彼とのお付き合いも結構長くなった。最初に出会ったのは2004年2月、ムジカノーヴァでの取材だった。その時リフシッツ氏はまだ20代後半で、私とは20歳も年が離れてはいたがなぜか馬が合い(笑)、それから来日の度に一緒に会食し、お酒を共に楽しんでいる。

 

 昨年4月~5月、ベートーヴェンのソナタ全曲演奏での来日ツアーが中止になって本当に残念に思っていたが、今回は無事来日。トッパンホールでの2回のコンサートが催された。

 

 初日はJ.S.バッハ、2日目はショスタコーヴィチによるプログラムで、初日に出向いた。プログラムは、トッカータ全7曲と「音楽の捧げもの」という恐るべき構成。そういえば昔、ベートーヴェンの「ハンマークラヴィ―ア」と「ディアベリ変奏曲」を1回のリサイタルでやりたいと言っていて、確かどこかヨーロッパでやったんじゃないかな…。。。

 

 それにしてもJ.S.バッハでのリサイタル、19時開演で前半のトッカータが終わったのが20時半。全編終了したのがもう22時近かった。けれどもあの複雑怪奇なフーガがふんだんに現れる作品をすべて暗譜で弾き切るのだから、まぁとんでもないピアニストである。

 

 彼がウクライナのハリコフ出身ということもあり、来日前からメールでやり取りしていたのだが、一応敬意を表し、「Mr.」を付けていたら、「私たちの関係でそんなものを付けるな」と書いてきて、反対に私に「先生」などとヌカすもんだから、それ以降は「巨匠」と付けてやった(笑)。

 

 実はこの日、ある方々とリフシッツと数名で会食をする予定でいたが、ホールから移動して会食場所についたとしても、乾杯ができるかどうか…。。。何しろ甲府までの最終特急は新宿発23時。泣く泣く諦めてホールを後にした次第。

 

 会場も閉店時間を延長してくれていることもあり、会食チームは時間的に気が気ではなかったが、うっかり私が「お嬢さん、可愛くなったでしょう?」と聞いたら、相好を崩し(この時点でしまったと思ったのだが…笑)、わざわざ

スマホを持って来て、娘さんの写真を次から次へと見せて延々説明を…。。。会食チームのひきつった笑いが痛かった(笑)。

 

 巨匠ピアニストもこの時はただの父親だった。