「リンダ問題」


リンダは31歳の独身、ものをはっきりいうタイプで、頭がよい、大学では哲学を専攻
した。
学生として差別問題や社会正義の問題に強い関心を持ち、反核デモにも参加していた。

さて、次の2つの文のうち、よりどちらが可能性があるか?

 

A:彼女は現在、銀行の出納係である。

B:彼女は現在、銀行の出納係であり、女性解放運動に熱心に取り組んでいる。


論理的にはBである場合は必ずAでもある、(つまりBはAの真部分集合)ので、可能性
は A≧B となります。

 

 

ところが複数の人に回答してもらうとBと答える人の割合のほうがずっと多いというこ
となんです。

  

この問題は、心理学者で2002年にノーベル経済学賞も受賞したカーネマン(Daniel
Kahneman)がAmos Tverskyと共同開発したものだそうです。

 

最初に行われた実験では回答者の90%近くがBと答えたようです。今の日本では受験
勉強で「ひっかけ問題」に対するトレーニングを積んだ人が多くなっているせいか、Aと答える人の割合がかなり多いようです。
どのくらい多いかは母集団によって異なるようでが、このような傾向は必ずあるようです。一般的に、なんらかの理由で論理的には正しいとはいえない結論を導いてしまう人間の傾向のことを「バイアス」と言い、その原因となるものをヒューリスティクス(経験則)といいます。

 

リンダ問題はそのうち「代表性ヒューリスティクス」と呼ばれる経験則によるもので、
たとえば背の高い黒人の男性がプロのバスケットボール選手になる可能性は、背の低い日本人男性より高いと考えるのは、長身の黒人バスケットボール選手がたくさんいることを知っていること(経験則)によるもので、必ずしも結論が誤りであるとは限りません。

 

経験則を使うと、すばやく結論に到達することができますが、その結論にはバイアスがかかっていることがある。というところに注意が必要だということですね。