのディスカッションはとても楽しく、気づきに満ちていました。