さて、新年になりまして明けましておめでとうございます。という事で今年最初の一枚目。

 

キリキア タルソス 太守マザイオス

紀元前361-328年

スタテル銀貨

MS Strike4/5 Surface2/5 Fine Style

 

キリキア地方の都市タルソスは現在のアナトリア半島である小アジアの地中海沿岸の都市。キリキア門と呼ばれるタウルス山脈を越えた先にあるオリエントの重要都市の一つですね。

 

この銀貨が作られた時代のタルソスはアケメネス朝ペルシア領として、太守(サトラップ)であるマザイオスによって統治されておりました。

ちなみに、マザイオスさんはアレクサンドロス大王の東征時にはバビロニアの太守として大王を迎え撃ちましたが、ペルシアのダレイオス3世の敗走後にこれ以上の戦いを避け無血で都市バビロンを開城。大王からの命でそのまま太守の地位を保証されたそうです。良かったですね。

 

図柄はオリエントで信仰されていたバアル神。

 

カルタゴとかでも信仰されていたのですが、私としては人身御供も捧げるおっかない神様の印象です。と言っても豊穣を司り、ギリシアのゼウスとも同一視されるので手に止まった鷲といい、図柄としてのデザインはアレクサンドロス大王の銀貨のゼウスの図柄とよく似てギリシア的なデザインです。実際に大王の銀貨の参考にされてるのではとも言われるみたいです。

Fine Styleだけあって図柄も細かい所まで打ち出されて、この種のコインであればこれ以上は望めないといった状態だと思います。なかなか高めなお値段でしたが思い切って入手してみて良かったです。

 

バアル神の右側の碑文はアラム語で(𐡁𐡏𐡋𐡕𐡓𐡆:バアル)アケメネス朝ペルシアで使われた公用語ですね。デザインのギリシアとペルシアとの混合的な図柄でこれもヘレニズム的と呼べるのかもしれません。

 

裏面は牡牛に襲い掛かる獅子の図柄。

 

ちょっと平金の剥落があるのと碑文が切れてしまっているのがおそらくtrike4/5 Surface2/5の理由でしょうかね。

動物の闘争図柄は古くは古代メソポタミアの円筒印章なんかにも見られるのでかなり昔からのデザインであり、牡牛と獅子はコインの図柄としては初期のコインとされるリュディアの金貨銀貨にも使われているのは有名ですよね。

 

私はこの牡牛と獅子を見ているとペルセポリスのレリーフなんかを思い出して、かつての華やかなペルシアの美術を垣間見る思いになります。

 

ペルシア領であった小アジアのコインにはギリシア的であっても、ちょっとオリエント的な雰囲気も見る事が出来てなかなか魅力に溢れているのですが、最近はやはりお値段の高騰ですよね。AUグレードでも昔は10万以下で手に入る物もあったのですが、今は結構な出費を覚悟しないといけません。

いつか余裕があればアレスやアテナの図柄の物とかも入手してみたいですね。

 

では、こんな感じでまた1年古代を中心としてコインを紹介していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。