明けましておめでとうございます。

今年の最初は去年入手した古代コインから行きましょう。

 

セレウコス朝 セレウコス1世 紀元前312-281年

テトラドラクマ銀貨

Ch XF Strike5/5 Surface4/5

 

表面は牡牛の角と耳を付けた兜を被る、おそらくアレクサンドロス大王ではないかと言われる肖像。

 

アレクサンドロス大王死後の後継者(ディアドコイ)戦争の一人として、セレウコス朝の開祖となるセレウコス1世。大王が征服したアジアの領土の大部分を手に入れ、勝利者(ニカトル)と呼ばれました。

しかし、アレクサンドロス大王の存命中は歩兵部隊の指揮官としての目立つ活躍は無く、大王死後ようやくバビロンの太守に任命されたと思ったら後継者の最大勢力であるアンティゴノスに追い出されてプトレマイオスの元に逃げたりと、後継者戦争の前半は苦労の多い方だったようです。

その後プトレマイオスから借りた少数の兵でバビロンを取り返すことに成功し、アンティゴノスを他の後継者達とイプソスの戦いで破り後継者としての地位を確かなものとします。

 

そんなセレウコス1世のコインですが、存命中は存続のアレクサンドロスタイプの発行を継続し、確実に本人と言える物は死後にセレウコス朝影響下のペルガモンで発行された物になるそうです。

今回の物もセレウコス本人だとも神格化されたアレクサンドロス大王(またはディオニュソス)だともはっきりしないようです。

 

裏面はトロパイオン(戦勝記念碑)にリースを掲げる勝利の女神ニケ。

 

このコインはセレウコスが行ったインド遠征を記念する物ともされるのですが、トロパイオンは戦った相手の武具で作る物とされており、どうも図柄を見るにマケドニアの武装のようでアンティゴノスを破ったイプソスの戦いの記念ではとこれも諸説あるようです。

確かに盾の放射状の紋様はマケドニアのヴェルギナの太陽のようで言われてみるとそんな気もしますね。

 

ちなみにセレウコス1世のブロンズ像(ローマ時代の模作)コインの肖像と似てますかね?

 

さて、こちらのコイン、私はおそらく手にすることは無いだろうなと思っていた物でした。

牡牛の兜は希少タイプで、今回落札したヘリテージでも過去に数得る程しか出品されておらず、高額で手が出ない所かまともなグレードはチャンスすらありませんでした。

 

ところが去年辺りから過去の出品数を上回る数が一気に出て来てなんじゃこりゃ!とびっくり。

SNSとかでも海外の方が新しい貯蔵庫が発見された??なんて話題にしておりまして、おそらくセレウコス朝の領土であったイラク辺りで古代の当時に兵士か特定の人物が埋めた物ではないかとの事。

このタイプはセレウコス朝の権威を宣伝するために領土内の太守や兵士に配られた物だろうと言われており、こちらはアケメネス朝の王都でもあったスサで作られた物なのでイラクやイラン辺りから発掘されてもおかしくはないかも。

 

しかし、最近このセレウコス朝の領土であるアジアのコインは以前に紹介したセレウコス2世や、アルメニア王国とササン朝の金貨とかやたらと大量にオークションに流れて来てるのですよね。

中東辺りの古代コインは持ち出し規制があった気がするのですが、発掘されて博物館に保管されていた物や盗掘で貯め込まれていた物が第三国経由でマーケットに流れて来てたりして…。

 

ともあれ出品の大部分はVFでXFグレードでも希少ですので30枚近く出ている中から見た目が良さそうな物をえいやっと落札。

予算に余裕が出来た頃で丁度良かったのですが、同じXFのFine Style品は7,000ドル近くの落札価格で無理でしたのでこちらを入手してみました。図柄の作りは流石Fine Styleの方が良かったのですが肖像の打ち出しとしてはこちらが一番良く見えたのですよね。

 

思いもかけずの入手でしたがセレウコス朝前半の君主達のコインはだいぶ充実出来まして、これで一区切りでもいいかもしれませんね。

 

ではこんな所で。今年も1年よろしくお願いいたします。