※前回の記事は載せてみたのはいいものの、後から考えてちょっと私では判断の付かない事も含んでいる内容かと思い直して消す事にしました。考え過ぎだけで済むに越したことは無いので、見ている方々がいる所ですがすみませんでした。

 

気を取り直して、メインであるコインの話でも。今年も行ってきました東京国際コインコンヴェンション(TICC)。

しかし、土日が仕事で結局最終日の月曜になってしまったのと、直近で落札したコインがありまして用意していた予算がパーに!ちょっとだけ残りの予算をかき集めてひやかし程度に見て回る事にしました。

 

最初に見たかった国内貨として、円銀も集まったので最近ちょっと惹かれている旧五圓金貨を中心に見てみたのですが、うーん、高い。それ程高グレードは望んでいなくて、AU58くらいなら手頃な値段かと思っていたのですが見かけるスラブはどれもMSグレードなんですよね。裸か財務省ケース入りじゃないと並品は無いのですかね?

 

メイン収集の古代としては、スラブ品でW社さんの所で見たササン朝のバハラーム2世のディナール金貨が気になって、最近入手したシャープールの金貨と並べてみたいなと思ったのですが、考えてみたら私はササン朝コレクターでも無いですし、ここはぐっと我慢でATMへは駆け込みませんでした。W社さんですので残っていればセールの時のチャンスもあるでしょうし(と言っていると売れちゃうんですよね。)

残っていると言えば、バクトリアのソフィテスは去年も見かけましたけどなかなか買い手が付かないのですかね。良い物だとは思うのですが多分100万超える品でしょうし私も手が出ません。

 

で、折角来たのだし参加賞的に何か買うかと裸コインで一枚入手。古代インド・グリーク朝のドラクマ銀貨を選んでみました。

 

インド・グリーク朝 紀元前130-110年

ストラト

ドラクマ銀貨

 

ラベルではストラトとなっていますがメナンドロスの息子のストラトン1世でいいのかな?ちょっと書いてある年代が疑問なのですが、彼の若い頃は摂政が代わりに統治していたので年代は諸説あるようで良く分かりませんでした。

 

メナンドロスの後のグリーク朝は分裂の時代を迎える事になり、偉大な父の後を継いだ息子のこういう悲劇と苦労話は歴史ではよく見ますね。

 

表は良いのですが裏面のアテナの立像は打ちが悪くて何がなんだか。

 

ギリシア人によるグリーク朝でもっとも有名なメナンドロスと同じヘルメットタイプの肖像で、グレードも極品ですので手で触れるコインとしてはこれ以上ない状態かなと決定。

これを見せてもらったトレーはほとんど売れてしまって空っぽの状態だったのですが、売り切れ札の下にチラッと見たらササン朝のコインとかもあったみたいでした。金貨は我慢しましたけど銀貨だったら見たかったです。去年はダルマさんの所にササン朝いっぱいあったのですが…。

 

やはり最終日ですのでどのブースのトレーも売れてしまった歯抜けの状態でここに売れてしまった絶品があったんだろうなと、後の祭りの気分で会場をぶらぶらしてから帰宅。今度行く時はまた初日に行きたいですね(でも話を聞くとかなり混んでいたそうでそれはそれで大変そうでしたけど。)

 

という事で参加した皆様もお疲れ様でした。

ではこんな所で。

 

今回はようやく入手した名品銀貨。

 

シチリア島 シラクサ 紀元前317-289年

テトラドラクマ銀貨

AU Strike5/5 Surface4/5 Fine Style

 

表はイルカに囲まれたニンフのアレトゥーサ。

伝説として河の神アルペイオスに追われたアレトゥーサは泉へと姿を変えたとされ、その泉は今回の銀貨が作られたシラクサのオルテュギアー島にあり現在も観光地となっているそうです。

 

図柄の作りは名品コインを数多く作ったシラクサだけあり高額古代コインとして有名なデカドラクマ銀貨にも引けを取らない出来栄え。

アレトゥーサはシラクサの代表的なデザインとして長く使われており、古いアルカイック図柄の物も素晴らしいのですが、古典期~ヘレニズム時代に入ったこの頃のシラクサの物が写実的で完成度が高く私は一番好きですね。

 

裏面は4頭立ての戦車であるクアドリガ。

躍動感のある一場面を切り取ったような作りは名品に恥じない出来。

 

上部にあるのはシチリア島のシンボルとしても使われている三本の足を合わせたトリスケル。

ちなみに戦車の馬2頭はビガ、3頭でトリガ、4頭でクアドリガですね。古代ギリシアへ行く機会があったら使ってみてください。

 

という事で古代コイン好きとしてシラクサのコインは押さえておきたくて欲しかったのですが、これがもー高い!

