労働者名簿って何だ? | 社労士からの情報発信ブログ

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おはようございます。

介護労務コンサルタント(社会保険労務士、介護福祉士、介護福祉経営士)の松岡勇人です。
師走のお忙しい中、当ブログをご覧頂きありがとうございます。



労働基準監督官が必ずチェックする法定三帳簿
前回、労働基準監督官について記載しましたが、臨検(立ち入り調査)時に必ず提出を求められ、チェックされるのが法定三帳簿と呼ばれているものです。


労働基準法に定められているため、“法定” 三帳簿といわれています。

具体的には、次の3つの帳簿のことです。

1.労働者名簿

2.賃金台帳

3.出勤簿



パソコン管理もOKです!
帳簿といっても、今のご時世ですから、紙ベースで作成・保管する必要はなく、パソコン上で管理することも認められています。


ただし、以下の3つの要件を全て満たす必要がありますが、パソコンとプリンターがあればクリアですね。
1.法定必要記載事項揃っていること


2.法定必要記載事項をパソコンの画面に表示し、プリントアウトできるようにすること


3.労働基準監督官の臨検に際し、閲覧や提出の求めに応じて、直ちに必要事項が明らかにでき、かつ、コピーを提出できる環境が整っていること(平成7.3.10基収94を要約)



労働者名簿の法定必要記載事項って、何を記載するの?
介護の事業所の場合、ご利用者さんを新規に受け入れる際に、ご利用者さんの基本的な個人データ(氏名、性別、生年月日・・・など)を把握し、その後、ケアプランの作成となりますよね。


基本的な個人データを把握する作業をしないことには、ご利用者さんのケアそのものが始まらないですよね。


労働者名簿も同じですよ!


介護事業所の従業員の皆さんの基本的な個人データを把握しなければ、従業員のケアプラン( = 労務管理)が始まりません。


具体的な法定必要記載事項は、以下の通りです。
1.労働者の氏名 
⇒  婚姻後、社内で旧姓を使うのは問題ありませんが、労働者名簿上は戸籍上の氏名です。また離婚後、旧姓に戻った場合もお忘れなく。姓名判断で良いとされた氏名もダメですよ。


2.生年月日
⇒ サバを読んではいけませんよ。将来、年金を受給する際、損するかもしれません。


3.履歴
⇒ 何の履歴だ? 実は労働基準法上、具体的に何を記載しなさいと明記されてません。ということは、社会通念上、常識的に考えて「履歴」と解されるものを記載しておけば、問題ないでしょう。例えば、入社前の履歴は、最終学歴や職歴。入社後の履歴は社内の異動歴など。


4.性別
⇒ 男性か女性かわからないと、更衣室のロッカーが準備できません。


5.住所
⇒ どこに住んでいるかわからないと、交通費が支給できません。

6.業務内容
⇒ 従業員の数が30人未満の場合は、一人で何役もこなす(複数の業務を行う)ことが多いため、記載しなくても問題ありません。


7.採用の年月日
⇒ 採用日が不明だと、年次有給休暇の発生日がわかりません。


8.退職(解雇)の年月日とその理由
⇒ 従業員が会社を去った後、トラブルが発生しないように退社日とその理由を記録に残します。


9.死亡の年月日とその原因
⇒ 病気、交通事故、労災事故などで亡くなることもありますね。亡くなった日とその原因を記録します。



介護事業所での注意点
介護事業所における労働者名簿作成の注意点をいくつか挙げましょう。

1.全ての会社に対して、労働者の数に関係なく労働者名簿の作成義務あり!
⇒介護の事業所には、大型の施設から小規模の訪問介護まで、様々な形態で経営が行われていますが、「うちは小さいから、いいじゃないのぉ・・・」は「ダメよ~ダメダメ!」です。
従業員のケアプラン( = 労務管理)に会社の規模は関係ありませんよ


2.労働者名簿は各事業所ごとに作成・保存すること!

⇒介護事業所の場合、労務管理を初めとする事務的作業は、本社(本部)で一括管理をしていることが多いです。事務的作業は一括でも構いませんが、その写しとしての労働者名簿が各事業所になければダメです


3.労働者名簿の記載内容に変更があったときは、遅滞なく訂正すること!
⇒介護事業所の場合、離職率が高いので、遅滞なく訂正されないことが多いです。労働者名簿の「退職の年月日とその理由」の欄が退職しているにもかかわらず、未記入のままになっていることが多いですね。

労働者名簿をもとに請求事務を行っては、架空請求になる可能性もありますよ。記載内容に変更があったときは、ありのまま、偽りのないよう遅滞なく訂正を心がけましょう。


4.労働者名簿がなかったり、記載内容に不備があれば、是正勧告の対象!

⇒労働者名簿の作成義務違反は、30万円以下の罰金と定められています(労働基準法第107条)。「30万円の罰金を支払えばいいんでしょ・・・」のスタンスは危険です。


介護事業所は許認可制の事業であることをお忘れなく!
最悪の場合は、コムスンのように事業廃止になりますよ。



良いお年をお迎えください
当ブログは、介護事業所の経営者の皆様にお役に立ちたい、さらには日本が抱える大介護時代に貢献したいという思いで、今年12月より始めました。

来年以降も良い記事の配信に努めますので、よろしくお願いします!