今回はようやく入手した名品銀貨。
シチリア島 シラクサ 紀元前317-289年
テトラドラクマ銀貨
AU Strike5/5 Surface4/5 Fine Style
表はイルカに囲まれたニンフのアレトゥーサ。
伝説として河の神アルペイオスに追われたアレトゥーサは泉へと姿を変えたとされ、その泉は今回の銀貨が作られたシラクサのオルテュギアー島にあり現在も観光地となっているそうです。
図柄の作りは名品コインを数多く作ったシラクサだけあり高額古代コインとして有名なデカドラクマ銀貨にも引けを取らない出来栄え。
アレトゥーサはシラクサの代表的なデザインとして長く使われており、古いアルカイック図柄の物も素晴らしいのですが、古典期~ヘレニズム時代に入ったこの頃のシラクサの物が写実的で完成度が高く私は一番好きですね。
裏面は4頭立ての戦車であるクアドリガ。
躍動感のある一場面を切り取ったような作りは名品に恥じない出来。
上部にあるのはシチリア島のシンボルとしても使われている三本の足を合わせたトリスケル。
ちなみに戦車の馬2頭はビガ、3頭でトリガ、4頭でクアドリガですね。古代ギリシアへ行く機会があったら使ってみてください。
という事で古代コイン好きとしてシラクサのコインは押さえておきたくて欲しかったのですが、これがもー高い!
一昔前はこのグレードなら10,000ドル以下で入手出来る物もあったのですが、最近はXFでも10,000ドル近くなるので、もうえり好みできない!と決して最高と言う物ではないのですが何とか入手してみました。
シラクサと共にシチリア島のコインはとにかく名品が多いのです。
紀元前300年頃の西地中海。
さて、コインの時代背景として当時のシラクサを含めたシチリア島東側は以前に紹介したマグナ・グラエキアのギリシア人植民者の勢力圏であり、都市シラクサは僭主アガトクレスに統治されていました。
僭主というのも独特な呼び名ですが、貴族ではなく平民からの支持により独裁的な権力を握った統治者という意味合いな感じらしいです。アガトクレスも陶工からシラクサの支配者層を虐殺する形で僭主となり、シチリアの各都市へも苛烈な手段を取ったというまさに独裁者ですね。
彼はまた、シチリア島西側のカルタゴとも生涯に渡って衝突を繰り返しており、シラクサをカルタゴ軍に包囲されたり、逆に最後には撤退となったもののアフリカのカルタゴ本国へと遠征軍を送ったり、押したり退いたりの大立ち回りを演じた征服欲の塊のような方だったみたいです。統治の後半ではシチリア王とも名乗っていたりします。
アガトクレス死後のシチリア島は御存じカルタゴとローマによるポエニ戦争が始まり、カルタゴと死闘を演じたシラクサは第二次ポエニ戦争時にカルタゴ側に付いた事で、ローマの攻勢で攻め落とされて支配権を失ってしまう事に。
それでもローマ時代や中世を通してシチリア島の重要都市として存続しており、豊かで発展した都市としての影響力は続いていたようです。
最後はWikipediaからアレトゥーサの泉。
ではこんな所で。