一昔前はこのグレードなら10,000ドル以下で入手出来る物もあったのですが、最近はXFでも10,000ドル近くなるので、もうえり好みできない!と決して最高と言う物ではないのですが何とか入手してみました。

 

シラクサと共にシチリア島のコインはとにかく名品が多いのです。

 

紀元前300年頃の西地中海。

 

さて、コインの時代背景として当時のシラクサを含めたシチリア島東側は以前に紹介したマグナ・グラエキアのギリシア人植民者の勢力圏であり、都市シラクサは僭主アガトクレスに統治されていました。

 

僭主というのも独特な呼び名ですが、貴族ではなく平民からの支持により独裁的な権力を握った統治者という意味合いな感じらしいです。アガトクレスも陶工からシラクサの支配者層を虐殺する形で僭主となり、シチリアの各都市へも苛烈な手段を取ったというまさに独裁者ですね。

彼はまた、シチリア島西側のカルタゴとも生涯に渡って衝突を繰り返しており、シラクサをカルタゴ軍に包囲されたり、逆に最後には撤退となったもののアフリカのカルタゴ本国へと遠征軍を送ったり、押したり退いたりの大立ち回りを演じた征服欲の塊のような方だったみたいです。統治の後半ではシチリア王とも名乗っていたりします。

 

アガトクレス死後のシチリア島は御存じカルタゴとローマによるポエニ戦争が始まり、カルタゴと死闘を演じたシラクサは第二次ポエニ戦争時にカルタゴ側に付いた事で、ローマの攻勢で攻め落とされて支配権を失ってしまう事に。

それでもローマ時代や中世を通してシチリア島の重要都市として存続しており、豊かで発展した都市としての影響力は続いていたようです。

 

最後はWikipediaからアレトゥーサの泉。

 

ではこんな所で。

 

いや…どうって言われても困りますよね。私もヘクテ初めてだし…。

裸コインが続きますが、これも去年の入手品です。

 

レスボス島 レティリーニ 紀元前377-326年

ヘクテ金貨

材質は金銀合金のエレクトラムですね。

 

表面は雄羊の角を付けたアポロン神。

芸術や太陽神として有名なアポロンですが、こちらはアポロン・カルネイオスという収穫や牧畜を司る神格をアポロンと関連付けた神だそうです。地方や土着の信仰が統合されていく古い時代のアポロン神の姿の一つといった感じですかね。

 

ヘクテは1/6スタテルという2.5gほどの豆金といった感じの小さな金貨なのですがこれが高い!物にもよりますが鑑定スラブ入りで良いグレードの物になるともう10万以下では手に入らないのです。

あまり小さくて高い物は手が出ないと思っていた所に裸でヘクテが出ていたので試しにどんなものだろうかと入手してみたのでした。

 

裏面はインキューズの中の鷲の刻印。

図柄が切れてしまっていますが顔の方が残っていますのでまあいいでしょう。

 

古代において金は大変貴重であったので小型にならざるを得なかったとはいえ、今回のアポロンのような神々からライオンや猪、蝉といった図柄のバラエティ豊かでギリシアコインの魅力を楽しめる事からもヘクテは人気が高いのでしょうね。

 

コインの材質であるエレクトラム(琥珀金)というと初期のコインとして有名なリュディアの金貨も川床からの採られたエレクトラムから打たれたなんて話もありますが、これが自然合金なのかそれとも精錬された物なのかというのも長年議論されてきたそうです。現在は大半のエレクトラム貨は精錬された合金から打たれたのではとなっているみたいです。

 

時代が下がってカルタゴやローマ時代のボスポロス辺りの金貨もエレクトラムで打たれた物があるみたいですが、この辺りまで来ると完全に精錬された合金ですね。

さらにビザンツになると後期は金の純度を減らしたほぼ銀貨のような金貨が作られていますがこれをエレクトラム貨と言っていいのかは良く分かりません。

 

ちなみにレスボス島はこのあたり。

レティリーニはレスボス島の主要都市として沢山のヘクテ金貨を作ったそうです。

 

そういえばこちらケースが付いていました。某有名コイン店のやつ。

機会があれば追加でヘクテを入手したいのですが、おそらく次にエレクトラム貨を入手するとしたらリュディアのスタテル金貨になると思います。

 

ではこんな所で。