もう我慢できないので紹介しちゃいます!
ローマコインの続きもしたいのですが久しぶりのギリシアコインの話です。
カラブリア タラス 紀元前332-302年
ディドラクマ銀貨
AU Strike5/5 Surface3/5 Fine Style. edge chips.
ようやく入手したタラスのイルカちゃん。初めてのマグナ・グラエキアのコインです。
表面は馬に乗りリースを掲げる都市の建設者タラス。
今まで近代も含めて何枚か馬の図柄のコインも紹介していましたが、上位に入る素晴らしい出来栄えだと思います。古代ギリシアの人々がいかに馬を大切にしていたかが伺えますね。
タラスはポセイドン神の息子であり、ポセイドンは馬とも関係がありますので裏面のイルカと合わせてダブルで贅沢な図柄。
で、馬の下のこれ何でしょうかね?漬物石でない事は確かなのですがイオニア式の柱頭とかですかね。
↑この柱ね。
※ぎりしあこいんさんからのコメントでホタテ貝のような気もしてきました。
うーん、ミントマークの判別は難しいです。
裏面はイルカに乗るタラス。海に投げ出されたタラスをイルカが救ったという伝説からの図柄。
もう少し時代が古くなるとアルカイック的な雰囲気になるのですが、こちらはギリシア古典期的な写実性の高い作り。イルカの先端と尾が若干切れてしまっているのですが何とか許容範囲です。あと縁の欠けみたいな表記がありますが良く分からないです。
数は見かけるコインなのですが、なかなか上手く打ち出されている物が少ないので悩みつつもこちらに決めてみました。Fine Style評価でも両面打ち出しが綺麗な物は少ないのですよね。
ちなみに、手で掲げている物は蛇らしいです。でもタラスと関連があるのかは良く分からないです。
ギリシアやローマでは蛇は神聖な生き物として神殿で飼育していたりするので、ありがたい図柄的な感じ?
作られた期間が長いので、他にもタラスがポセイドンの三叉槍を持っていたりイルカの下に波頭があったりと色々バリエーションを楽しめるコインでもあります。
あっ、そういえば分類としてはディドラクマ(2ドラクマ)とラベルではなっておりますが、どうも重量基準が似てるのかディドラクマ/スタテル(またはノモス)どちらにもなっちゃうみたいです(初期から重量は徐々に減少していくようです。)
さて、マグナ・グラエキアとはなんぞや?と言いますと、ギリシア人の植民活動でイタリア半島南部やシチリアに作られたギリシア系の都市群として、ギリシア本土に勝るとも劣らない繁栄を遂げた事からマグナ・グラエキア(大ギリシア)と呼ばれた地域ですね。
カラブリア地方の都市タラスはスパルタからの入植者が建設したのですが、本土のスパルタ人らしからぬギリシア的な交易都市として発展しました。
紀元前330年頃のイタリア周辺。当時のイタリアは多分こんな感じかと。
コインの作られた前4世紀後半のギリシア本土ではアレクサンドロス大王が活躍していた頃ですね。大王はペルシアへ東征を行ったのでイタリアとの直接の関係は無く、当時のイタリア半島といえば都市国家であったローマが拡大を始めた頃となります。
共和政ローマは近隣の勢力を傘下にしながら半島南部へと領土を広げ、前3世紀のヘレニズム時代に入るとタラスもローマと衝突する事となります。
ローマに対してタラスは有名なエピロスの王であるピュロスを傭兵として雇ったのですが、莫大な戦費の負担を約束したように当時のギリシア都市はローマとは比較にならないくらい豊かだったそうです。
しかし、ローマは苦戦しつつもピュロスを撤退に追い込み、タラスも紀元前272年にローマに占領され都市としての独立は失われます。
ギリシア古典期のドラクマ/スタテル重量の中型銀貨も結構集まってきました。
ヘレニズム時代になると見栄えのする大型貨になりますが、肖像中心なのでギリシア神話からの美術を楽しむなら小型貨中心で集めた方が良いコレクションになると思います。
イタリア半島のマグナ・グラエキアのコインを入手したので、次はローマと同じようにシチリアと目を向けたいですが、さてどうしましょうかね。高額な名品になるので先に金貨を優先するかこれまた悩み所になりそうです。
ではこんな所で。