「あるレジ打ちの女性の話」が気になって購入した。

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あるブログでこの話を知ったんだけど、You tube でも動画があった。
「あるレジ打ちの女性の話」ムービー

パソコンのモニターに映し出される活字、動画ではBGMがまたいい。
本を手に取って活字を追うスピードのほうが俺にはあってるかも。


その女性は、何をしても続かない人でした。

田舎から東京の大学に来て、部活やサークルに入るのは良いのですが、
すぐにイヤになって次々と所属を変えていくような人だったのです。

そんな彼女にも、就職の時期がきました。
最初は、彼女はメーカー系の企業に就職します。
ところが仕事が続きません。
勤め始めて3カ月もしないうちに上司と衝突し、あっという間にやめてしまいました。
次に選んだ就職先は物流の会社です。
しかし入ってみて、自分が予想していた仕事とは違うという理由で、
やはり半年ほどでやめてしまいました。

次に入った会社は医療事務の仕事でした。
しかしそれも、「やはりこの仕事じゃない」と言ってやめてしまいました、。

そうしたことを繰り返していくうち、いつしか彼女の履歴書には、
入社と退社の経歴がずらっと並ぶようになっていました。

すると、そういう内容の履歴書では、正社員に雇ってくれる会社がなくなってきます。
ついに、彼女はどこへ行っても正社員として採用してもらえなくなりました。
だからと言って、生活のためには働かないわけにはいきません。
田舎の両親は早く帰ってこいと言ってくれます。
しかし、負け犬のようで帰りたくはありません。
結局、彼女は派遣会社に登録しました。
ところが、派遣も勤まりません。
すぐに派遣先の社員とトラブルを起こし、
イヤなことがあればその仕事をやめてしまうのです。
彼女の履歴書には、やめた派遣先のリストが長々と追加されていきました。


ある日のことです。
例によって「自分には合わない」などと言って派遣先をやめてしまった彼女に、
新しい仕事先の紹介が届きました。
スーパーでレジを打つ仕事でした。
当時のレジスターは、今野ように読み取りセンサーに商品をかざせば、
値段が入力できるレジスターではありません。
値段をいちいちキーボードに売り込まなくレはならず、
多少はタイピングの訓練を必要とする仕事でした。
ところが、勤めて1週間もするうち、彼女はレジ打ちにあきてきました。
ある程度仕事に慣れてきて、「私はこんな単純作業のためにいるのではない」と
考えはじめたのです。
とはいえ、今まで散々転職をくり返し、我慢の続かない自分が彼女自身も嫌いになっていました。
もっとがんばらなければ、もっと耐えなければダメということは本人にも分かっていたのです。
しかし、どう頑張ってもなかなか続かないのです。
この時、彼女はとりあえず、辞表だけ作ってみたものの、決心をつけかねていました。
するとそこへ、お母さんから電話がかかってきました。
「帰っておいでよ」
受話器の向こうからお母さんのやさしい声が聞こえてきました。
これで迷いが吹っ切れました。

彼女はアパートを引き払ったらその足で辞表を出し、
田舎に戻るつもりで部屋を片付け始めたのです。
長い東京生活で、荷物の量はかなりのものです。
あれこれダンボールに詰めていると、机の引き出しの奥から1冊のノートがでてきました。
小さい頃に書きつづった大切な日記でした。
なくなって探していたものでした。
ぱらぱらとめくっているうち、彼女は「私はピアニストになりたい」と
書かれているページを発見したのです。
そう、彼女の小学校時代の夢です。
「そうだ、あの頃、私はピアニストになりたくて、練習を頑張っていたんだ・・・」
彼女は思いだしました。
なぜかピアノの稽古だけは長く続いていたのです。
しかし、いつの間にかピアニストになる夢は諦めていました。
彼女は心から夢を追いかけていた自分を思い出し、
日記を見つめたまま、本当に情けなくなりました。

「あんなに希望に燃えていた自分が今はどうだろうか。
履歴書にはやめてきた会社がいくつも並ぶだけ。
自分が悪いのは分かっているけど、なんて情けないんだろう。
そして、私は、また今の仕事から逃げようとしている・・・。
そして、彼女は日記を閉じ、泣きながらお母さんにこう電話をしたのです。
「お母さん、私、もう少しここで頑張る」
彼女は用意していた辞表を破り、翌日もあの単調なレジ打ちの仕事をするために、
スーパーへ出勤していきました。

