夏が終わる前にクワガタの話!

今まで時たま昆虫の話をしておりましたが、標本でもメイン収集の話をしていませんでしたのでそろそろその話でも。

 

一応こちらのヨーロッパミヤマクワガタ(Lucanus cervus)とその近縁亜種の標本がメイン収集ですね。

 

その一

その二

 

見ての通り全然整理できておりません(ほとんどが10年以上前に展脚した物ですのでお見苦しい所はご了承ください。)

他にも、あちこち散らばっている標本を集めるともう一箱分くらい作れるのですが、標本移動すると箱のペフ板に針孔跡が残っちゃうし、このゴチャゴチャ感も気に入っていて手が出せずにいます(単に面倒くさいだけ。)

 

ミヤマクワガタ属の学名は( Lucanus:ルカヌス)となりますが、こちらはヨーロッパミヤマが生息する南イタリアのルカニア地方から、ローマ人がルカニアの牛と呼んだ事から付けられたそうです。

 

古代ローマ時代の博物学者のプリニウスは、博物誌でこのミヤマクワガタの首の部分をお守りとして首飾りみたいに当時はしていたとも書いています。ヨーロッパには、このヨーロッパミヤマしか大型のクワガタは生息しておりませんので、古代の人々もクワガタというと当種を思い浮かべた事でしょう。(ヨーロッパにも小型種のクワガタは他にも何種類か生息しています。)

 

元々ルカニアの牛というと、共和政ローマ時代にピュロスがルカニア地方に持ち込んだ戦象の事を言ったそうですが、私は象というよりかは鹿だと思いますね。

実際、フランスでは飛ぶ鹿とかアメリカには鹿の名を付けられたエラフスミヤマクワガタという種類もいるので、鹿の連想も皆さんちゃんと考えたようです。(学名のcervusも鹿という意味ですしね。)

 

さて、前置きが長くなりましたが、幾つかヨーロッパミヤマとその亜種の標本を紹介したいと思いまます。

まずはスタンダードで最も生息範囲が広いケルブス(Lucanus cervus cervus)から。

大型個体が入手しやすいフランス産。

 

私は一番大きくて85mmの標本しか持っていませんが、最大になると90mmいくとか聞いた事があります。多分飼育個体もギネスはそれくらいかと。

 

南フランスは昆虫を多産するそうで大きなクワガタは自然の豊かさの証ですね。

しかし、今はどうか分かりませんが、私が入手した頃のフランスの標本は必ず中身が腐敗して届くので展脚すると臭かったのですよね。採集した人の処理が適当だったのかしら。

 

左から触角が6節のギリシャの個体、中央が上記フランス、右端がウクライナ産。

他にイタリア、ドイツ、チェコやルーマニアとかとか。

 

触角先端節の数(4~6節。)の変化で幾つかフォームが分類されているようですが、基本型のケルブスは4節。(ギリシャの方へ行くと節が増える感じ。)

 

ヨーロッパミヤマの生息地(BE-KUWAを参考に)

 

ヨーロッパの広い範囲に生息していますので、各国毎に集めてみるのも面白いと思いますが、あまり細かく集めても触角以外の変異は乏しいので目に付いた代表種で集めています。イギリスにも生息しているので標本欲しいなあ。

 

で、ギリシャ産の個体の話が出た所で、亜種トルキクス(Lucanus cervus turcicus)も。

 

比較でケルブスと一緒に。

左からギリシャ(古代コインでも触れたテッサリア地方産)、ブルガリア(トルキクス)、チェコ

 

ギリシャ産の個体もトルキクスと呼ばれることもあるみたいですが、元はこちらのブルガリアからトルコ周辺に生息する個体が該当するそうです。並べた標本を見て頂ければですが、ブルガリアのトルキクスはずんぐりむっくりですね。

 

ここからはちょと変わり種を。

ドイツ産のヨーロッパミヤマというと保護種という事もあり、結構良いお値段がするのですが、その中でも特定の地域に生息する型のようなものがありまして。

Lucanus cervus f. scapulodonta)スカプロドンタ型と呼ばれるドイツ中部の森に生息していた個体群に付けられた名称。

大顎の先端部が切断されたヘラ状になっている特異な形状なのですが、最初見た時は何じゃこりゃな感じですね。

 

生息していたと書いたように現在は同地でも確認できずに絶滅したのではないかと言われており、私が入手した標本も1960年代の物ですので、もう半世紀近く再発見はされていないようです。僻地の昆虫の希少種なんかはひょっこり再発見の話とかも聞きますが、スカプロドンタは生息地的にもあまりこういう期待は出来なさそうです。

 

比較で通常ケルブスの小型個体と。

 

大型個体になるとヘラ状の大顎先端も発達してきて特徴が良く分かるのですが、希少標本だけあっておそらく今だと十数万はするんじゃないでしょうかね。とても手が出せないというか大型個体は写真以外で実見した事がありません。

 

展脚は入手した時のまま、古い標本は骨董的な価値もあるのであまり手を加えられずにそのままにしちゃっています。

 

気にせず展脚しても良いとは思うのですが、この1950年代の古いドイツ産ケルブスも手が出せず。

 

最後は雌雄型(gynandromorph)を一つ。フランス産の飼育個体です。

 

高額な標本というと雌雄型がたまに話題になったりしますが、私のは飼育個体ですし、飼育数の多いクワガタでは一定の割合で出て来るそうなので、価値的にはそれ程高いというわけでもないかと思います。

 

もっとも、雌雄型は羽化不全が多いですし、大型美麗種の完全な雌雄型の野外品なら、ニュースとかで紹介されるような見事な物は数十万、数百万の価値はあるのではないでしょうか。

 

この辺りで一旦終わりにして、次はみんな大好き大型亜種の紹介をしたいと思います。