ここまで、「承認が大事」というお話をしてきました。

一言で「承認」といっても、その「承認」には、三種類あります。


それは、「存在承認」「行動承認」「成果承認」の三つです。

英語で言うと、「being」「doing」「having」です。



子どもが生まれて間もない頃、

多くのお父さん、お母さんは、

「生まれてきてくれてありがとう」

「あなたはいるだけでいいのよ」

という気持ちで、赤ちゃんに接すると思います。

この気持ちが、「存在承認」です。

こういう気持ちで接している親を感じると子どもは、

自己肯定感の根っこ、つまり、基本的信頼が育っていきます。


その結果、安心して、自分らしく輝けるようになっていくのです。



だんだん、赤ちゃんが成長していくにつれて、承認の対象は「行動」に移っていきます。


たとえば、「寝返りができた!」「つかまり立ちができた!」

「言葉を発した!」「歩いた!」などなど。



心理学では、失敗したけれども、その行動を褒められた場合、

ただ失敗した場合に比べて、「またチャレンジしよう」という意欲が湧く、と言われています。


ぜひ、「ここまではよくがんばったよね」「ここまでがんばった姿を見て感動したよ」と、

感じる気持ちをIメッセージで伝えつつ、行動を認める言葉がけを意識してみてください。




子どもが小学校に入るくらいになってくると、

承認の対象は、「成果」へと移っていきます。

「テストで百点取ってえらいね!」「かけっこで一等賞取ってすごいね!」と。



「成果承認」が必ずしもすべて悪いわけではないのですが、

「成果承認」ばかりだと、子どもは親に認められていると思えなくなっていきます。


たとえば、小学校、中学校でテストで百点を褒められて育った子どもが、

進学校の高校に進んだ場合、どうなるでしょうか?


周りは自分よりもできる子だらけ。

問題も難しくなっていますから、テストで百点なんてなかなか取れません。


その結果、親からの褒め言葉がなくなった子どもは、

「自分はダメな子なんだ」と思うようになってしまいます。



これが、今や、三百万人とも、四百万人ともいわれる、

「引きこもり」につながっている、と言われています。





発達心理学者のエリクソンも、

「『基本的信頼』をしっかり自分の中に育てることができた人は、
 
 希望を持って生きていくことができる。

 反対に、『基本的信頼』を育むことができず、

 周囲の人に対して不信感のような感情を持ってしまうと、

 子どもは希望を持って生きていくことができなくなる」

と言っています。



希望を持って生きていけなくなった子がどうなるかというと、

自分の殻に閉じこもるようになり、家に引きこもってしまうようになるのです。



もちろん、時として、「成果承認」も重要です。

ただ、「存在」「行動」「成果」の三種類の承認があると理解した上で、

偏りがないように、バランスよく承認の言葉がけ、態度で接してほしいと思います。



そして、何よりも大事なのは、

どんな言葉をかけるか、というスキル・やり方ではなく、

どんな態度で子どもと接するか、つまり、あり方です。



子どもに対して親が、存在を承認する心持ちで接するからこそ、

子どもは、「自分は自分のままでいいんだ」と安心して過ごせるようになるのです。


ぜひ心がけてください。