遺言を自筆するのはゆるくない(北海道弁) | 行政書士の日々のくらしと風景

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大阪府箕面市の行政書士、濱坂和子のブログ
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「ゆるくない」とは、私の郷里、北海道の言葉で、ラクではない、大変だ、という意味です。今日の話題は自筆証書遺言の方式の話。遺言をすべて手書きするのは常々大変だと思っていました。そのことを考えていて、ふと郷里の言葉が頭をよぎりました。

 

「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」のうち自筆証書遺言の方式の緩和に関する部分が平成31年1月13日に施行され、自筆証書遺言の方式が新しくなりました。これまでは相続財産の内容も含めてすべて自書しなくてはならなかったのですが、「自筆証書に相続財産の全部又は一部の目録を添付するときは、その目録については自書しなくてもよい」こととなりました。ただし「自書によらない財産目録を添付する場合には、その『毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)』に署名押印をしなければならない」とされています。

 

行政書士会の支部の当番で、年に何回か市役所の行政書士相談の日に、私も当番として座っています。平日の日中なので、来られるのはだいたい年配の方々で、相談のほとんどが相続か遺言です。相続と遺言はどちらも多いですが、このごろは遺言のほうが多いように思います。自分で書いた遺言や下書きを持ってこられる方も多いです。

 

自筆証書遺言を簡単に考えている相談者は多いように思います。ルールは「全文を自筆」「日付」「氏名」「押印」(他に加除などの変更をするときの方法も決まっています)。これだけ、といえばこれだけなのですが、全文を、パソコンなどをつかわずにすべて手書きするというのは、「遺言者の財産のすべてを妻〇〇に相続させる」というような内容であればさほど苦労はいりませんが、財産を特定して何人かの相続人に相続させるような場合は本当に大変です。特に不動産の場合。マンションなどはかなり面倒ですね。私なら書きたくありません。相談会で持ってきた自筆の遺言を見せていただくと、けっこう不動産の書き方を間違えていることも多いです。

 

このたびの改正では、財産のところに「別紙目録第1」などと書いて(ただしここは自書)、パソコンで入力して印刷したものや、不動産の登記簿謄本、通帳のコピーなどを添付することができるようになりました。ただし自書部分と自書ではない財産目録は別の用紙で作成しなければならず、また別紙目録には署名と押印が必要です。両面印刷や両面コピーの場合は、両面ともに署名押印がいります。それでも、かなりの省力になりそうですね。自筆証書遺言の利用が進むかもしれません。