でも、それは
「私の望みでしかない…」
苦くて甘い夢の中で死ねたら
それはきっと、とても素敵なことだ。
「あはは…」
自嘲気味に笑って、私はまた
本を開いた。
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朝、私は坂口安吾全集を持って
食卓へ向かった。
「紅蘭さん。朝食の用意ができましたよ」
道江さんが朝食を用意してくれている。
道江さんは若くて、とても綺麗な顔立ちをしている。
まだ20代というのに私の家で家政婦のようなものをしている。何故かは知らない。
「…薬が切れてて眠れなかったわ」
私は小さく呟いた。
「まぁ!なぜおっしゃてくださらなかったのです?きちんと予備はあったのですよ」
「ごめんなさい、今度からは言います」
「ええ、そうしてください。…学校はどうしますか?眠れていないのなら休んだ方が…」
道江さんはそう言って心配そうな顔をした。
「いえ、学校は行くわ。学業を疎かにするのは嫌なの」
「紅蘭さんは勉強熱心ですね。分かりました。では朝食をお食べになってくださいな」
テーブルの上にはトーストや目玉焼き、ヨーグルトなど、さまざまなものが用意されている。
道江さんの作る料理はいつも美味しい。
「いただきます」
トーストにはイチゴジャムとバターを乗せて食べる。香ばしさと甘さが混ざってとてもいい匂いがする。
そこでまた、全集を開く。
「紅蘭さん」
「ちょっとだけ。ね?」
道江さんは少し顔を歪めた後、苦笑いして部屋から出ていった。
きっと私のことを考えてくれてのことだろう。
私は人のいるところで読書はできない。
まぁ、でも、私は本など読んではいない。
読んでいる、ふり。
本当に読んでいるのは手紙だ。
「…あなたは何がしたいのかしらね…」
いくら読んでもその感想しか出てこない。
もう、いいのに。
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