設定を1829年10月16日にしたのには、訳がある。カノラホールでの実際の公演日が10月16日。そしてシューベルトが初めて公開演奏に臨んだのが17歳の時、1814年10月16日。リヒテンタール教会での「ミサ曲ヘ長調D105」であり、そのソプラノをテレーゼ・グローブが歌ったからである。

 

 さて前半の続きは、小林千津穂さんの歌曲「セレナーデ」、「ます」、コールアングレの中村あんりさんによる「音楽に寄せて」、そして今川さんによる「ピアノ・ソナタ イ長調 D664」第1楽章でしめさせていただいた。

 

 そして後半。フルートの布能美樹さんによる「萎める花による変奏曲」、小林千津穂さんによる「菩提樹」、中村あんりさんによる「アルペジオーネ・ソナタ」第1楽章と続き、本当に出ずっぱりで申し訳なかったけれど、今川さんによる「ソナタ第21番 D960」第2楽章、そして最後の曲は、コールアングレでの歌曲集「冬の旅」の終曲「辻音楽師」。

 

 たった31年の生涯にも関わらず、千曲近くを創作したシューベルトの人生を駆け足で辿ってみたが、やはり根底に横たわるのはシューベルトの愛と哀しみだった。

 

(さらに続く・笑)

 

 

布能美樹さん

 

中村あんりさん