ずいぶん間が空いてしまいましたがヘリテージで落札したコインの紹介です。

 

プトレマイオス朝 紀元前305/4-282年

プトレマイオス1世

テトラドラクマ銀貨

Ch AU Strike5/5 Surface4/5 lt.scratches

 

前に紹介したセレウコス朝に続いて、こちらもヘレニズム国家であるプトレマイオス朝の銀貨となります。

プトレマイオスもアレクサンドロス大王の側近の一人として活躍し、大王死後はエジプトを領有してファラオとして王国を築きます。また、ディアドコイ戦争中にエーゲ海のロードス島を支援したことにより、この方もソテル(救済者)の尊名で呼ばれています。

 

ちょっと濃い目のトーンですが、鉤鼻に大きな顎と一目見れば印象に残る特徴的なお顔で、ヘレニズム期コインの写実性の高さを余すことなく伝えている1枚ではないでしょうか。scratchesとの事なのですが、目の辺りの掻き傷?か肉眼で見るとほとんど分かりませんでした。

 

そしてプトレマイオスというとディアドコイの中では数少ない、敵の手に堕ちたり戦場で死ぬ事なく天寿を全うできた方でもありますね。大王が嫉妬したように幸運に助けられた生涯だったようです。

東方遠征での活躍や、大王の遺体をエジプトへ持ち帰り霊廟に埋葬した話、魅力的なアレクサンドリアの都市など色々と書きたい事に事欠かないのですが、今回はコインを中心とした話をしたいと思います。

 

紀元前303年頃のプトレマイオス朝

 

さて、エジプトというと、ピラミッドや王家の谷、神殿の遺跡といった古王国、新王国時代が有名ですね。最古の文明の一つとして長い歴史がありますが、ギリシア世界との接触は末期王朝時代からとなり、エジプトの傭兵としてギリシア人の居留地が作られたり、歴史家のヘロドトスが旅したのもこの時代となります。

プトレマイオス朝はエジプト古代王朝の最後に位置しており、最後のファラオとなった女王クレオパトラも有名ですよね。

ギリシアやペルシアといった外部国家との接触により貨幣経済も入ってきますが、本格的な運用はアレクサンドロス大王以後となるそうです。

 

という事で、プトレマイオスもエジプトの太守(サトラップ)であった時代からアレクサンドロスタイプのコインを発行していますが、今回の本人肖像タイプは彼が大王の後を継いで王としてファラオに即位してから発行した物になります。

そして、一番の特徴としては、大王のマケドニア王国がアッティカ基準の重量である約17gでコインを作ったのに対して、プトレマイオス朝は独自重量基準の14gでコインの発行を行います。(今回紹介の物は14.26g)

 

理由としては、金の価値が銀に比べて低下したためフェニキアの貨幣重量まで減らしたとか、閉鎖的な貨幣制度にして両替手数料や差益収入を目的としたと理由は複数あるようですが、交易で外から貨幣を持ち込もうとすると必ず量目を減らした両替が必要になりました。

それでもエジプトのアレクサンドリアがヘレニズム世界で最大の交易港となっただけあり、アレクサンドリアでの取引は商人たちには魅力的だったのでしょうね。ローマ時代でもアレクサンドリアの工房で作られたガラス製品などは高い技術で作られた名品として有名だったようです。

 

裏面はゼウスの象徴である鷲が両脚で雷霆を掴む図柄。

発行地は首都アレクサンドリア。

 

プトレマイオス朝は王朝の始祖である、プトレマイオス1世と鷲の図柄の銀貨を歴代の王達も発行を続けるのですが、プトレマイオス3世以後からちょっと図柄の雰囲気が変わってくるので、やはり初期の物が出来も良くてお値段も高めです。

 

いや、もう実際に高い!円安もあったのですが、かつてのこの値段ならもう1グレード上かFine Style買えたよ!な値段で、後悔しても仕方が無いのですが、以前にプトレマイオス朝の象の頭のアレクサンドロスやプトレマイオスのFine Styleを買い逃している事もあって、どうも私にプトレマイオス関係は縁が無いみたいなのですよね。

 

縁が無い中でようやく入手した銀貨ですので大事にしたいのですが、プトレマイオス朝というとやはりデカドラクマやオクタドラクマといった大型銀貨や金貨が有名ですので惹かれてしまいます。

値段的にはとても無理なのですが、大型銅貨は何とか手が届きそうですのでいずれ入手できればいいなあと考えています。

 

ではこんな所で。