ところが、「2.3日でもいいから」と頑張っていた彼女にふとある考えが浮かびます。
「私は昔、ピアノの練習中に何度も何度も引き間違えたけど、繰り返し弾いているうちに、
どのキーがどこにあるかを指が覚えていた。
そうなったら鍵盤を見ずに、楽譜を見るだけで弾けるようになった」
彼女は昔を思い出し、心に決めたのです。
「そうだ、私は私流にレジ打ちを極めてみよう」と。
レジは商品ごとに打つボタンがたくさんあります。
彼女は、まずそれらの配置をすべて頭にたたきこむことにしました。
覚えこんだら、あとは打つ練習です。
彼女はピアノを弾くような気持ちでレジを打ち始めました。
そして、数日のうちに、ものすごいスピードでレジが打てるようになったのです。
すると不思議なことに、これまでレジのボタンだけ見ていた彼女が、
今まで見もしなかったところへ目がいくようになったのです。
最初に目に映ったのはお客さんの様子でした。
「ああ、あのお客さん、昨日も来ていたな」
「ちょうどこの時間になったら子ども連れで来るんだ」とか、
いろいろなことが見えるようになったのです。
それは彼女の密かな楽しみにもなりました。

相変わらず指はピアニストのように、ボタンの上を飛び交います。
そうしていろいろなお客さんを見ているうちに、
今度はお客さんの行動パターンやクセに気づいていくのです。
「この人は安売りのものを中心に買う」とか、「この人はいつも店が閉まる間際に来る」とか、
「この人はいつも高いものしか買わない」とかが分かるのです。
そんなある日、いつも期限切れ間近の安い物ばかり買うおばあちゃんが、
5000円もする尾頭付きの立派なタイをカゴに入れてレジへ持ってきたのです。
彼女はびっくりして、思わずおばあちゃんに話しかけました。
「今日は何かいいことあったんですか?」
おばあちゃんは彼女ににっこりと顔を向けて言いました。
「孫がね、水泳の賞を取ったんだよ。今日はそのお祝いなんだよ。
いいだろう、このタイ」と話すのです。
「いいですね。おめでとうございます。」
嬉しくなった彼女の口から、自然に祝福の言葉が飛び出しました。
お客さんとコミュニケーションをとることが楽しくなったのはこれがきっかけでした。

いつしか彼女はレジに来るお客さんの顔をすっかり覚えてしまい、
名前まで一致するようになりました。
「○○さん、今日はこのチョコレートですか。
でも今日はあちらにもっと安いチョコレートが出てますよ」
「今日はマグロよりカツオのほうがいいわよ」などと言ってあげるようになったのです。

レジに並んでいたお客さんも答えます。
「いいこと言ってくれたわ。今から換えてくるわ」
そう言ってコミュニケーションを取り始めたのです。
彼女は、だんだんこの仕事が楽しくなってきました。
そんなある日のことでした。
「今日はすごく忙しい」と思いながら、彼女はいつものようにお客さんとの会話を楽しみつつ
レジを打っていました。
すると、店内放送が響きました。
「本日は混み合いまして大変申し訳ありません。重ねて申し上げますが、
どうぞ空いているレジのほうへお回りください」
そして3回目、同じ放送が聞こえてきた時に、初めて彼女はおかしいと気付き、周りを見渡して驚き
ました。
どうしたことか5つのレジが全部空いているのに、お客さんは自分のレジにしか並んでいなかったの
です。
店長があわてて駆け寄ってきます。
そして、お客さんに「どうぞ空いているあちらのレジへお回りください」と言ったその時です。
お客さんは店長の手を振りほどいてこう言いました。
「放っておいてちょうだい。私はここへ買い物に来ているんじゃない。
あの人としゃべりにきてるんだ。
だからこのレジじゃないとイヤなんだ」

その瞬間、彼女はワっと泣き崩れました。
その姿を見て、お客さんが店長に言いました。
「そうそう。私たちはこの人と話をするのが楽しみで来てるんだ。
今日の特売は他のスーパーでもやっているよ。
だけど私は、このお姉さんと話をするためにここへ来ているんだ。
だからこのレジに並ばせておくれよ」
彼女はポロポロと泣き崩れたまま、レジを打つことができませんでした。
仕事というのはこれほど素晴らしいものなのだと、初めて気づいたのです。
そうです。
すでに彼女は、昔の自分ではなくなっていたのです。

それから、彼女はレジの主任になって、新人教育に携わったそうです。
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実は、この話よりももっと俺の心を揺さぶった話があった。
それは、「ある生徒の高校受験」という話。
これは、買って読んでください。