ちょっとまた体調を崩して仕事以外は寝たり起きたりを繰り返しているのですが、そろそろコインの話もしましょうか。

 

先月は昆虫の話だけで終わってしまいましたが、ウチのブログは古代コインがメインテーマなのですよ。昆虫目当ての方々は申し訳ないのですが、しばらく困惑していてくださいませ。

 

セレウコス朝 セレウコス2世 紀元前246-225年

テトラドラクマ銀貨

Ch AU Strike5/5 Surface2/5 brushed Fine Style

 

この所海外オークションでやたらと出品されているのを見掛けるセレウコス2世の銀貨。

詳細はなんともですが、最近見つかったコイン貯蔵庫から出た物とも聞いたりして、かなりの数が放出されていますね。

私も初めはどうしようかなと見ていたのですが、これだけ出ているのなら一枚くらい入札してみるかと入手してみたのがこちら。

 

うーん、素晴らしいモミアゲ。

いやまあ、肖像の作りはなかなか良いのですが、セレウコス2世って何した人でしたっけ?

 

調べてみると、カリニコス(麗しき勝利者)なんて綽名が付けられていますが、プトレマイオス朝とのシリア戦争で敗北したり恒例の王家のお家騒動にとあまり良い事無い方だったようです。コインの肖像を見てもかなり若い方なので政治に翻弄されてしまったのですかね。

 

裏面はセレウコス王家に縁のあるアポロン神。

アンティオコスでは座像でしたが、こちらはアポロンの象徴でもある三脚鼎に肘を掛けた立像。

 

出品されるセレウコス2世のコインは、NGCの鑑定評価だとほぼ例外なくFine Style評価が付けられているのですが(あとやたらと洗浄評価が多い。)おそらくこのアポロンのデザインに付けられた評価なのかなと考えています。

 

Fine Styleはコイン表裏、どちらかのデザインが素晴らしい場合に付けられるそうなので、出品されたかなりの枚数が肖像面が浅打ちで薄れてしまっていて、お世辞にも良い状態とは言えないコインにもFine Style評価があるのは比較的良好な場合が多い裏面のデザインの素晴らしさからかなと思ったものでして(それでもコインによってはちょっとFine Style安売りすぎない?と思ったりもしますが。)

 

しかし、確かにFine Style評価も頷ける素晴らしい出来栄えではあります。

他のコインの神々のデザインにも言えるのですが、おそらく当時にこのコインのデザイン元となった大理石や青銅の彫像が存在していたのではないかなと思います。

 

リュシマコスのアモンの角のアレクサンドロスのコインも、彫刻家のリュシッポスが製作した作品を元にした説があるように、今回のアポロン神も三脚鼎にもたれ掛かった立像デザインは、いかにも現実の彫像でも倒れないように安定を取る作り方で、かつてはこういう彫像が神殿や王家の宮殿なんかに置いてありそうな感じなのですよね。

 

ベルヴェデーレのアポロン。

ヘレニズムやギリシア時代のオリジナル彫刻の現存は少ないらしく、こちらは2世紀頃のローマ時代の模刻。

 

セレウコス朝のアジアの都市は埋没して位置が不明になったり、破壊が進んで当時の彫像の発見など望めないかもしれませんが、こうしてコインを見て当時を思い浮かべてみるのも古代コインの楽しみ方の一つではないでしょうか。

 

ではこんな所で。

 

さて、今年も行けました大手町のインセクトフェア(今月は昆虫の話ばっかりで申し訳ないです。)

朝はあいにくの雨の中、8:30頃に着いたらもう外の列になってました。

以前は1時間くらい前でも建物の中に入れた気がするのですが…まあこれくらいの列は次男でも耐えられますから。

 

で、結果ですね。

えーと、探している方がいたら申し訳ないのですが、scarabaeus cancerPachylosoma cancer)買えちゃいました。

 

以前紹介したパキソマのようにこちらも飛べない糞虫の仲間で、スカラベ属の最大種(で良かったんでしたっけ?)長らく希少種の座にあったようですが、最近再発見されたそうでラベルは2019年採集でした。

 

私も糞虫好きですので何となく頭の隅にあったものの、まさか実物を入手できるとは!というかお値段これでいいの!?(あまり詳しくは書きませんけど、うみねこさんの所で見た時の半額以下。まさかまた修理品とかじゃないよね?)

最近の採集事情は疎いので、これから数が採れたりして値下がりするのかも良く分からないのですが、こちらを入手するためだけにでも来た甲斐がありました。ちょっと油が出ているので油抜きや再展脚後に標本箱に入ってもらいましょう。

 

あとは、記事も書きましたのでミヤマもちょっと探してみました。

 

欲しかったヨーロッパミヤマのイギリス産やウェスターマンミヤマ、去年にトルキクスを買わせて頂いた所でチェンミヤマを入手(売れてしまった大きいラティコルニスのペアも欲しかったです。)

 

ヨーロッパ以外のアジアのミヤマも頑張りたい所なのですが、どうも頭が昔のままで知識の更新をしていないので、ここ10年くらいに見掛けるようになった種はピンと来ないのですよね(フルキフェル?知らない子ですね…。)少しずつでも入手を進めようと思います。値引きもして頂きありがとうございました。

 

それから、会場をぐるぐるしながらようやくProagoderus rangiferを入手したり、パイネさんの所で幾つか摘まんだりしてから帰宅。帰ってから思い出しましたけどまたライオンコガネ買い忘れてました…。

 

入手困難になった種は値上がりが顕著でしたが、お得な物も見掛けるのはやはりフェアの醍醐味。しかし、相変わらず会場は凄い人込みで疲れ果ててしまうのもフェアならではですね。

