1988年生まれだから、まだやっと20歳になったばかりである。けれどもそのコンクール歴はものすごい。5歳のときに最初のコンクールに入賞以来、名だたる国際コンクールで、軒並み第1位を獲得している。


 当然バリバリのメカニックで弾きまくるイメージがあった。ところがあにはからんや、彼女の演奏は、ドイツ的なアカデミズムを骨格とした堅実な構築観に根差しながら、あくまで内的な心の葛藤を前面に押し出したようなアプローチを示し、心地良い緊張感を常に維持しながら全曲を芸術の高みに昇華していくのである。予想していた爆撃するような重低音があるわけではない。弦も切れよとばかりのフォルテッシモがあるわけでもない。湛えられていたのは、計り知れないリリシズムと馥郁たるファンタジーだったのである。


 それにご覧の通り、可愛い(笑)。お父さんはドイツ人でお母さんは日本人。また笑うと表情がガラリと変わって飛びっきり可愛いのだ。今、彼女はショパンの「ワルツ集」をリリースしたばかり。以前のリスト「超絶技巧練習曲集」もいいし、アリス=紗良・オット さん、おススメである。



真嶋雄大のイマどきクラシック-アリス=紗良・オットさん