父は著名な作家のアンリ・ケフェレック。弟もまた作家である。パリ国立高等音楽院に学び、パウル・バドゥラ=スコダ、イェルク・デームス、アルフレート・ブレンデルといった巨匠たちに師事、難関であるミュンヘン国際音楽コンクールで優勝して世界の注目を浴びた。


 このところ「ラ・フォル・ジュルネ」の常連でもあるが、とにかくチャーミングな人だ。よく笑い、よく語ってくれたインタヴューの際も、敬意を込めて「姉さん」と呼んでしまったほど(笑)。そんなジョークにも笑顔で応えてくれたが、今でいう「アラカン」だ。


 でもそのピアノは常に清冽で、気品に満ち、馥郁たる抒情を醸し出す。滅多に共演者を褒めないマエストロ・井上道義氏が、とにかくベタボメだったのが印象的だった。そのアンヌ姉さんのバッハ、モーツァルトは中でもオススメ。特にモーツァルトのピアノ協奏曲は、全曲を録音したいと熱く語っていたから、実現性も高い。これは楽しみだ。



真嶋雄大のイマどきクラシック-アンヌ姉さん