息苦しくて真っ暗な世界
静寂に包まれた場所
ふと思い出していたのは
ある夏の日のこと。
上の子が熱を出し、妻は仕事へ。
たまたま休みであった自分が
看病をしながら様子を見ていた。
そとは雨がぱらぱらとしており
病院から帰って薬を飲ませ
子供を寝かしつける。
まだ幼かった長女は
母親がいないことにぐずり
なかなか寝付けない。
そんな長女を抱き抱え子守唄を歌う。
泣き疲れた我が子を胸に抱えたまま
自身も仰向けで布団に横たわった。
流れ出す涙と、暑さに苦しむ汗が
自分の胸にシャツを通して伝わっている。
前日は夜遅く帰った為に
私自身も疲れており、
そのまま眠ってしまった。
目が覚めると時刻は夕方。
雨もあがり、夕陽が部屋を照らし
物陰になった場所に娘が座っていた。
「ごめんな。パパも寝てもうてたわ」
そう娘に一言かけると娘は
気の抜けた様子で
とても儚げに呟いた。
「パパ、お腹すいた」
「もうすぐママ帰ってくるから
ちょっと我慢し。
もうちょっとだけ寝たら
すぐママ帰ってくるから」
そう娘をなだめて
また二人は眠りについた。
あの一言が何故か忘れられない。
特に目立った様子もへんてつもない
親子の会話であり、深い意味もない。
なのに何故かいつになっても
忘れられないのは、
何か意味があるのだろうか。
お腹いっぱいに
ご飯を食べさせていれば
こんな風に思い出すこともない
ただの過去になったのだろうか。
はたまた
罪悪感に囚われているから
こんな些細なことにまで
罪の意識を感じているのだろうか。
水から出て見上げた空は
少しだけ曇りがかっていた。