何か所かでこのブログの話もしてみたのですが、恥を撒き散らしただけのような気もして来たり…いやいや。

 

ともあれ、なんだか今年分の運も予算も使い果たしたような気がしますので、来年までしばらく標本は我慢しようかと。

 

ではこんな所で。

 

さあ、魅惑の大型亜種のお話。

 

まずは、個人的には宇宙一カッコ良いクワガタだと思っている、最大は100mmに届く、トルコからシリアに掛けて生息するヨーロッパミヤマの亜種アクベシアヌス(Lucanus cervus akbesianus

スマートな胴体に釣り合うように長く伸びた大顎と、ヨーロッパミヤマ亜種の中でも一際目を惹く外見でとにかくカッコ良い。もうこれだけでご飯三杯は食べれますよ!という素晴らしさ。

 

この標本は、インセクトフェアに行き始めた初期に購入した個体なので思い入れがありまして、インセクエストさんのブースにズラリと並んだアクベシアヌスの標本の中から、これだっ!と選んで入手しました。

この後にもっと大型の個体も入手したのですが、プロポーションは私の理想のアクベシアヌスでこれ以上には出会えなかったというか、しばらくこの標本以上の物を探そうと必死だった覚えがあります(笑)

 

当時は生き虫や標本がまとまった数で入ったので色々贅沢に選べたのですが、現在は生息地が中東という場所柄、なかなか入ってこないようです。標本収集趣味も平和にならないと楽しめないというのは世知辛いです。

 

プロポーションの話をしたので幾つか画像を貼ってみます。

左95mm、右が上記の個体92mm。どちらも同じシリア/トルコ国境地帯ラベル。左の個体は何か色んな所がトゲトゲしてる。

大まかに体形で細く角ばった直線的な大顎と、やや湾曲が強い大顎の個体がいるのですが、地域的な特徴なのか単に個体間の誤差なのか。

 

シリア北部ラベルの同産地個体…うーん。

変異の幅が広いだけなのか、顎先端があまり開かない個体には型名が付けれているようですが、素人なのであまり考察してもなんともですね。

 

気を取り直して、次は大型亜種の双璧ユダイクス(Lucanus cervus judaicus

こちらも最大は100mmに届くそうです。

 

これも最初の頃に入手した個体で91mm。何だかんだ、最初に入手した標本が一番愛着がありますね。

しかし、実はユダイクスは力を入れなかったので、あまり良い形のこだわりがありません。しいて言うなら湾曲の強い大顎が好みですかね。

 

各亜種生息地。

ちなみに、アクベシアヌスはトルコのアクベス地方。ユダイクスはユダヤ地方からの命名との事。

 

もう一つトルコからシリアへと生息する亜種としてラティコルニス(Lucanus cervus laticornis)を紹介しましょう。

幅広な触角がかなり特徴的な亜種で独立種として扱うこともあるようです。

どうも私は知識の更新をサボり気味なので、最新の研究はよく分からないのです。

 

前回のケルブス記事で紹介を忘れていました、南フランスに生息する亜種ファビアーニ(Lucanus cervus fabiani)これも最近は独立種だと聞きます。

 

ということで、ちょっと以下はどの亜種に該当するか良く分からない標本。

 

博物学の本場ということもあり、ヨーロッパミヤマは古くから研究と種の記載がされておりますが、もう亜種の分類に関しては誤同定やシノニム(同種異名の重複記載。)と、生息の境界にはどちらに分類すればいいか不明な個体も多数存在しているようです。

特に中東付近の亜種や近縁種は場所柄、再調査も難しいようで、タイプ標本もどこにあるのか不明だったり、古い記載個体は図のみという混沌とした状況のようです。

 

私も趣味としての収集ですので、研究者としての見解なんてとてもできませんし、不明なまま放置している標本があります。

 

ルーマニアラベル。

ルーマニアにトルキクスいたっけ?な外見ですが、手書きラベルの文字が判別出来ずに採集地が良く分かりません。

近いギリシャの個体のようにルーマニアにも触角6節がいるそうなので多分そこの個体だと思います。この辺りのギリシャからブルガリアの個体はどっち付かずな感じが多いみたいです。

 

レバノンラベル。

見掛けは小型のアクベシアヌスといった感じですが、どうも同地の大型個体は触角6節のユダイクス風な外見になるみたいです。もしやこれが亜種ポウジャデイでは?とまことしやかに聞きますが、素人の私にはさっぱり。

 

左からアクベシアヌス、レバノン個体、ラティコルニス。

小型個体は似ているようで並べるとどれもちょっと違います

 

ギリシャラベル。

なんか一見するとユダイクス系の中型に見えるのですが…。ラベルにはギリシャまでしかなくて、あなた一体どこの子?な外見です。どう見ても間違えだと思いますし、パイネさんから入手ですので聞けばいいのですが、昔なので覚えてないだろうなあ…。

 

という事で大型種が生息する中東付近のヨーロッパミヤマ亜種を紹介してみました。

 

私は古代コインを収集していますので、歴史的にも古い文明が存在する地域に興味があるのですが、昆虫の面から見てみると文明の古い地は同時に自然環境の破壊も進行している地でもあります。

かつては建材や船材として大量に伐採されたレバノンスギのように、ミヤマクワガタの発生木のカシ類の樹木の森の消滅も古代から進んでいた事が想像され、今は飛び地のように存在しているアクベシアヌス等の生息地もかつてはもっと広く、見た事も無い亜種も存在してたり…と考えたりもします。

 

しかし、古代の人々の事はあまり悪くは言えないので、せめて現在の環境が守られ末永く昆虫達が生息し続けてくれることを願う事にします。

 

ではこんな所で。