このような事態となった場合、会社として、社員のみなさんの安全を確保するために、
帰宅指示を出す場合があります。
その際に、給与の支払いをどうするか???という課題が出てきます。以前に労働基準監督署に、このテーマで取材したことがありましたので、
ご紹介します。
※前提として
”天災事変等不可抗力”による場合の例外がありますが、
以下のお話はこの例外が適用されないものとして進めます。
ご参考までに、不可抗力とは、
(1) その原因が事業の外部より発生した事故であること
(2) 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることが
できない事故であること、の2つの要件を満たすものでなければなりません。
激甚災害等が発生した場合には、この例外に該当する場合があります。
1.労働基準法の規定は???
労働基準法26条によれば、
「使用者の責に帰すべき事由による休業」として
① 「平均賃金」の
② 「100分の60以上」の
③ 「休業手当」
を支払うことと規定されています。
さて、この「休業手当」ですが、思わぬ誤解をされてしまうことが時としてあります。
わかりやすく説明するために、このような例を設定してお話します。
(例)
パート社員
・ 時給 : 1,000円(諸手当なし)
・ 就業時間 : 9時から18時(お昼休み:12時から13時の1時間)
実労働時間 8時間
・ 平均賃金 : 8,000円
※平均賃金の計算方法は、別途規定されていますが、ここでは、
例として8,000円とします。
・ 4時間(14時以降)休業
14時まで通常勤務していましたが、台風が接近して警報が出たので、
危ないので帰宅してもらったという場面設定です。
2.さて、休業手当はどうなるのでしょうか???
この場合には、会社として、「休業手当」の支払い対象を検討することになるのですが、
いくらを支払うこととなるのでしょうか???
シンプルに「14時から18時の4時間分の100分の60」
ということになるのでしょうか???
この考え方ですと、休業手当は、
1,000円×4時間×60%=2,400円ということになりますが。。。
3.労基法・行政通達に則った実務での計算は
1日の「所定労働時間の一部のみ使用者の責に帰すべき事由による休業」
がなされた場合
(1) ”実際の就労時間(例では4時間)に対して支払われる賃金”
が、
(2) ”平均賃金の100分の60に相当する金額に満たないとき”
のみ、
(3) ”その差額”を支払わなければなりません。
となります。
上記の例にあてはめてみますと。
(1) 実際の就労時間に対して支払われる賃金
1、000円 × 4h = 4,000円
(2) 平均賃金の100分の60
8,000円 × 60% = 4,800円
(3) 差額支払いが必要な休業手当
1.の4,000円 < 2.の4,800円 となりますから
4,800円 - 4,000円 = 800円 となります。
となります。
では、15時に帰宅してもらった場合はどうなるのでしょうか?
就労時間は1時間延びて5時間になります。
① 実際の就労時間に対して支払われる賃金
1、000円 × 5h = 5,000円
② 平均賃金の100分の60
8,000円 × 60% = 4,800円
③ 差額支払いが必要な休業手当
①の5,000円 > ②の4,800円 となりますから
「差額支払いなし」という結論になります。
もっとも、ご説明した内容は、労基法・行政通達に則った実務での計算方法ですので、
この水準を超える処遇を取り決めしておけば、だいじょうぶです。
ですが、「危機管理」の観点から混乱を避けるためにも、
あらかじめご検討・周知徹底されるのも一案かと思います。
※当該計算方法・取り扱いにつきましては、労働基準監督署に取材確認のうえ、
コラム掲載しております。
※本コラムは、弊社HPコラム
からブログとして転載しております。
【日本最速!5分で読める】労務のTIPS
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