ビザンツコインは終わりにしましたが、せっかく中世にまで来たので古代に戻る前にこの時代の金貨の紹介もしてみましょう。

 

フランス 1380-1422年 シャルル6世

エキュ金貨

PCGS AU58

 

表面はフランス王家の紋章である王冠を頂いた百合を描いた盾。(エキュ:盾)の意味でこの呼び名だそうです。

エキュ・ア・ラ・クロンとか長ったらしい名前もあるみたいですがエキュとかエキュドールで呼ばれる事が多いですね。

 

金貨の作られた中世後半の14世紀となると東方の大国ビザンツは衰退しており、十字軍の活動は下火に、西ヨーロッパは中世初期の低迷から立ち直ってフランスや神聖ローマといった大国が台頭をしている頃ですね。

 

中世初期の西ヨーロッパに流通していた貨幣はローマから引き継いだデナリウス単位で鋳造を行った銀貨が中心となり、金貨はビザンツからの物くらいしかなかったようですが、その後、経済発展や鉱山開発に伴い姿を消していた金貨もヴェネツィアといった経済力の強い都市では12世紀から、フランスも13世紀頃から再登場しており、今回のエキュ金貨もその流れで発行された物になります。

 

裏面は王冠に囲まれた花十字紋。

 

重さは前に紹介したローマやビザンツの金貨とあまり変わらない3.9gくらいなのですが、カップ型では無いもののかなりの幅広で薄い金貨になっています(鋳造時期によって重量は多少変わるようです。)

紙のような薄さというか手でクニャっと曲げれそうで扱いが怖いですね。(この時代もお財布的な袋や専用のケースみたいな物があるとか聞いたような。)

 

さて、シャルル6世というと親愛王と共にこちらの方が有名な狂気王の名で呼ばれた方ですね。始めは名の通り国民の親愛を受ける善政だったそうですが、最初の4年が過ぎると狂気王の名の通り精神錯乱が頻発して42年の長い治世の大半を精神に変調をきたしたままとなってしまったそうです。

 

あとは中世の100年戦争中の金貨となりまして、フランスとイングランドによるフランス本土の領土を巡っての戦争も休戦を挟んで後半戦へと差し掛かる頃となり、ご存じシャルル6世が錯乱してしまった為、混乱したフランスに乗じてイングランドの攻勢と6世の後を継いだシャルル7世による反撃に登場するのがこれまたご存じジャンヌダルクですね。

 

という事で、あまり中世のコインに詳しい訳でもないのですが有名所の見本的に一枚求めてみました。

他にも中世辺りの名品となるとムートン・ドールとかノーブルとかもあるかと思いますが、どれもかなりのお値段がしますので一番入手しやすいのがエキュ金貨ではないでしょうか。

グレードはそこそこですが、薄い金貨のせいか打ち出しも不鮮明な物が多い中で図柄の切れや潰れも無く綺麗に打ち出されていたのでこちらに決めてみたのでした。