周りの大人の信じる力によって、子どもが変わった事例は、他にもあります。

『さなぎ』という映画の事例をご紹介します。



長野県喬木村に住む、愛ちゃんという女の子が、
小学校1年生の2学期から、学校に通えなくなってしまいました。


その話を聞きつけた映画監督の三浦淳子さんが、
愛ちゃんを、小学校2年生の時から、大学を卒業するまで、
十四年間追い続け、ドキュメンタリー映画に仕上げた作品です。


小学校1年生で学校に行けなくなった愛ちゃんですが、
2年生のときに職員室へ、そして、特別支援学級へと通うようになり、
3年生になると少しずつ元のクラスに通えるようになります。

そして4年生からは完全に元のクラスに通えるようになり、
6年生では児童会長を務め、最終的には美術大学に進学するまでになりました。


この映画を見て、
「どうして愛ちゃんは普通に学校に通えるようになったんだろう?」
と疑問が沸きました。

それでパンフレットを購入して読んでみたところ、
そこに書かれていたお母さんのコメントに感動しました。


「娘の不登校が始まった時、
『この子の笑顔を取り戻す!』と決心し、
そのために日々自分に言い聞かせていたことがある。

『好きなことを大切にする』

『先に手や口を出さない』(これが一番難しい)

『どんな気持ちなのかを考える』

『明るい積極的な気持ちで見守る』


このことは今でも私の原点だ。


家族とぎくしゃくした時、
仕事で悩んだ時、
物事が進まない時は、
いつもこの原点に立ち帰る。

特に人に対する時、
この不登校の娘と付き合った経験が、
ものすごく役に立っていることに気付く」


「子育てって、過ぎてみて初めてわかることばかりで、
あれこれ思い出しては自分の情けなさにため息が出る。

買い物の途中、泣きわめいて止まらなくなった3歳の娘に、
どうしようと途方にくれた。

でも今ならわかる。

娘はもう少し、目の前の興味のあるものと付き合っていたかっただけなのだ。

私がイライラせずに娘の目線で話して聞かせ、十分や二十分待ってやればよかったのだと。


(中略)


この頃、私よりずっと若いお母さんの疲れた様子、
一生懸命な様子を見かける度に、
かつての自分の姿が重なって胸が痛くなる。

そして声をかけてあげたくなる。

『子育てって思うようにいかないものなんだよ。

思うようにいかないのが当たり前と思ってた方がいいよ。

だからほら、子どもと一緒に少しでもたくさん笑って、
楽しんじゃったほうがいいみたい。

ゆっくり、のんびり、あせらないでね』と。」




親が子どもを信頼すること。

そして、親が、子育てそのものを、心の底から楽しむこと。



そんな思いで子どもと関わるからこそ、その気持ちが子どもに伝わり、
子どもは安心して、自分らしさを出していくことができるようになるのです。


ぜひ、意識して、今しかないこの瞬間を、大いに楽しみましょう。